公園の片隅にメスのハグロトンボがとまっていました。
ハグロトンボはとても警戒心が強く,ちょっと近寄ろうとすると,さっさと遠ざかります。それで,このトンボを至近距離から撮るのは実際は簡単なようで夢のような話だとわたしは思っています。
ところが,幸いなことに,じつにふしぎにも,この個体はわたしが近づいてもほとんど遠ざかろうとしません。もちろん移動はするのですが,ほんの近くに降りるのです。それで,すこしばかり追いかけてみようと思いました。こういうときのコツは,動く際,こちらの動きがわからないほどに,ゆっくりゆっくり動くということです。
接写レンズを近寄せて撮っても,被写界深度が浅いのでピントがごく一部にしか合いません。近寄せれば近寄せるほど,皮のような感じでまったく部分的にしかピントが合わないのです。それを承知で辛抱強く追いました。
ワーキングディスタンスは10cmほどです。表面のきらびやかな輝きが目を引き付けます。
正面から撮るチャンスがありました。個眼が写り込むことが必須です。
ほんとうにふしぎで,うれしいひとときになりました。
なにしろ,こんなチャンスはシーズン中に一度あるか,ないか,という確率ですから。