『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第2章  トラキアへ  34

2009-09-03 08:17:48 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 風は止んでいる。海の荒れもおさまっている。
 浜はざわついていた。出漁していく漁師たちは準備に忙しく余念はなく、彼らを送り出す女房連の大声が、浜の空気を震わせていた。浜頭たちも砂浜に立って、漁師たちの差配に懸命であった。
 アエネアスは、この風景を目にして、ふと思いついた。アレテスを魚の行商人を装って、探索に向かわせることがいいのではないかと考えた。
 新しい朝を迎えて、アエネアスは多忙であった。彼に従いついて来た者たちにとっては、トロイから100キロ余りしか離れていない土地でありながら、そこは異国の地であり、彼らにとっては新天地であった。使っている言語は、同言語族に属していることが救いであった。風習、しきたりには、多少の差異があろうと思われるが、それについての覚悟はできていた。
 アエネアスは、幹部、及び、隊長連を集めての打ち合わせである。彼は、オープンな姿勢で皆に接した。市民たちの中からもオロンテスの他に2名が加わることになった。