赤い彷徨 part II

★★★★☆★☆★★☆
こんにちは、アジア王者です。↑お星さまが増えました。

ロシアW杯最大のアップセット

2019-01-05 02:14:28 | Football
そろそろ我が家のハードディスクの容量が限界に達しようと言う中、年末年始の時間を利用して今更ながらロシアW杯をここまで7試合チェックしました。個人的に特に楽しみにしていたのがグループFの緒戦でメキシコ代表がW杯連覇を狙う優勝候補ドイツを倒したこの試合で、ネットのサッカー戦術クラスタの皆さんが異口同音に「この大会のベストバウト」と評価したものです。この試合ではメキシコのカウンター、より具体的に内容を言うと、メキシコが自陣左サイドでボールを奪取⇒中央でメキシコの1トップ・チチャリートあたりがポストで受ける⇒そのボールを落として再び左サイドに展開してゴールに迫る、といったパターンを、特に前半のうちはこれを繰り返し「再現」できていました。そして、下記の一連の画像のとおり、そのチャンスのうち1回を前半のうちに仕留めて先制に成功し、そのままウノゼロで逃げ切ったというのが大まかな試合展開でした。

メキシコ代表が上記のパターンのカウンターを何度も再現できていた要因についての戦術クラスタの皆さんの分析が非常に面白くて、今回あらためて自分でも動画で確認したところこれがまた大変腑に落ちるものでした。以下、その皆さんの分析をもとに備忘用の自己満足メモとして以下記しておこうと思います。まずドイツ代表のボランチとバックラインは以下のとおりでした。


         ケディラ クロース

プラッテンハルト フンメルス ボアテンク キミッヒ


前提条件として、レーブ監督指揮下のドイツ代表では、ビルドアップ時に両CBがボールを持ちあがる傾向にあり、右SBキミッヒはその高い能力もあり前目のポジションを取り(WBに近いポジション取り)、さらにボランチの一角ケディラは前線に顔を出していることが多い、というポイントがあるようです。


         ケディラ        キミッヒ

          ↑           ↑

         (AA) クロース

プラッテンハルト フンメルス ボアテンク (BB)


こうした傾向にある中で、ドイツのボール保持時にメキシコはFWの一角ベラがクロースにマンマーク、またCBのうちフンメルスにもマンマークをつけることで彼らがビルドアップに参加することを許さず、その上クロースは、確かに所属クラブのレアルマドリーでも頻繁にそういった光景を目にしますが、抑えられると両サイドに流れていく傾向にありますね。また、フンメルスのビルドアップ参加が制限されることにより、必然的にボアテンクがボールを持ち上がる回数が多くなります。確かに動画で振り返ると確かにクロースとフンメルスにはマンマーク気味にメキシコの選手が貼りついているのに対し、ボアテンクとケディラは結構放っておかれている場面が非常に多かったです。


         ケディラ        キミッヒ

          ↑           ↑

クロース ←   (AA) (AA) → クロース

               ボアテンク
                 ↑
プラッテンハルト フンメルス (BB) (BB)


するとどうでしょう、上記のとおりドイツCB陣の前のスペース(AA)(AA)ががら空きになります。そしてキミッヒの上がったメキシコ左サイドにぽっかりとスペース(BB)ができています。メキシコは、まず自陣左サイドでボールを奪取し、そしてがら空きになっている(AA)のスペースでチチャリートが楔のボールを受けて左サイドに展開して素早いターンで前線に突進、さらにその左サイドの(BB)のスペースに左FWのロサーノあたりが侵入してドイツゴールに迫る、というパターンを何度も繰り返し再現できていました。そしてまさにそのパターンで左サイドから切れ込んだロサーノが叩き込んで前半35分に先制ゴールを奪いました。こうなるとGKのノイアーの前に残っているCBは足が速いとはいえないフンメルスのみ、というのもカウンターの成功率を占う上でのポイントかもしれません。


         ケディラ        キミッヒ

          ↑    ボアテンク  ↑

クロース ←   (AA) (AA) → クロース

                 ↑

プラッテンハルト フンメルス (BB) (BB)









こうした状況を受けて、後半からレーブ監督が何らかのテコ入れをしてくるかと思いきや、ドイツがやり方を変えることはありませんでした。これもメキシコが疲れて足が止まれば仕留められるという世界王者としての自信があってのことなのでしょうが、それでも集中力を切らさないメキシコの前にドイツはゴールを奪うことはできず、痺れを切らしたドイツは60分にケディラに代えてFWロイスを投入し、前線にいたエジルをケディラのポジションであるボランチに下げます。こうしてケディラよりも球捌きに長けたエジルがこのポジションに入ることにより、クロースが消されてもボールを展開できることが多くなったドイツが次第にメキシコを押し込むようになります。


          エジル  クロース

プラッテンハルト フンメルス ボアテンク キミッヒ


終盤に差し掛かるとメキシコはクロースへのマンマークも放棄して5-4-1のブロックを形成して本格的に逃げ切りに入ります。ドイツは79分に長身FWのマリオ・ゴメスを投入しますが「オレたちのサッカー症候群」なのか知りませんがドイツ代表はいわゆる「放り込み」もせずレーブ監督の用兵も無に帰します。こうしてメキシコが王者ドイツを下す歴史に残るアップセットを達成しました。右SBキミッヒが前目のポジションを取るとか、両CBがビルドアップ時に持ち上がっていくとか、完成されたドイツ代表と言うチームの骨格ともいうべき部分を逆手にとってそこをぶん殴って勝利をもぎ取ったメキシコ代表(オソリオ監督)は本当に見事でした。そして上記のような観点でゲームを分析できる方々には本当に頭が下がります。こういう見方ができるとサッカー観戦はもっともっと面白いのでしょうね。

さて、本番直前に日本代表監督を解任されたハリルホジッチ監督もこのメキシコ代表のように相手のストロングポイントや骨組みのところをぶん殴ることでアップセットを起こすタイプの監督という評価がネットの有識者の方々の間でも多かったので、個人的にはその日本代表が見られなかったのは今でも残念でなりません。いや、西野監督の下で日本代表はグループリーグを突破して強豪ベルギー代表にも善戦して見せたではないか、とい言われれば、仰るとおりギャンブルに勝った田嶋JFA会長やハリルホジッチを解任に追い込んだ関係者や選手たちの完全勝利であり、当方としてもぐうの音も出ませんが、それでも冷静にみればロシアW杯の日本代表の戦績は1勝2敗1分で、その1勝もコロンビア代表のDFが早い時間帯にPKを与えてくれた上に退場するという幸運による、大よそ「再現性の低い」勝利であった点はしっかり認識しておく必要があると今でも思っています。

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