『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  480

2015-03-06 07:45:14 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスとオキテスの朝は早かった。『おっ、おはよう』の挨拶も簡単に交わし朝行事を終えた。
 マクロスとソリタンが舟艇の傍らに立っているのを目にした。オキテスが寄っていく。
 『おう、両人、お前ら早かったな、ご苦労。ではお前ら二人に託す用件を伝える』
 オキテスは、ガリダに伝える要件を説明した。
 『以上だ。二人とも判ったな。相手方からこちらに出向くと言わせるのだ。その様に話を運べ』
 『判りました』
 マクロスが返事をする。
 『それから、これだ。ガリダに渡してくれ。ガリダへの贈り物だ。焼きあがったパンが入っている。話のスベリがよくなる』と言ってパンを入れた袋を渡した。
 パリヌルスとギアスが言葉を交わしている。
 『この知らせをスダヌスに伝えると、彼は喜ぶぞ。欣喜雀躍の知らせだ』
 今日も西風が吹いている、舟艇が浜を離れていった。
 舟艇を見送ったパリヌルスとオキテスは、今日の予定を打ち合わせた。
 『判った。朝めしを終えたら軍団長の宿舎で話し合おう、あの場所が何かと話しやすい。木板、木炭が手許にあるからな』二人はうなづき合って浜をあとにした。

 アヱネアスは、イデー山行きを決めたことについて、複雑な想いを抱いていた。その想いを抱いての朝行事である。
 父アンキセスは、この山行に賛意を示している。アンキセスは、その賛意の思惑をアヱネアスに押し付けてきていた。彼は、父の想いとは裏腹の想いを胸に抱いていた。己の想いと父の想いを天秤にかけて思考した。
 『父の想いにうなづける点もある、だがだ、俺の想いは、父の考えている次元とは次元が違う。俺には俺の考える次元がある。俺の肩には民族全員の生命と建国千年の未来がのっている。このクレタが建国の地であるか、そうではないのかを正しく判断して決断しなければならないのだ。そのためにイデー山の出向くのだ。我が意を貫く!』
 彼は春の海に身を浸して決断した。
 『俺が迷えば、民が迷う。進むべき道を誤ってはならないのだ』
 昇る太陽を仰ぎ見て立つべき迷いを断ち切った。太陽がはねた。腕に抱いたユールスが震えた。
 イデーの山のゼウスの神域に立つ自分をまぶたに描いた。