経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

意志があり、発明があり、特許がある。

2008-12-11 | 知財発想法
 先日のエントリで、事業として成功する多くのパターンは、
■ 「発明」ありきではなく最初にあったのは「決意」であった
■ 「発明」が生まれて新商品を開発したというより、経営者が「こういった製品を作る」という決意をして、そのために必要ないくつかの「発明」が生まれてきた
ということを書きましたが、知財活動で実際に事業の成果をあげておられるある方と先ほどまで話をしていたところ、まさにその部分の考え方が一致してスッキリしました。
 こういう商品を作りたい(サービスを提供したい)という意志があり、そのために必要な発明が生まれ、その発明を保護するために必要な特許をおさえる。
 ①意志 ⇒ ②発明 ⇒ ③特許
 この順序が大事であって、②や③から始めるものではない。①や②を置き去りにして③を云々するのは全くナンセンスとして、大学発ベンチャーや産学連携なんかがいろいろ苦労しやすいのは、出発点が②となることが多いからではないか。①は「ニーズ」と置き換えてもいいのでしょうが、ニーズが顕在化してから投資をしても手遅れであることが多いので(価格競争に突っ込むだけになってしまいやすい)、①は結局は仮説に基づいてエイヤッと腹をくくる「意志」ということになってくるのだと思います。
 ③の仕事をやるのに、まず②に遡ることが「発明発掘」とかいう世界になってくるのですが、さらに①まで遡ることによって、事業の中で知財が何をやるべきかというところが見えてくる=「仕事の質」(狭義の「特許の質」ではない)が向上するのではないでしょうか。マーケッティングもファイナンスも、結局は①からスタートしてそれを実現するために必要な手段として展開していくわけだから、経営や事業に即した知財活動のあり方というものは、①に遡れば自ずから見えてくるのではないかと思います。
 意志のあるところに投資あり、意志のあるところに発明あり、投資を回収するためにその発明こそ守るべきもの(=知財活動に投資する意味があるもの)、といったところです。

※ 今回の写真も本文とは関係ありません(先日久々に訪ねた奈良の新薬師寺です。古人の‘意志’を感じる素晴らしい仏像に息を呑みますが、薬師如来を取り囲む十二神将が強力な特許ポートフォリオに見えてしまうのは仕事のし過ぎか・・・)。

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1 コメント

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知的財産権の本質は参入障壁ではありません (久野敦司)
2008-12-14 17:58:22
知的活動空間における知的創作物を経済活動空間において活用するために、知的活動空間から知的創作物を経済活動空間に流し込んだり、知的創作物間の反応を起させるためのパイプが知的財産権だと思います。
パイプの壁を、経済活動空間において外から眺めていると、パイプの壁が参入障壁のようにも見えます。しかし、パイプは合流したり、分岐したり、タンクや反応炉に出入りして、経済活動空間における価値創出に使用されます。秩序ある知的創作物の流れを経済活動空間において形成するのが、知的財産権であると思います。
http://www.patentisland.com/memo169.html
事業もまた、単に他社の参入を阻止することだけを知的財産権に求めているのではなく、新しい価値創出のための活動に使い、新市場を形成することも望むことが多々あります。このように、多面的な機能を有するのが知的財産権であると思います。
知的財産権の本質は知的創作物の流れに秩序を与え、価値創出を促進するパイプであると思います。
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