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日々のあれこれ

現在は仕事に関わること以外の日々の「あれこれ」を綴っております♪
ここ数年は 主に楽器演奏🎹🎻🎸と読書📚

さくら訪問(6)

2009-06-23 22:38:16 | とある街のとあるスーパー

よく、6回まで続いたなぁ・・・。

時間にしたら、さくらに居たのは、ほんの2時間程度なのに。(殆ど2階の休憩室です)

さくらの外へ一歩出れば、そこは さくらではないので、このタイトルはヘンですが、まぁ、いいでしょう。

大幅に途中省略して、

ここは所変わって このう店。

店内に入ってすぐに、副店長の店内放送が聞こえたので、

出勤しているってことは、すぐに分かりました!

桃木副店長の店内放送はプロの中のプロって感じで、中には「八百屋みたいですよね」と言う人もいましたが・・・・

~以下、過去記事から~

とてもソフトな声で、とても滑らかな店内放送を耳にするようになったのは・・・。

確か、4月以降。タイムサービスの時間帯には、青果、鮮魚、惣菜、そして我がグロッサリーと、先を争うかのごとく、店内放送が聞こえてくる。

「さっき、店内放送で言っていた、**って、どこにあるんですか?」

「8番レジ前です」

このようにお尋ねになるお客様が結構いるということは・・・。

皆さん、聞いているんですね!

最近、耳にするようになったグロッサリー商品についての特売の店内放送。これは、きっと、プロを雇ったのだ!と思っていた。

桃木副店長が片手で長台車を引っ張りながら、マイクを手に持ち店内放送をしている姿を見かけるまでは・・・。

あれっ!?新副店長だったんだ!

新発見!

これまでも、店内放送については話題にしてきたが・・・。

西村チーフの「おもしろ注意:矢木さん 店内放送」

店長の「風に吹かれて豆腐屋ジョニー男前豆腐」

カトちゃんの「鈴木鈴子さん、10番まで!また来てるんですよ、外人

 

ある日、(ほんの数日前だが)カップラーメンの補充をしていた私と康永君。いつもの桃木車副店長の店内放送が聞こえてきた。

今度の副店長、店内放送、上手だよね!」

ほんと、八百屋さんみたいに声が良くとおってますよね」

やっ・・・八百屋・・・。

ちと、私とは、イメージが違う気もするが・・・。

あのソフトな感じは、八百屋というよりは、高級デパートでは・・・?

その後、バックで桃木副店長に会ったので、思わず話しかけた。

「最初、プロだと思ってました。マイクを通すと声が違って聞こえるんです」

へえ~、それは、自分では気付かなかったな。俺、こういう風にマイクを半分隠すようにして持つんですよ。だから、声がこもったように聞こえるのかも。やってみますか?」

桃木車副店長は、そういうと、私にマイクを差し出した。

いっ・・・いいえ、私は駄目です 康永君、八百屋さんみたいに声がとおりますよねって言ってましたよ

急にマイクを差し出され、気が動転した私は、とっさに話題を変えるため、康永君のオモシロ意見を述べた。

ごめんよ、康永君。

あっ・・・アイツう~~~(一人で・・・にこりっ)」

さっ・・・さすがプロ!

一人ごと・・・の・・・あとも・・・(^_^*) にこっを実行するとは!

 

そして、約10分後・・・。

只今より・・・」

ん・・・!? 気のせいか、声がうわずっているような・・・?いつもの滑らかさが、ちと、たりないかも・・・。

私に褒められた直後で、意識しすぎちゃったのかも・・・しれません。

桃木車副店長、34歳。

にこりっ^_^*のプロも、やはり、人の子でしたか!(爆)

 

 

・・・・その懐かしい声を聞き、店内を見回したとき、一番最初に会った店員さん(恐らく社員)に 「あの・・・副店長はどちらですか?」 「少々お待ちください。副店長、10番まで」 と、その場で店内放送!

えっ・・・・?

スウィングドアのまん前と、後半はバックヤードでお喋りしました。

4時のタイムサービスが始まる前で、一番忙しい時間帯に、仕事の邪魔してゴメンなさ~い

でも、何故か私のことをご存知のグロッサリーの女性スタッフの方も一緒にお話できて、(殆ど人生相談でしたが・・・)楽しかったです。

社員の中で、一番なが~く一緒に仕事をさせて頂いたのが、桃ちゃんでしたから、余計に気心が知れているというか、顔を見ると、いつもホッとします。

これからも、康永君が八百屋と絶賛していた七色の声の店内放送で、お客様を魅了し続けてくださいね!

すず

 

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さくら訪問(5)

2009-06-21 08:14:10 | とある街のとあるスーパー

「あ~居た居た! バックへちょっと物を取りに行っている隙に居なくなっていたから、探したのよ~! 副店長に聞いても、俺、知らんっていうし、カトちゃんに すずちゃん見なかった?って聞いたら、

僕は今、来たところですよ」 (この日は彼は遅番です、補足説明)

って言うし。今日は矢木ちゃんもお休みだし、折角ここまで来てもらったのに、このまま帰してしまったら、どうしようかと思った

岸辺さんが2階の休憩室へ上がってきたのは、1時頃だったと思います。

それまで他の部門の人とお喋りしていました。

売場をキョロキョロしたとき、岸辺さんが居なかったので2階かな・・・・・? と上がってきてしまい、結果的に私が置いてきてしまいました・・・・。

ごめんなさい。

 

でも、その後2時過ぎまで、休憩室でお茶しながら、ゆっくりお喋り出来て楽しかったです。ラーメンの話も聞けましたし・・・・。日清のメーカーさん、元気かなぁ。

 

「先日、桃木副店長に会ったよ! 元気そうだった」

桃ちゃんの方から声をかけてくれた、楽しくお喋りできた、と嬉しそうな岸辺さん。

「このう店へ行っておいで! 副店長に会ってきなさい」

うん。行ってくる」

「今度は外で皆で食事しようね

(さくらでのお話は以下、省略)

 

おなかがすいたので、朝食です。

天気は悪いですが、充実した日曜日をお過ごしくださいませ。

 

すず

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さくら訪問♪(4)

2009-06-19 05:25:26 | とある街のとあるスーパー

二階へ上がると、そこは休憩室。

ここへ来るのも当然ながら二週間ぶり。

ドアを開けると、定位置でお昼を取っているスタッフ。

だいたい、皆さん、何処へ座るか決まっているんですよね。

精肉の従業員のみなさんへ店長から「気を付けて下さい」とアドバイスがあったそうで、世の中、どんどん生き難くなっていくなぁ・・・と思いました。

「あっ! 元気にしてた? どう? 新しい職場は? みんないい人? それは ちょっと悔しいね」

ちゃん。

「ここも みんないい人ですよ。

「爆

何も変わっていない休憩室。

変わらない職場。

その・・・・メインの職場での状況も私が居た頃と 何も変わっていないようです。

お互いの近況報告をしている最中、岸辺さんが慌てて二階へ上がってきました。

私が置いていったしまったような・・・あんなに探させてしまって ごめんなさい。

続く・・・

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さくら訪問♪(3)

2009-06-18 00:22:20 | とある街のとあるスーパー

「質問をメモしておいたから、電話しようと思っていたんだけど・・・」

と、おっしゃる岸辺さんと共に、ラーメン売場へ向かいました。

二週間ぶりに見る売場です!!!

話しながら、前だししました。(爆)

ここで、こうして再び 「仕事」をすることは無いでしょうが、

前だしなら、自由に出来ます。

何処の店でも、店舗でも。(爆)

完璧に綺麗で、欠品もなくて、

感動しました!!

新店舗は品薄だった・・・・売れ筋が・・・なんて、余計なことをつい、喋ってしまいました。

 

それから・・・・

「ふわふわ卵味が一番売れるって聞いたけど、

このピリ辛が最近、良く売れるんよ」

と、岸辺さん。

 

「暑くなると、辛いものが食べたくなるのでしょうね。

夏場に坦々麺が良く出るようになるんです」

 

昨年までなら、日清の坦々麺があったのに。

残念だわ。

定番が無理なら、スポットで入れたらいいのに。

ここに書いておこう~と。

たぬき部長もご覧になられているでしょうから。

 

 

私と岸辺さんの様子を見に来た末永さんたちが、

「長くなりそうやね・・・先に上がるね」

 

・・・・・と、いうわけで、

この続きは明日へ

 

すず

 

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さくら訪問(2)

2009-06-17 05:58:34 | とある街のとあるスーパー

バックから中へ入ると・・・

グロッサリーの先輩の後ろ姿が見えたので、

「**さん!

と、声を掛けました。

「来る時は電話してって私が矢木ちゃんに頼んだんよ

ここには詳しく書けませんが、お心遣い、本当に感謝致します。

ありがとうございます。

パソコンに向かっていた副店長と、売場からバックへ下がってきた曽我さん、そして4月に本社から赴任した事務の・・・お名前、勿論知っていますが何て書けば・・・?短い間でしたが、本社に居らしたときから、顔見知りだったので、時々、ちょこっと売場で言葉を交わすことはありましたし・・・今回は、ゆっくりお話しできて、良かったです!

「こんにちは」

店長室の中で、制服を返したあと、しばらく近況報告。

お嬢様も私と似た職種だそうで、

帰宅すると、エネルギーを吸い取られたように ぐたっとなる・・・ということもあるそうで、でも、その一方で、エネルギーをもらうことも、勿論ありますし、同じなんだなぁ・・・と、頑張ろうと思いました。

「こういう仕事は、鈴木さんに合っていると思いますよ」

「ありがとうございます」

電話では矢木さんも、このあとすぐに売場で会った岸辺さんも御寿司の女性スタッフも同じことを仰ってくださり、大いに励まされました。 

こうして話をしているとき、勤務を終えた末永さんも、店長室へ・・・!

「こんにちは。 お久しぶり~です^^」

「半袖のブラウスが来ているから、貰っていって下さいね

二階の休憩室へ上がったあと、

「さっき、店長室で後ろ姿を見かけたんだけど、すずさんだったんだ! 分からなかった!」

と他の部門のスタッフ。

ビルサービスさんも、「なんか雰囲気が違うねぇ。元気そうで良かった」

 

そしてー。

私の後、乾物担当を引き継いで下さった岸辺さんとラーメン売場へ・・・!

久々に見る売場。

懐かしさがこみ上げてくる瞬間でした。

 

続く・・・・

 

すず

 

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さくら訪問♪(1)

2009-06-16 06:07:11 | とある街のとあるスーパー

日曜日ですから、ほんの一昨日。

約二週間ぶりに、さくらを訪問しました!

制服をお返しするためですが、勿論 本当は さくらのスタッフの皆さんに会いたいから。

毎日、必死になって新しい環境、人々、仕事に慣れようとしてきた この二週間。。。

相変わらず、仕事が終わると エネルギーを吸い取られたように ぐったりとなることが多いです。 腕をひっぱられたり、抱きつかれたり・・・身構えていないと、いつ、予期せぬことが起こるか分からない仕事内容なので。お昼時間も休憩はあってないようなものなので、自分も必死です。

そんな慌しい二週間を終えて、やっと迎えた日曜日の休日。

わずか二週間かもしれませんが、お店の前に立ったとき、(従業員の入り口から 今回はお邪魔しました)

懐かしい~~!

と、思いました。

ゴミ捨て場の前に居たのは、店長と青果のチーフ!

「こんにちは♪」

と声を掛けると、最初は私に背を向けてチーフと喋っていた店長が にっこり笑って、

「こんにちは!」

と笑顔で迎えてくれました。

勿論、青果のチーフも!!

お二人とも、とっても穏やかな表情で出迎えて下さったので、

私がこの日、12時にさくらを訪問することを前もってご存知で、門の前で出迎えてくれたみたいだわ~感激!・・・と思ったのでした。えへへ♪

「制服を返しに来ました。お元気ですか?」

と、言うと、店長は、

「はい。事務の**さんも、副店長もみんな中に居るよ!」

と、優しい笑顔

「では、あとで・・・」

と、皆が居るらしいバックへ向かいました。

店長は休日だったのに、お店へ来ていたそうですね。

わざわざ私に会って下さるために、12時ちょうどに 入り口の所にいらっしゃったのだわ、きっと・・・・・!

と、自分勝手に決めて喜ぶすずでした。

 

続く・・・

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水面下のパズル

2009-06-15 00:37:00 | ショート ショート

僕は恋人を死なせたことがある。

湖の水面に映った自分の顔がポチャンという音と共にくねくねと曲がり、やがては割れたガラスの破片のように底へ向かって沈んで行く様を見届けたとき、僕の身体もその場に崩れ落ちた。

あの日以来、僕の時間は止まったままだ。膝からガクンと落ちた拍子に、怪我をしたのか、膝小僧に血が滲んでいることも、地面に手を付いて首を垂れている間は気付きもしなかった。

(こんな別れ方をするなら、僕たち、出会わなければ良かったね・・・)

判を押された離婚届を面会時に渡されたとき、僕は・・・・いや、あの頃はまだ、「あたし」と自分のことを呼んでいたんだっけ・・・泣きじゃくりながら、ずっとマー君の側に居させて欲しいと哀願した。

「分かってくれよ。あたしがマー君の両足になってあげるって、それ・・・凄く重いんだ。今まで普通に出来ていた当たり前のことが、千夏の手足を借りなきゃ何も出来やしない自分が許せないんだ。お願いだ。俺を自由にして欲しい。本気で俺に生きていて欲しいと思うなら、黙ってこれにサインして役所へ届けてくれよ。千夏に俺がして欲しい、最後のお願いだ」

あたしが言われるままに自分の名前を記入する気になったのは、彼の担当医からも助言があったからだった。生まれながらの身体障害者なら、こんなものだと思っているから、歩けない事実も「障害」とは捉えていない。「不便」ではあっても、生きるうえで、「障害」とはならないらしい。他の体の機能を使って出来ることをやろうとする。手を差し伸べられることも、素直に受け入れられる。しかし、正人さんは違う。昨日まで貴方が居なくても何不自由なく出来ていた日常のことが、ただ、戸棚からマグカップを取る、という簡単なことが出来なくなることで、精神的な病をも引き寄せてしまっている。

「千夏が側に居ると、俺が駄目になる!」と一番身近な貴方に八つ当たりするのは、思い通りにならない自分の身体に腹を立てているから。一度、離婚しても、復縁することは いつだって出来るのだから、今は彼の意思を尊重してあげることも、大切かもしれない・・・・と。

だから、あたしは、そうしたのだ。本当にマー君から離れる気などなかった。

夫婦だった あたしたちが再び恋人同士に戻ったとき・・・・彼が好きだったアップルケーキを焼いて病棟へ行くと、マー君は看護師さんに車椅子を押してはもらわず、自分で大きな両脇の車輪を回しながら、透明なガラスに囲まれた面会室へ入室した。

あたしと別れた後のマー君は、幾分、明るさを取り戻したかのようだった。

「ほら!千夏に車椅子を押してもらわなくても、こうして自分で操作できるよ」

と、嬉しそうに笑う。何故だろう。あたしは あたしと別れたマー君が少しずつ明るさを取り戻していく様を心の底では素直に喜べずにいたのだろうか。べったりと側に付き添って、必死に介護している方が幸せだったのだろうか。あんなに尽くしていたのに、ただ、真っ直ぐに愛しているのに、何故、マー君は受け入れてはくれなかったのだろう・・・・・?

理屈では、分かっている。千夏は重い、といわれる理由も分かってはいる。でも、納得できない。連れ添いを体当たりで愛する事が、何故、重い、の一言で片付けられなきゃいけないの?と自問自答してしまう。あたしは、結局、変われなかった。こんな自分を変えることが出来ず、マー君を追い詰めてしまったのだ。一度は精神科病棟から退院した彼が、再入院することになったのも、あたしが原因なのだ。

あたしたちが出逢ったのは、お互いがツーリングを楽しんでいた旅先だった。赤茶けた大地を風を切って走る。非日常的な空間で出逢ったからか、瞬時に意気投合し、翌年には結婚した。結婚後も二人で遠出し、スナップ写真はどんどん増えていった。彼が交通事故にあうまではー。

あたしは部屋中を飾っていた二人のツーリングの写真をすべて押入れの奥にしまいこんだ。嫌だ。思い出してしまう。事故さえなければ・・・

「俺の側に寄るな~! 独りにしてくれ」

マー君が荒れて、叫びまくる度に あたしの記憶はあの日に戻り、ツーリング自体を憎んだ。楽しかったはずの二人が共有するツーリングの日々も、思い出したくはない悪夢となった。

ある晩、からからに喉が渇き、夜中に何度も目が覚めては、這うようにキッチンの水飲み場まで行っては、やっとの思いでグラスに水を注いだ。一口、飲むと、また一口、しばらく口の中に水を含む。そうしていないと、からからに乾いた喉は、少しも潤わないのだ。これまで幾晩もグラス一杯の水をがぶ飲みしては、乾ききった喉は、そのままで、お腹だけが水で膨れていく様を体感していた。水膨れして部屋へ戻ると、ベットに横たわったまま うつろな目であたしを見ているマー君の視線にぞっとした。

「起きていたの? 寝返り出来なくて辛かったでしょ?あたし、悪い夢をみていたみたいで、起きれなかったから、ごめんね」

あたしはマー君の身体を半分起こしながらも、力尽きて、自分の寝汗でべっとりしたシャツのまま、彼の顔面に倒れこんでしまった。

「何故だ・・・? 何故なんだ。千夏、そんなに嫌か? また、あの頃の夢にうなされていただろ? 俺たち、もう別れたんだ。寝泊りになんか来なくていい。こんな別れ方をするなら、俺たち、出会わなきゃよかったな・・・」

出会わなきゃ良かった・・・・出会わなきゃ・・・・。一番、聞きたくはないあの台詞が耳元でエコーする。

「あたしの寝言に文句言うなんて、ずるいよ。言いたいことじゃないんだもん。夢にまで責任持てない・・・」

出会わなきゃ良かった・・・・何度、マー君の口から聞かされただろう。それも、あたしが悪いって。過去の夢を見る、あたしが悪いって・・・・。

別れても駄目なの? 恋人に戻っても、あの日の記憶は消せないよ。二人の趣味がツーリングでなければ、そもそも あたしたちは出会わなかった。あの「事故」も起こらなかった。きっとマー君は今も両足で走り回っていたよね・・・。あたしが悪いんだ。きっと、そうよ! 

あたしは、何をマー君に喋っているのか、分からなくなっていった。ただ、マー君が夜中に再び興奮して叫ぶ声が部屋中の壁にぶつかっては自分に跳ね返ってくるのを聞いていた。

「違う!そうじゃない!そうじゃないんだ、千夏。俺に構わないで欲しいだけなんだ。千夏の距離が近すぎるんだ。俺の側にぴったりと くっついている必要なんてないんだよ。すべての過去を悔やんで俺の側にいることが義務のように感じている千夏に側に居られると気が狂いそうなんだ。どうして分からない・・・?」

分からない、分からない! あたしは ただ貴方の側に居たいの。それ以外、何も望んではいないの。どうして世話しちゃいけないの? 夜中にグラスいっぱいの水をくんできてはいけないの? え? 枕元に置いておいてくれたら、自分で飲める? でも、汗をかいたときの着替えは? タオルを背中に入れておけば、一晩くらい、どうにかなる・・・? でも、それって辛いでしょ? それより千夏の心が重く のしかかって辛いですって? 

夜が明けない闇の中に包まれて、二人して ずんずん沈んでいくかのようだった。遠くで居る筈も無いフクロウの鳴き声がする。これが幻聴なのか、それすら分からない。この闇・・・二人で居る限り、二度と、抜けきれないのか・・・? それなら、いっそのこと・・・・

再入院したマー君が、洗顔用の洗面器、一杯の水に顔をつけて、この世を去ったのは、あの晩から わずか一週間後のことだった。鍵がかかる個室に入れられていたマー君が、自殺を図ることは、ほぼ不可能だという我々の認識が甘かった、許して欲しい、と主治医は深々と頭を下げた。

あたしは、その通りだと主治医をなじった。その後、どういうわけか、半年も経って主治医から送られてきた手紙には、マー君の遺書が同封されていた。

「千夏へ。許して欲しい。俺たちは、二人で居ると駄目なんだ。千夏は何処までも女の子で、俺に尽くしてくれた。でも、それは同時に俺に甘えることなんだ。千夏には精神的にもっと俺から自立して欲しかったし、俺の自立も認めて欲しかった。俺にはそんな千夏を支える事が重荷になっていったんだ・・・いつも、あの日へ戻る千夏の心が重かったんだ・・・」

 

僕は、あの日以来、女の子であることをやめた。独りで居ても、誰かと二人で居ても、自立して生きていく決心をするだけのことをマー君は僕に残してくれた。命を経つ、ということまでして。死を選んだマー君の選択が正しいとはいえない。でも、そうするしか僕達が救われる方法は無かったのかもしれない。僕は、あの日から、ずっとそう思って生きてきた。決して誰も好きにはなるまいと。だから、独りで自立して生きていくということは、同時に僕の・・・いや、僕達の時間が止まってしまうことも意味していた。

ときどき、こんな風に水面に映し出される自分の顔を見ると、急に動悸がして 割れたガラスのようにバラバラに自分の身体が地に落ちてしまうのは、あの日が原因だ。

あの日、闇の中に落としてしまった心のパズルを合わせることが出来ないまま、僕は生きている。

「千夏さん! 居た居た! 随分、探しましたよ。キャンプ場を離れて一体、何処へいっちゃったかと皆、心配していますよ。ささっ! 急ぎましょう。日が暮れてしまう!」

僕を呼びに来たのは、ほんの一週間前に出逢ったばかりの施設に入居している男性だった。新人なのに、利用者さんたちのお世話をするスタッフとしてキャンプに参加してもいいものだろうか・・・? と参加を渋る私を説得して、ここへ引っ張ってきたのが42歳の彼だった。

自分のことを「僕」と呼ぶなんて・・・しかも、男に興味ないなんていって千夏さん、もしかして・・・あれってわけじゃないですよね? 冗談か、本気か分からないような質問を僕に投げつつ、それ以上は何も聞かず、彼は声高々に笑った。

ツーリングが大好きで、若い頃は無茶をしましたよ、と笑う山本さんは、テントへ戻る途中、僕に一枚の写真を見せた。

「これ、俺がオーストラリアの大地をツーリングしていた頃の写真です。まだ、20代後半。昔はバリバリ海外で仕事もしていましたよ。会社に行けと言われたところへは、何処へでも行っていましたっけ・・・。赴任先で気に入った国は、豪州。いいですね~あの国は広くて、真っ直ぐに伸びる道を走るのは爽快でしたよ」

ツーリングと聞いただけで、僕の心の奥がうずいた。

あぁ、マー君、あたしは、貴方の写真、すべてを勝手に処分してしまったんだったわね。

「山本さん、ツーリングが好きだったんですね。あたしの古い知り合いも同じで・・・。無茶しちゃいけませんよ。怪我するようなことは一度もなかったですか?」

彼は あれ?と一瞬、とても驚いた顔をすると、足を止めた。彼の背後でカサカサッと草木が揺れる。ウサギかリスでもいるのだろうか。

「千夏さん! 今、あたし・・・って言いましたね? 初めて聞きました!! 怪我は・・・確かに何度かありましたよ。生きているのが不思議なくらいです。でも、俺は再びバイクに乗りますよ。近い将来、きっとね。そのためにリハビリして、お酒も控えて、きちんと薬も飲んでいるのですから!」

山本さんは、確か、医師からバイクはおろか、車の運転も止められている。心の病と薬の影響で、ほぼ、永久に乗り物を運転することは禁止と言われている筈だ。それなのに、何故・・・・?

僕は再び、山本さんの手の中にあるセピア色の写真へ手を伸ばした。もう一度、見せて頂いてもいいですか? と許可を得ながらー。

ゆっくりと歩きながら眺める写真の中の彼と目が合う。今、この瞬間と未来を見つめる目だ。何故か懐かしい。僕が知らない若い頃の山本さんが、そこにはいる。マー君も確かにこんな目をしていたっけ。

「俺は、頑張りますよ! リハビリ!! 自分の力でいつか、乗れるようになりますよ、きっと!」

僕の隣を歩く山本さんと元気だった頃のマー君の姿が一瞬、重なった。

僕は・・・・

いや、あたしは、きっと、数年したら、再び誰かを好きになる。

山本さんの過去は何も知らない僕なのに、何故か たった一枚の写真から これまでに歩んできた人生を凝縮して見せてもらったような気がした。マー君が本当に求めたのは、これだったのだ。

過去を否定せず、未来へ繋げること。

頑張る意欲は、きっとそうすることで心の底から沸き起こるのだ。

そしてー

適度な距離を置いて、必要に応じて そっと寄り添うこと。

お互いを支えあうこと。

一人の「人」として。

遠い昔、水面下へバラバラに落ちたパズルが、あれから何年も経って、ようやく組み合わさったような気がした・・・・。

 

                  - The end -

 

 このお話は すべてフィクションです。

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