『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  498

2015-04-01 07:37:19 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『スダヌス、一言、伝えておきたいことがある。山行の4日分のパンは持参してきている。もちろん、お前たちの分を含めてだ。そのことについては気を使わなくてもいい』
 『そうかそれは、ありがたい、感謝感謝だ。パノルモスで準備しようと考えていた。副菜、これは干し肉を十分とは言えないかも知れないが準備している』
 一拍をおいて話を継いだ。
 『イリオネス、出発の準備はできている。昼は終わった、少々の間、休んで出発しよう。荷はこれだけだ。ギアス、これを頼む』
 言い終わってスダヌスは、クリテスの方へ身体を向けた。
 『クリテス、お前はどうだ。足ごしらえは出来ているのか?』
 『はい、出来ています。しかし、この季節、頂上辺りには雪があります。それに対する準備はしてきていません』
 『そうか、判った。イリオネス、山頂へ随行する者の事はどうしている?』
 『山頂へは、アヱネアスと俺、そしてクリテスの三人だ』
 『二人の分は出来ている。クリテスの分だけ追加だな、判った』
 スダヌスは、座をはずした。
 『ややっ!ご一同待たせましたな、ごめんごめん。では、行きましょう』
 一同は、ヘルメスのある浜へと向かった。
 ギアスが出航のチエックを終える、荷を積む、ヘルメスを海に出す、乗船Okサインを出した。一行が乗る、スダヌスも艇上の人となった。カジテスからOKサインがとどく、一行が見送る浜衆らに手を振る、浜衆らも手を振って応える、漕ぎかたが漕ぎ始めた。ヘルメスが波を割り始めた。
 入り江の海はのたりとしたうねりの春の海であった。航跡を残してヘルメスが離れていく、徐々にスピードを増して海上を進んだ。
 スダヌスがギアスに話しかけてきた。
 『ギアス、聞いてくれ。この浜からパノルモスまで、俺の海のようなものだ、全てとは言わないが。俺に操舵をさせてくれないか。見るところこの船は素晴らしい船だ。操舵をやりたい。パノルモスまでやらせてくれ』
 ギアスは、スダヌスの言葉を快く受け入れた。
 『判りました。よろしいです。任せます』
 ギアスが指示して、カジテスは操舵をスダヌスと交替した。
 ヘルメスは、入り江から出て外海へと、東に向けて進んでいく、ギアスは目には見えない風を読もうと帆柱先に取り付けている吹流しのはためきを見て、風の流れを読むことに神経を注いだ。
 追い風が来ている、帆張りのタイミングを測った。声をあげる。
 『舳先、艇尾帆をあげっ!』
 彼は、二枚の帆の風ハラミをチエックした。岬半島の影響を受けて、やや北からの西風である、彼は指示を出した。
 『中央帆柱、帆をあげろ!漕ぎかたはそのまま続行!』声を張りあげた。
 艇尾で操舵をしているスダヌスは驚いた。風をはらむ帆のカタチに驚いた。そして、三枚帆仕立てにたまげた。
 『ややっ!これは何だ!』
 ヘルメスが装備している三本の帆柱、その帆柱に張っている三枚の帆のカタチ、帆の風ハラミに驚いた。でっかい四角の横帆ではなく、三角形に近い中央の主帆、風向きに対応して風をはらむ帆、艇の速度が増していく、その状態を見て、感じて、舌を巻いた。彼にとって驚くべきことであった。
 彼は、操舵の箇所にギアスを呼び寄せた。