日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

ノーベル賞と日本-日本の中小企業のあり方-

2009-10-05 20:51:51 | ビジネス
今週から、ノーベル賞各賞の受賞者の発表が始まった。
今日は、生理・医学の部門で女性2人を含むアメリカ人3人の受賞が決まった。
昨年は、物理学賞と化学賞の部門で日本人が4人(内2人は米国籍)が受賞し、リーマンショックで経済が低迷する中、明るい話題となったことは記憶に新しいところだ。

ところで、このノーベル賞授賞式には晩餐会があるのだが、その時使われるカトラリー(フォークやナイフ)が日本製だと言うことをご存知だろうか?
実は、この時使われるカトラリーを作っているのが、新潟県燕市にある山崎金属工業と言う会社だ。
デザインは、日本人ではなくスェーデンのゴナ・セリン氏によるモノだが、そのデザインから、製品へと作っていっているのが山崎金属工業さんという訳なのだ。

ご存知の方も多いと思うのだが、新潟県燕市はステンレス加工の工場が多いところで、特にその「鏡面加工技術」では、世界のトップクラスだと言われている。
その技術は、i-Podにも採用されたりしている。
他にも、「イタリア生まれの燕育ち」ケトルや、若い女性に人気の「ののじ」のカトラリーなども、燕市にあるステンレス加工会社で作られている。

中小企業では、優れたデザインを創るコトは出来ないかも知れない。
しかし、技術があればその高い技術力で世界中からオファーが舞い込むと言う、良い例のような気がするのだ。

その背景には、中小企業が抱える「海外の安い商品との対抗」という価格競争ではなく、あくまでも自分たちの持っている高い技術力で世界に勝負すると言う、発想の転換があったからだろう。
中小・零細企業も、一つの共同体として活動をすれば、大きな力となり、世界にアピールできると言う考えだ。
その手始めとなったのが「磨き屋シンジケート」と言う、技術集団(と言うのか?)だ。

何もこのような動きは、燕市だけではない。
タオルの今治市でも、同様の動きが既に始まり、海外の有名ホテルなどから高い評価を受けている。

日本の企業が生き延びるアイディアは、都市部ではなく地方にあるのかも知れない。
何故なら、海外との価格競争という厳しい経験から、自分たちの強みを見出し、磨きをかけ、日本ではなく世界と言う市場を意識したコトで、活路を見出しているからだ。
もちろん「世界」と言っても、日本の市場を蔑ろにしているのではない。
「世界の中の日本」にアピールしているだけのコトなのだ。



「アニメの殿堂」よりも先にすべきことがあった

2009-10-05 10:50:40 | ビジネス
しばらく前に「なまえ」さんから、とても貴重な資料のお知らせを頂きました。
本当にお礼が遅くなりました。
頂いたコメントにあった、公正取引委員会の資料も一応目を通させていただきました(注意:PDFファイル)。
アニメーション産業に関する実態調査報告書
報告書本体(上)
報告書本体(下)
 

この報告書を読む限り、これまでアニメーション業界(と言うのだろうか?)では、著作だとか製作と言った面で、キチンとなった取り決めや契約が余りされてきていなかったようだ。
もちろん、宮崎駿さんの「スタジオ・ジブリ」くらいになると別なのかも知れないが、多くは「お願いね~」という、口約束と言うか信頼関係で成り立っていたようだ。
それが、いわゆるアニメーターとの雇用関係にも影響しているように思えた。
これでは、いくら「産業として力をいれたい」としても、不安定要素ばかりが多く難しいはずだ。

もう一つ気になったことは、日本のアニメの場合「漫画雑誌掲載→アニメ化→キャラクター商品」と、その商品の拡がりが大きいという特徴がある。
その場合、漫画そのもののオリジナルに関しては、漫画家さんにその著作があるはずだ。
そこからアニメ化されたとき、アニメ製作会社と漫画家さんとの著作の問題と言うことも関係してくるだろう。
もちろん「アニメ化=テレビ放映化」というコトなので、漫画家さんとテレビ局との関係と言うことも重要なコトになる。
「アニメの殿堂」の話題が持ち上がった時、まず真っ先に手をつけなくてはいけなかったのは、「アニメの殿堂」を作るコトではなく、ごく当たり前の商取引としての「アニメ産業の充実化と人材育成」だったように思う。

この構図を見ていると、まるでテレビ局を頂点としたピラミッド型の産業構造となっているように思える。
それは今の製造業などの「メーカー→下請け→孫請け→ひ孫請け」と同じような構造だ。

日本の製造業を含め、日本のモノづくりの構造は同じなのかも知れない。
そして一番弱いところは、どの産業でも同じ「中小零細」というトコロなのだ。
「日本経済を立て直す」というのであれば、一番弱いトコロから手をつけなくては難しいように思う。