『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第７章 築砦 476

　『この仕事に携わる全員が持つべきモノづくりの心構えだが、これは短期促成の教育で全員の心中に植え付ける。ガリダ一族の用材調達が完了するまでの間にドックスにやってもらえばいいと考えている。我々が最強のモノづくりの心構えを持った者で形成する技術集団こそ、最良の品質の新艇を世に送り出すと考えている。これが私の考えている新艇建造の概略である。新艇建造には、我々民族の４００人に及ぶ者たちが携わると考えていただきたい。多くの者たちが動員される。それだけに、しっかりとした管理機構を構築して、編成した組織を運営していかなければならない。新艇建造組織の編成、建造工程表、その工程表に基づく段取り等、まず、上部管理組織の編成をやり、業務を起ちあげ、建造班を組織して、ガリダ一族と用材調達の話をまとめ、新艇建造の場を造り、用材以外の建造資材の調達、建造従事者の教育、これらに１カ月くらいの期間を費やし、残る２カ月足らずの時日で新艇５艇の建造を成し遂げる。これが私の描いた業務遂行の概略である』
　これを聞いた一同は感嘆した。パリヌルスは言葉を継いだ。
　『尚、実行計画と工程表の作成、段取り等三人で、即、作成しよう』
　場の三人は、パリヌルスの案に賛同した。
　『パリヌルス、お前の考えていること、非の打ち所がない。直ちに取り掛かろう』
　この場において、実行計画作成作業が始まることになった。
　オキテスがイリオネスに話しかけた。
　『軍団長、新艇建造の用材調達にガリダ一族の手を借りること承認いただけますね』
　『承知！』
　イリオネスは、言葉短く言い切った。オキテスが一同に告げる。
　『計画案承認の打ち合わせは、明後日、午後この場において開く』
　『解った』一同が了承する。
　『あ～あ、軍団長、ガリダとの交渉を始めます。よろしいですね』
　『おう、始めてくれ』
　『パリヌルス、聞いての通りだ。ガリダとの話し合いの手配どのようにするか、このあと、話し合おう。ドックス、今日は、このことにかかりきれ、いいな』
　『判りました』
　新艇建造の業務が動き始めた。