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『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  492

2015-03-24 08:43:59 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ギアスとドックス、二人の胸の内では新艇の名前が浮かびつ沈みつしていた。太陽が水平線を焼いて身を沈めていった。星が目覚める、月が夜の海を照らした。
 夜が明けてくる、星が眠りに就く、浜が日輪の第一射を待ち受けている。目覚めた者たちが姿を現し始める、渚がざわつく、太陽の第一射が今日の幕を切って落とした。それを待ちかねていたのか、浜に賑わいが沸きあがってきた。
 今日のキドニア行の担当はセレストスである、オロンテスが出航手配の指図をしている、舟艇に荷が積まれていく、出発の時が来る。セレストスが声をあげた。
 『オロンテス棟梁、出発します。統領、山行のパンの件、よろしくお願いします』
 『おう、判っている。今日のキドニア、頼むぞ!』
 『判りました』
 潮騒にかき消されないようなセレストスの大声であった。舟艇は白く航跡を残して浜を離れていった。
 オロンテスは、浜に姿を見せたパリヌルスとオキテスと話し合っている。ドックスとギアスの二人は、新艇を海に出すタイミングを計っている。
 『なあ~、ギアス、こんな時待ちのときは胸ドキだな』
 『私も一緒です』
 オロンテスの計らいで焼かれたパンが運ばれてくる。①~⑥まで番号が付されている大袋が新艇の傍らに置かれた。
 『ギアス、お前に言っておく、番号順に手を付けるのだ。①は第一日目の分だ。②は第二日目の分だ。三日目までの分については、ささやかではあるが副菜を入れてある。四日目以降の分からには副菜は入っていない。その旨、。軍団長に伝えてくれ。以上だ、よろしくな』
 『判りました。ありがとうございます。腹をすかして艇上で食べる昼は格別です』
 パリヌルスが近づいてきて声をかけてくる。
 『ギアス、今日もいい空模様だ。風の具合をどう読んでいる?』
 『風具合ですか、そうですね。半島の突端までは、陸風を受けての漕走ですが、東へ転進して、程よい西からの追い風になるかならないかを気にしています』
 『お前の操船には、安心している。航走にいい風が吹いてくれるように祈っている。望むより祈りには力がある。謙虚に祈る、これが物事解決の道を拓いてくれる。まあ~、そういうところだ。それを忘れるでないぞ』
 パリヌルスとギアスは、旅の前途を思いやって目を合わせた。