鈴木すず子の初出勤日。
朝一で、すず子を迎えたのは、俺、ミナミちゃんではなく・・・。
修ちゃん店長だった。
すず子が従業員用の入り口から入室したとき、俺はすでに現場に居て、店長室付近に居たのが、店長だったのだ。
店長は緑の狸部長のイメージカラーである、緑のエプロンを手渡し、
早速、2階にある休憩室、及び、女子更衣室へ
店長自らご案内したのだった。
これは、かなりの特別待遇である!
緑のエプロンをした鈴木すず子が、この日、早番だった末永さんと一緒に冷凍室の中へ入っていく姿をチラッと見た。二人で納豆を運んで行く。しばらくは末永さんに任せておけば大丈夫だろう。俺は二人に朝の挨拶をした後、安心して自分の仕事を続けた。
「末永さん。今朝は9時に朝礼するから」
「はい、分かりました」
すず子は一瞬、ぽかんとしたが、まぁ、仕方がないだろう。
オープン前のスーパーは、とにかくドタバタで忙しい。
開店準備に追われ、ようやく店がオープンし、訳が分からんというのが今の心境ではないかと・・・思われる。
そんな鈴木すず子に、俺は冷蔵ケース前で、折角だから・・・と日配について、少し説明しようと思った。
俺が最初にした質問は、
「オーストラリアのスーパーでは、何を担当されていたのですか?」
・・・・だった。まずは、新人くんが、どのような経験があるのか、把握することが肝心だ。
「最初に任せられた発注はデイリー商品・・・すなわち、牛乳、ヨーグルト、チーズ、バター類でした」
(*ちと、解説:オーストラリアではデイリーは、夜8時半までに発注。しかも、毎日できる。棚に入る分だけ発注かければ良かったので、売れ筋だけ、他の冷蔵庫に在庫を持てばよかったから、一番分かりやすい部門だったのね。よって、週3回しか発注出来ないグロッサリー、すなわち一般食品の発注が私が海外で任された最後の部門だった訳です。日本とは、ちと事情が違います。By すず)
「デイリーですか。日配って・・・分かりますか?」
日配と言って、一般の人に分かるだろーか? 現場に慣れた俺ではあるが、一般の人が分かるように説明するよう、常日頃から心がけている。新人を育てるなら、南チャンよ! それに、新店舗立ち上げも、やっぱりミナミ!と全店舗で ささやかれる理由が、ここにある。
「分かりません」
すず子は、俺が予想した通りの返答をした。
よしっ!ここからが俺の出番だぜ!
それでは、早速、メモの用意を・・・・と、言うまでもなく、すず子はメモ帳を取り出した。
準備は宜しい。
えっへん! 俺は、咳払いをし、説明を始めた。
「ここでは日配A、日配Bに分かれます。日配Aは、パン、牛乳、デザート、乳製品、アイスクリーム、卵です。日配Bは、水物、漬物、佃煮、納豆、麺類で、要するに和日配です。鈴木さんが担当されていたデイリーは、洋日配ですから、ここでは日配Aですね!」
とあるスーパーへご応募予定の方は、基礎知識としてメモってくださいませ。俺としても、助かるぜ。
すず子も、ふむふむ。。。と頷きつつ、メモっていた。上等だっ!
その直後、末永さんがすず子に話しかけていたので、
俺は、一旦、一人でバックへ戻ると最終チェックをした。
売場よし、バックヤードよし、顔よし、頭よし、身だしなみはバッチリ! だが、そろそろ雑誌の取材に備え、ヘアカットをしなきゃいけねぇ。江原オーラの泉チーフに関しては声の発声練習か・・・・。
9時を少し回った頃、俺は商売道具NO 2のマイクを取り出し、店内放送をした。
「グロッサリー担当者、10番まで」
ちなみにスーパーの店員にとっての必需品、商売道具NO1は何だと思う?
分かる人は? はい、末永さん!
「カッターです」
「正解」
これが普段の 明るく 真っ直ぐ(すなわち、線路のように) 前向きな 俺の姿である。
当然 俺は、海外のスーパーで働いていたという鈴木すず子に期待を寄せた。
全員が揃ったところで、俺は、一呼吸し、鈴木すず子の横に立った。
(←南ちゃん) (←当時の鈴木すず子)
お互い、あの頃は若かった・・・・!
カトだけが、若干19歳で何故か厄年42歳に見えた。
「鈴木さんは、オーストラリアのスーパーで働いていたそうです。お互い、学ぶ所があると思う。
それでは、鈴木さん。自己紹介をお願いします。
そのあと、皆さんにも自己紹介をして頂きます。
各自、名前と自分の担当をいうこと!」
「日配担当の ひらっちです」
「飲料担当のカトです」
何故か、カトは自己紹介をした直後、隣に居たひらっち氏に何か言い、笑いながら高潮していたのが気になった・・・・。
まぁ、修ちゃん店長も言うように、
「カトは いつも 顔が赤いけど」
気にせずにいよう・・・・。
最後はすず子とすでに顔見知りになっている末永さんが、
「雑貨担当の末永です」
と自己紹介をしたところで、では、宜しく~と解散。
皆が、それぞれの担当部門の荷出しへ散ったあと、俺は ひとまず大事な任務を終えて、ほっと胸を撫で下ろしたのだった・・・・
ミナミ 読んで下さってありがとう~!