鈴木すず子がグロッサリーに加わってから二週間が経過した頃・・・。
グロッサリー女史の顔である矢木さんも無事に回復し、グロッサリーへ再び戻り、メンバーが揃った。
「鈴木さん、すみません」
俺は こんにゃくの補充を終えて、空箱と共にバックへ戻る途中にすれ違ったすず子に言った。
何を謝っているのだろう? と不思議そうな顔をするすず子に俺は付け足した。
「毎日バタバタして、ゆっくり仕事を教える暇もなくて・・・。後で、話があるので
店長室へ来て頂けますか?」
「・・・・・・」
ここで俺は、にっこりと最高の笑顔を向けた。
話、店長室、 この二つのキーワード
を拾って、多少
びびっている様子が伺えたからだ。
ちょっと不安げに、「はい、分かりました」 とすず子は答えた。
なぁ~に。心配には およばねぇ。
ちょっとした質疑? というか、身元調査というか、頼み、というか、今後の予定、というか・・・個人情報というか・・・・まぁ、そんなところだ。
定番商品も大方片付いたところで、俺は再び
「鈴木さん、今、いいですか?」と声をかけた。
「はい・・・・」
俺が先に店長室へ入り、椅子を整えていると、鈴木すず子も、「しっ・・・・失礼致します」 と遠慮がちに言いつつ、こわごわ
と店長室へ入室した。
まぁ・・・人生初!の店長室であろうから、当然かもしれない。
それに、バカ笑いはするが大人しい女性だと、俺は思っていた。
実は、猫を何匹か かぶっていて騙されているのだと悟るのに2ヶ月半程かかったのだが・・・・。特に矢木さんが復活した辺りから、
岸辺さんも加わって、それにどう言う訳か、プレーオフの時期、
ホークス
という共通の話題を見つけた初対面は照れ屋のカト
も更に加わりお喋りを楽しんでいる様子であった・・・・。(結構、観察力のある俺!)
はやり・・・人事で面接をしたときのすず子の方が「ジ」で、ぶりっこしていなかったのである。しばらく大人しかったのは、現場へ入ってからの数々の洗礼にドキモを抜いたか・・・?或いは、日頃の天然で面接を受け、ちと反省?したのかもしれねぇ~~~。
前置きが長くなったが、この日のすず子は、大人しい方のすず子であった!
「お座り下さい」
「はい、失礼します・・・・」
しーーーーん。
店内を流れるBGM以外は、何も聴こえては来ない。
一瞬のしずけさを振り払うかのように、俺は、「え~~~っと」 と取りあえず発声練習をした。
「まずは・・・ですね。土用のウナギのことですが・・・・」
「あ、それなら、店長からすでに聞きました!従業員は全員購入して下さいって言う申込書を出せばいいんですよね?」
俺の言葉を遮り、安心したようにすず子は言った。しかも、ポケットにしまっていた申し込み用紙まで俺に見せてぇ~! あ・・・・はっ・・・・はははは・・・・。
「そっ・・・そうです。・・・・で、ですね!」
俺が言いたいのはその先なのよぉ~。俺は慌てて続きを話した。
「鮮魚でウナギを売るのですが、土曜日と日曜日に事前申し込みのお客様がウナギを受け取りに来るのです。殆ど従業員と業者さんです。その・・・ウナギの受け渡しなどを手伝って頂けませんか?」
「ウナギ?」
すず子の表情から、ウナギは蛇みたいで好ましい感情を抱いてはいないということが、見て取れた。ウナギ嫌いならば、気の毒ではあるが・・・・
「毎年、応援を要請されるので、グロッサリーから一人、出しているのです (多くの場合、新人・・・汗 ←ここの部分は俺は心の中で呟いた
)
そこで、今年は是非鈴木さんにお願いしようと思っているのですが、宜しいですか?」
宜しいも何も、嫌です、とは言わないだろうが・・・。すず子は、はい、分かりました、と普通の返事をした。ほっ。これが、慣れてくると普通ではない返事をすることが増えてくるのだが・・・・? 俺が固まる副店長、ミナミちゃん
になる頻度も正比例
特に年末の反省文を一読した俺は、笑っていた
修ちゃん店長とは反対に、瞬時に冷凍保存ミナミ化した。 しかし、この時点では俺はまだ、何も知らない~っ。
「ウナギの話は、これで終わりですが・・・・」
俺は咳払いすると、次なる議題へと話を移した。
「鈴木さんは・・・・
結婚は・・・・
されて・・・・
いますか・・・・・?」
とても聞きやすくはない質問である!
すず子は、「いいえ。していません」と答えた後、俺の顔を見ている。
まるで、今度は当然オレ自身の個人情報を教えてくれる筈よーーと期待を込めて?
すず子の顔には、「副店長は結婚されているのですか?」 という質問が書かれている。
ついでに、「お子さんは何人ですか? 男の子ですか? 女の子ですか?」とも・・・。実は、これについては、またまた
長い話が・・・・。初期の頃からの読者さまはご存知の通りであるからして、ここでは省略いたす。一つだけ・・・夜の王子、康永氏に子供の数
(全部で7匹)では俺の記録を抜かれた、
とだけ記しておこう。
俺は、すず子の 「顔に書かれてある質問には、このときは、あえて答えず」 次の話題へと話を移した。
「鈴木さんは、一日 8時間、働けますか?」
一瞬の間があり・・・この間は、家庭の事情等を考慮し、思案しているのだろう。当然である。
「今は子供が小さいので、いつ何があるか不安で・・・あ、子供というのは甥っ子ですが、幼稚園に行く年齢になれば、落ち着くと思うので、その頃には8時間、働けます」
「いま、甥っ子さんは、おいくつですか?」
「4歳です」
「・・・・ということは、8時間働けるようになるのは、来年の4月? 分かりました」
経歴だけ聞けば、のほほ~んと海外で楽な暮らしをしてきたと勝手に思い込む人もいるだろうが・・・。他人には語れない人生を垣間見たような気がした・・・?
「最後に、もう一つ。
実は鈴木さんに担当を持って頂こうと思っているんですよ。
今、俺が担当している乾物です。その内、時間を見つけて発注の仕方や売れ筋商品についてなどの説明をしますから」
「乾物・・・?」
乾物は商品数が多い。食品の3分の2を乾物・調味が占めている。季節によって動向も変わる。よって「読み」が必要で、欠品もしやすい部門である。
日本のスーパーで食品を全く担当したことがない新人くんには当然 難しいだろう。
不安が広がっているのは一目瞭然なので、俺は最後に鈴木すず子を励まして、今日のお話は終わりとした。
「俺が一から教えますから。分からなければ、何度でも教えます!
」
いわゆる引継ぎ日記が幕を開ける・・・・・!
ミナミ
おはようございます。
昨日は通常勤務のあと、英会話を教えて、途中、買い物も済ませたので帰宅は9時過ぎ。へろへろ~のすず、です。九州はようやく梅雨明けし、むっとした暑さ。先週の土曜日出勤の振り替え休日でなければ、体調に自信が持てないところでした。今朝、早く母は熊本の実家へ・・・。今年は祖父の初盆です。12月31日に逝くというバタバタでしかも哀しい年明けでしたが、お盆には ゆっくり親族と祖父の思い出話が出来そうです。サービス業ではない現在は、13日からお盆休みが取れます。この点は夢のようです。 皆様も体調管理にはお気をつけ下さいね。
本日振替え休日の・・・