世の中、そろそろゴールデンウィークかぁ…。 先日、利用者さんをご自宅まで徒歩で送る間も 「ゴールデンウィーク中は、何処かへ行く? 仕事もあるだろうからね。何も混雑する時期に好き好んで何処かへ行かなくてもねぇ。 でも、近場の藤祭りやチューリップ祭はいいかもしれないね…」 みたいな話をしたんだった。 毎年、最も忙しいのは、4月。 年度始めであり、仕事の上でも新学期であり、ECCの研修とか、教材費と受験料と月謝の振込とか、休日であっても何かと雑務が多い。 介護の仕事も今のディサービスになってから そろそろ一年…。 だけど送迎時間は大幅に変わり、新規利用者さんも一気に増えて、(急な退職者が出て勤務日数は月に4日増えた分、休日は減ったし) 3月、4月と忙し過ぎた。 ボランティア研修にはどうにか出席できたものの、その後、実際の『活動』は4月になって、一度も出来ていない。(今年でこちらも3年目。ECCは6年目。) そして今年はこれらに加え、来月発売予定の『絵本』の準備もある。 甥っ子への10歳のプレゼントのつもりだったけど、5月2日の発売日というのは、無理だろうな…と諦めかけている。でも、ちゃんとしたものを世に送り出したいじゃない? この際、一年先に延びても致し方ないと覚悟を決めてしまおうっと。 その方が精神的にもずっと楽かも。
まぁ…なんというか、つれつれと書いてるけれど、要するにゴールデンウィークだからといって、私には何処か旅行へでも出かけていこうという気もなければ、時間もない。 暇がないということは、ある意味とても幸せなことなんだけど、それでも心の何処かに、「気候がいいこの時期、何処かへふらっと行けたらいいのになぁ…」という気持ちが全くない訳ではない。 できれば ちょっぴりミステリアスな旅なんて いいかもしれない。
そんな ある日のこと。 正確には、月曜日だったかな。 ポストに私宛の手紙が届いているといって、父が分厚い茶封筒を持ってきた。あぁ、これ。 私には心当たりがあった。 最初にイタリアに住む彼女から 突然 「君へ」と分厚い手紙が届いてから、もう随分と長い時間が過ぎてしまってはいたし、正直、忘れかけていたけれど、そろそろ届いてもいい頃かもしれないと思っていたから。
なゆたさん…って人、知ってる? 実際には一度もお会いしたことないんだけど、日本に住む私に長文の手紙を書いて送ってくれた人のこと。 イタリアで翻訳の仕事をしているらしい。日本人だから、当然 手紙も日本語で書かれているんだけど、独特の言い回しで、「日本じゃちょっと、こんないい方、しないだろうなぁ」と、思ってしまう。 前回、数年前に初めて手紙を受け取った時は、なゆたさんって女性だと勝手に思い込んでいたけど、(実は性別…何処にも書かれていなかったような…) 実際はどうなんだろう、って今回思った。 手紙に出てくる相棒さんとやらは、男性みたいだけど、なゆたさんは…? まぁ、いいや、細かいことは。 でも男言葉だったり、女性らしかったり、そんな疑問も抱きながら、前回にも増して長文になった分厚い招待状を読み始めた。
招待状…。 そうそう! 今回受け取ったのは、イタリアの都会の ほんの外れに位置する村へ行ってみないかっていう、招待状だった。 イタリアの村…。どんな村かというと、これが闇の中に沈む村らしい。得体のしれない殺人鬼が潜んでいるような…なんでも連続殺人事件が起きている村で、それなのに犯人は捕まらずに時効で調査打ち切りになったらしいよ。 その謎解きの旅へご招待ってことみたい。
イタリアにはゴールデンウィークなんてないだろうけど、日本じゃ世の中ゴールデンウィーク。 いいんじゃない? 行ってみよう! 私が苦手な連続殺人事件を解明する為に 日本に居ながらにして、時空を超えて、現代から1970年代、いや、第二次世界大戦中まで時代を飛び越えて時間旅行をしてみることにした。 ほんとはさぁ…。 なんか、30ページ、60ページと、読み進める内に、怖くなって、ページを捲るかわりに さっさと閉じてしまいたかったんだけどね。 だって、読み始めたのは、小包を受け取った翌日、つまりは貴重な休日の夜。。。 そして翌朝には、きちんと7時には起きて、何食わぬ顔をして いつもの職場へ出かけなきゃいけなかったから。 「怖い想いをしながらイタリアからの招待状を読んでいたら、寝不足になった」なんて職場では言い訳なんて出来ない。 だから、「もうこれ以上、読み進めるのはやめておこうか」と思った。 でも、怖い物みたさっていうの? 結局、やめられないまま、最後まで一気に読んじゃったんだよねぇ、これが。
人口わずかな静かな村で、高齢者ばかりが数年置きに殺される村。 被害者は、いずれも60歳以上…って、ちょっと待ってよ。 私、高齢者施設で働いているんだよねぇ。 今は高齢者でも皆、それぞれに当然ながら若い時代はあった。若かりし頃の恨みつらみだろうか。しかも皆、電灯もない、暗がりの夜道を独りで歩いているところを狙われている。 頭を殴られ、谷底へ転がり落ちて、発見されているんですって。 これら殺人事件とは別に自殺とされた事件も、なんか怪しい。近くに落ちていた石に血がついていて、転んでぶつけたからだろうとか、村に一人しかいない医師が診断しているから、なんか うさんくさいというか、もしや医師もグルになって 村に潜む殺人鬼(!?) に手をかしているんじゃないか、とか、村長も怪しいぞ!! とか、色々思案する内に村人全員が怪しく思えてきた。 だって、なゆたさんと相棒と一緒になって私までイタリアへ時間旅行に出かけて行って、村の人から何か話を聴きだそうと耳を傾けるのはいいけれど、村中の人達が口が重く、目を逸らし、何かに脅えているようでね。事実、口を開き始めたじいちゃん、ばあちゃん達が近年になって殺されていた。
何かとても重大なことを村全体で隠してるみたいでね。 その秘密が知りたくて、招待を受けてしまった。 繰り返すけど、この閉鎖的な村で起きた数々の殺人事件について、村人は何も語ろうとはしないらしい。 何かに脅えるかのように。 こんな気味が悪い村に 日帰りで出かけて調査するのも、ほんとは嫌だ。 特に この村にたった一軒しか無いホテルから閉めだしをくらって、仕方なくバスに乗って戻る場面なんて、バス停でバスを待っている時も、気が気じゃなかった。 海外って、結構、バスが突然キャンセルされて運行されなかったり、一時間も遅れてきたかと思ったら、また別の日は予定時刻より早くついて、そのまま乗客を待たずに行っちゃったとか、いろいろあるからさぁ。 こんな村にお泊まりだなんて、闇のような夜を迎えるなんて、やだやだや~だ。
…で、何とかバスに乗り込み、それでも他にバスの乗客といったら、なゆたさん、相棒さんの他、ほんの数名しかいなくて…闇を抜けて普通の街の明かりが見えた時、心底ほっとした。 普段は都会のネオンより、静かな田舎の方がいいと思ってる私が街の明かりが見えてきたってところで、ほっとするなんて、珍しいこった~っていうか、初めてかも。 真っ暗な闇は怖い。 それだけで怖い。 ましてや、灯りが無い夜道で人が何人も殺された村となると…
このバスに乗って闇の中を (まだ…到着しない…?)と ドキドキしているシーンが最も印象に残っていて、それだけでゴールデンウィーク前に、しっかり小旅行した気分の私。 しかも 行き先といったら、普段じゃ ちょっとあり得ない…イタリアの…連続殺人事件が半世紀に渡って起こった村。 怖いのは、これらは単なる創作じゃなくってね。 実際に起こった事件らしいのよ! 被害者リストと顔写真。 当然ながら、被害者は皆、イタリア人。 容疑者の名前、これまでの裁判の経緯に、診断書を書いた医師、それに新聞記者や検事の名と、これまた顔写真まで資料として載っていたのよ! 〇〇作家や、〇〇作家さんが書くミステリー小説もいいけど、あれらはあくまで創作じゃない? 何が恐怖って、実際に起こったことが恐怖よね。 でも、事実って、ほんとのことって、何だろう… 視点が変わると、何が事実か分からなくなる。 でも、乗客、ほんの数名で村に灯りがなくて、村から次の街まで暗闇の中を走るバスに揺られることは、恐ろしいって! それだけは絶対!
『あおい村の点鬼簿』 goodbook出版より刊行されたばかり。 心臓が強くて、事件解明に興味があって、GWにイタリアの村へ行ってみる勇気がある方は…是非!!