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日々のあれこれ

現在は仕事に関わること以外の日々の「あれこれ」を綴っております♪
ここ数年は 主に楽器演奏🎹🎻🎸と読書📚

『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する 著:亀山郁夫

2021-06-30 21:23:49 | 読書

 光文社の新訳シリーズの翻訳を手掛けた亀山郁夫氏による『考察』と恐らく、続編は、こんな内容になったのではないか?という、かなり納得な内容でした。

 私は最初、小説のような形式で書かれているのかと思ったのですが、そうではありませんでしたが。

 続編を空想する上でのポイントがいくつかありますが、大きな鍵を握っているのは、『序文』

「私の主人公アリョーシャは、たいした男ではない」と序文にはありましたが、1巻から5巻まで、全編を通して読み終えるまでもなく、1巻のみ読み終えた時点での私が、ブログに何と感想を書いたかといえば、

「まるでカオス状態。多くの登場人物の中で、アリョーシャだけが、唯一、まともだ。」でしたよね。

 実は、ドストエフスキーがなくなった 直後、ロシアでは、

「第二の小説では、アリョーシャが皇帝暗殺に関わる筈だったらしい」と噂になったとか。

しかし、序文を見る限り、たとえ未遂で終わっても、皇帝殺しに関わる人の名が無名な訳がない、だから、アリョーシャは関わっていない、というのが亀井氏の意見。私もそう思います。あの天使のようなアリョーシャが、皇帝殺しだなんて...その後の13年間に何があったとしても、そこまで人格が変わるだろうか? どう転んでも...というのが感覚的に思うことです。

 亀井さん曰く、「結論から述べる。恐らくアリョーシャが皇帝暗殺者そのものとして名をはせることはなかった。序文にいう、「彼は有名ではない」がその動かぬ証拠である。そしてその実際の役割は、コーリャ・クラソートキンが担う。」(138ページ15行目~139ページ2行目)

 

 コーリャ・クラソートキン。アリョーシャに認めてもらいたくて、背伸びをしつつ会話していた、そして動物虐待など、残虐な面がある、あの少年ですね。

 実際、最後の5巻の最終章では、アリョーシャと12人ほどの子供達が、将来の誓いを立て、話し合う場面で終わります。あの中で、少年達は爆弾を作り、(おもちゃのような、という断りはありますが)試してみたり、コーリャが線路に寝そべって、列車が走ってきても逃げずに寝たままでいられるか!?肝試しのようなことを過去にしたことがある、という話題が出てきたり...

 どうして、こういった話が、最終章のここで、語られなければならないのか?違和感は確かに残りはしました。 亀井氏が 将来、イエス・キリストの弟子の同じ数の12人の子供達(この日、亡くなった少年一人を含む)が皇帝殺しに関わっていきますよ...という暗示だろうと、指摘されて、ああ、そうか!と納得。

 当時のロシアでは、皇帝や政府高官を狙ったテロが相次ぎ、皇帝が乗った列車が通ることを予想して、線路に爆弾を仕掛けたテロがあったそうです。未遂で終わったそうが。ドストエフスキー自身、一度は有罪判決を受け、死刑を宣告されているものの、皇帝による恩赦で死刑は免れた経緯あり。

「一度は死んだ。そして恩赦により、生き返った」という自らの体験を踏まえた「第二の小説」となって当然という気がします。

 

 第一の小説のテーマの一つは、「父親殺し」

 書かれなかった第二の小説のテーマは、「皇帝殺し」

 そして~小説全般を通して大きなテーマとしてあるのが、キリスト教。

 

 このキリスト教。宗派が沢山あり、ロシアの場合は、どうなっているのか、全く知らなかったのですが、例えば、イワン・カラマーゾフの世界観は、

「Anti-cosmic dualism 「反宇宙的二元論」とは、悪や罪といった否定的なプロセスが存在する限り、この世界は認められないとする、実存的な立場」だそうです。(204ページ3~4行)

一方、「アリョーシャのキリスト教観は、汎神論とも通じ合う、大地信仰がまじりあっていた。元々ロシア正教そのものが、スラブ異教の地に外部からもたらされたことから生じた二重信仰(異教的要素たぶんに含んだキリスト教)に起源があった。」(204 7-9行目)

 

更には、ドストエフスキー自身の世界観は、きわめてラディカルな終末論で、教会を介さず、直接的に神を体験すれば、また大地や自然との一体化という神秘的体験があれば、それだけで神を信じたことになるという、(日本の神道のようですね)ラディカルな感性である」(204 11-13行目)

 

人は生まれながらに悪であり、罪びとである、という考えに違和感がある私には、イワン・カラマーゾフの立場も分かる。また、自然豊かな日本も大地信仰というより、自然そのもの、二重信仰というよりは多重信仰なので、アリョーシャの世界観も分かる。最後に、ドストエフスキー自身の世界観は、最もしっくりくる。

 

232ぺージ12~13行目には、「人間中心の西欧のキリスト教とはおよそ異なった、東方キリスト教に共通する独自の世界観を見てとることができる。」

 

森羅万象の調和。我々日本人に、最もしっくりくる世界観かもしれませんね。

ドストエフスキーは、世界が「個々のばらばらな部分」(第1巻10ページ)に分断され、孤立する中で、人類は一致して この世界観(東方キリスト教的世界観)を取り戻さねばならない、

「神のためならテロも許される」という過激思想に走った(かもしれない)コーリャたちを諭す役目をアリョーシャに託したのかも。ちょうど現代のように、なんたらファーストで分断されつつある世界や言論の自由を許さない覇権国家を見ていると、ドストエフスキーと親しかったロシアの哲学者、ゾロヴィヨフがいう、「分断」から「統合」へ~ という思想を「カラマーゾフの兄弟」「カラマーゾフの兄弟と子供達(第二の小説)」で伝えたかったのかもしれない、という亀井氏の空想も納得です。

 

 

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サロメの乳母の話 塩野七生

2021-06-25 22:54:10 | 読書

 塩野七生さんによる”小説”です!

『サロメ』を読んでから、あまり日数が経っていないため、読むなら「今でしょ!」と手にした次第です。 実際、平野啓一郎さんの翻訳バージョンを読んだ「あと」、塩野さんの「サロメの乳母の話」を読む~ この順序が大切です(?) 2倍、楽しめました。

 

 歴史をよく知る塩野さんが聞き取り調査でもしたかのような内容に、にんまりとしてしまいました。 歴史書は勿論のこと、歴史を素材とした「小説」や「劇」も、勝者によって 都合がよく書かれることが多いことは、紛れもない事実でしょうけど。後世の人は、特にキリスト教徒側は、ヨハネの首を取った憎らしきサロメ!ということで、あのような内容になった可能性もあり、ってことですね。

ってことで、ちょっと箇条書きにしてみます✋

 ❶まず、ヘロデ王は ローマ帝国が統治する属州の王であった。よってローマ帝国に逆らえない。

⇒ 危険人物として牢に捕らえたヨハネの存在をローマに知られては困る。

 ❷ヘロデ王はユダヤ人だった。よって、ユダヤ教にも逆らえない。

⇒ 危険人物は抹殺したいが、もし本物のメシアだとしたら? ユダヤ教に逆らうことになり、殺すことは王には出来かねる。

 推測;すなわち、ローマ帝国とユダヤ教の狭間で、苦しい立場だったのではないでしょうか。

 

 まず、あの事件が起こった日の状況ですが...

 ❶ローマのカエサルであるティべリウス皇帝の臣下の一行が、属州の視察に来ていた。

 ❷ユダヤ各地で起こっていた、救世主、メシア待望の動きをローマ側に悟られないよう、気を配らねばならなかった。

 何よりもローマ視察団を満足させるため、宴の準備を自ら指揮していた。よって、娘を色目で観る余裕など無いに等しかった、筈!

 

  サロメの乳母(ほんとは塩野さん)曰く、

「ヨハネのことがローマの役人に知られたら、ヘロデ王はそれについての釈明を逃れられないし、ヨハネの首をなぜ斬らないのか、と詰問され、それに対する返答次第で、ユダヤの王の地位を失うかもしれないのです」(38ページから略して抜粋しました)

 宴は、ヘロデ王の努力もむなしく、ローマの役人たちは属州の田舎の宴では退屈していた。唯一、彼らの目を惹いたのがサロメの美しさ。「ローマにも、あれほどの美女はいないだろう」という役人たちの声を耳にした王。 そこでサロメに踊り子のまねごとをさせることを思い付く。

 宴を成功させる鍵を握るのは、娘のサロメ。ローマの役人たちは、実はヨハネのことも👂に入っていた。すべてを理解していた賢いサロメは、王の求めに応じ、ヨハネの首を斬れない王に代わり、ローマの客人たちの目の前で、褒美としてヨハネの首を所望したのだった...

  ...

 ローマ人の物語、終わりのはじまり、キリスト教の勝利、ローマ亡き後の地中海世界...etc.... と実際に見てきたかのように「読んだ」私には、塩野七生さん説の 「サロメ」の方が、納得だなぁ。

 

 聖書の中で、サロメは名前も記されず、自分の意志ではなく、母にそそのかされて~ということになっている。それが舞台劇となると、妖艶なサロメへと変化していった...。これを元に戻そうと試みたのが、平野啓一郎訳、「サロメ」だったわけでして。 まだ幼い感じのサロメでした。

 

 いや~ 面白いです。

両方読めて、良かったと思います。

 収録作品は、古代ローマからは、『ネロ皇帝の双子の兄』『カリグラ帝の馬』『師からみたブルータス』

 

 キリスト教からは、『ユダの母親』『イエスの弟』 『聖フランチェスコの母』

他にも、『ダンテの妻』『大王の奴隷の話』これなんて、今、読んでいる途中の『ギリシア人の物語 Ⅲ』の時代とかぶりますね。

 

 歴史的背景を考慮した 新しい「あの有名人」の傍で見た、聞いた、誰も知らない本当かもしれない話、みたいな。 古代ローマファン、或は、塩野七生ファンにお勧めです。

 

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小林亜星メドレー パートⅡ

2021-06-23 22:08:20 | Electone & Piano

メドレー パートⅡ

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小林亜星メドレー この木何の木気になる木 etc...

2021-06-23 21:03:20 | Electone & Piano

小林亜星メドレー この木何の木気になる木 etc...

 小林亜星メドレーです。仕事から帰宅後、5曲一気に弾きました。残念ながら、5曲一度にアップロード出来ず、2つに分けましたが... 『北の宿から』のみ、楽譜があるので、小林さんの曲だと知っていましたが、他の4曲は、訃報を知り、ニュースで初めて、「この曲も小林さんの曲だったんだ!」と、驚くものばかり。知らずしらずのうちに、耳にしていたんですねぇ。

 ...と言う訳でして、CMソング、アニメソング、演歌のメドレーです。 『北の宿から』以外は楽譜なし、練習無しの即興です。そのためいつも以上に御聞苦しいかとは思いますが...どうかご了承下さいませ。  

 最後に、心からご冥福をお祈り申し上げます。亜星さん、ありがとうございました。

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ギリシア人の物語Ⅱ 民主政の成熟と崩壊 塩野七生

2021-06-22 22:48:07 | 読書

 

 塩野七生さんの名を知ったのは、とある人が私に、次のように言ったからだった。

「最初は男性作家だと思っていた人に、塩野七生さんという人がいる。ローマ人の物語など、歴史物を書いているけど、あまり勧められないな」

 聞くところによると、そう言った本人は、歴史好きで、塩野さんの著書もよく読んでいるようなのだ。私は以前、「小学生のころから歴史が好きだった」と話したことがあったが、どうも信じてもらえていないようだな、と感じたため、証拠品(小6の社会科ノート:自分で調べたこと編)と共に『桶狭間の戦い、観た?』というタイトルでブログ記事を書いた。

 いずれにせよ、

この私にあまり勧められない塩野七生さんの本って、一体、どんな本なのか!?」

逆に好奇心を持つきっかけとなった。あっという間に『ローマ人の物語』43巻読了 

そのことを告げると、

余程の読書家で、歴史好きにしか勧められないね」という答えが返ってきた。ということはだね、つまり私は大した読書家でも歴史好きでもない、という認識だったのかああああああああ! 

 そのローマ人の物語、第1巻には、ギリシアが出てくる。遥か昔、幼児期から、最も親しみを感じた外国だ。『ソフィーの世界』でもお馴染みのソクラテスを生んだアテナイ。塩野さんが、まだ『ギリシアの物語』をその時点で(2016年)書いていなかったことが、逆に不思議に思えたくらいだ。

 21歳の頃、いつも話を聴く側だった私に、Ramirは言った。”It's your turn, Suzu. Tell me your story." (次は、すずの番だよ。何か話を聴かせて)

 少し考えた私は言った。

 "Have you ever noticed that most Japanese cars are white? "

 (日本の自動車は、殆ど白だと気付いたことある?)

当時、今から30年前は、白が好まれ、今のようにカラフルじゃなかったんだよなぁ。トヨタカローラは白が多かったし、我が家もそうだった。何より”皆と同じ”が好まれる日本人気質。レストランへ行っても、一人が注文すると、私も、私も、私も!と後に続くケースが多い日本人。ちょっと論ずるには面白い話題ではないかと思ったのだ。

 ”Your stories always begin with questions!" (君の話はいつも質問で始まるね!)

Belongings ....right? 賢いRamirにはすぐに隠されたテーマを見抜かれてしまった!まぁ、10歳もあちらが年上だったわけだし。お陰で会話から多くを学ばせてもらった。

 その2年後、豪州の下宿先で出会った、かの国(K国)出身者から、毎晩のように「米国の州の数はいくつか?」などの問題が出され、即答出来なければ、

「そんなことも日本人は知らないのか!」

と大いにバカにされたものだった。当時の回答者は、🐭Disneylandでミッキーマウスと一緒に踊っていたという日本人女子留学生、(スタイルが良く可愛いだけでなく、感じのいい子だった!)何故か私をディスコへ誘うことに熱心だった(踊れないし、行かないっていってるでしょ!)大阪出身の男の子、そして私の3人。

いつもは、さして気にしない私も、一度だけ、

「サモアを知らないの? オーストラリアに住んでいて、米国の州の数より、こっちの方が知っておくべきなんじゃないの?」

と遂、言い返してしまった。珍しく、K国の相手が しゅんとなったのを見て、これまでの鬱憤を晴らすかの如く、日本人チーム3人で

「イエーイ やったね!」

と、ハイタッチした。

その頃はまだ、ソフィーの世界は出版されておらず、ソクラテスの言葉は知らなかったが、かの国の彼に馬鹿にされる度に、私は言ったものだぁ~

"The only thing I know is the fact that I know nothing. Life is too short for me to learn everything!!"

(私が唯一知っていることは、実は私は何も知らない、ということ。人生はすべてを学ぶには短すぎるから)

 

『ソフィーの世界』を読んで、何が自分を興奮させたかといえば、何かを軽く議論するつもりである場合、(それが出来る相手は極めて稀ではあるけれど)

質問で始まる自分の話」

「何も知らない自分...という自覚

...という若かった頃の自分の特徴と、

(20代後半の自分は、23歳までが若く、それ以降は婆だと思っていた

あの哲学者、ソクラテスと自分に共通点があるではないの!ってこと。

着るもの(衣装)に拘らず、シンプル イズ ベスト👍な考えも 同じである。 アテナイ(アテネ)に生まれていたら、弟子入りしたのに! という興奮だった。 それ以来、よく知りもしないのに、心の中では、「ソクラテスこそ、わが師」だと思っている。

思うのは自由です

 

       

 

『ギリシア人の物語 Ⅰ』

 

ここから本題です。(長っ!)

紀元前480年と479年、2度に渡るペルシア戦役。海はサラミスで、アテネ主導で完勝。翌年、陸のプラタイアでスパルタ主導により圧勝。

騎兵隊、歩兵隊、ガレー船の数ではペルシアの10分の1程度だったアテネ、スパルタ、その他のギリシア都市国家による連合軍が、一体、どうやって勝利したのか!?

 

思えば、その後の時代に登場するハンニバル、スキピオ・アフリカヌス、カエサルも同じ布陣を取った。

...と、いうことは、つまり、『ハンニバル戦記』 或は 『ユリウス・カエサル ルビコン川 前・後』をワクワクしながら読破した方は、『ギリシア人の物語 Ⅰ』の後半とⅡも、同じように楽しめる筈。ただ単に、戦術や闘いぶりに目を見張りながら...というだけではなく、アテネ市民をまるごと疎開させ、都市をモヌケノ殻にした! (非戦闘員の命を守った)等、民主政アテネで暮らしていた人々を想像しながらお読み下さいませ。そういう訳でして、ここでは敢えて詳細には触れないことにしませう。

 

ギリシア人の物語 Ⅱ

 ペルシアの脅威から ギリシアの都市国家はその後も協力し合うべく結成されたペロポネス同盟。スパルタの呼びかけにより結成。しかし、スパルタは今で言うトランプ元大統領時代の米国、「一国主義;アメリカファースト」と似たようなもので、一国平和主義で、他国に無関心。(いや、米国とはちょっと違うか!)

 ギリシア南部のペロポネス半島にある都市国家を集めて結成されたため、この名となった。(79ページ4行目)

 いざとなれば、スパルタの戦士が救援に駆けつけてくれるという期待を持って、加盟したのでしょうね。 分担金を支払う必要もなかったそうなので。(81ページ)

 

 遅れること70年、イオニア地方の都市や島に住むギリシア人が結成を持ち掛け、結成されたのがデロス同盟。この人達が頼りにしたのは、こちらは加盟国となるにサラミスの海戦で勝利し、その翌年、エーゲ海のペルシア海軍基地となっていたサモス島奪還に成功したアテネだった。加盟国となるには、負担金が必要だった点がペロポネス同盟と異なる。海軍は陸軍よりお金がかかるから、らしい。(84ページ)

 

 実際には、祖父、そして父の代に コテンパンに ギリシアの都市国家に海上で「やられた」様子を父と共に丘の上から眺めていたペルシアの王は、ギリシアに攻め込むことはしなかった。

 こうして円熟期に入ったアテネとスパルタの30年。

 ところがその後、コルフとコリントの争いで点火した火が他の地まで飛び火。アテネを統治していたペリクレスと、スパルタの王、アルキダモスは1歳違い。アルキダモスは、プライベートでペリクレスの別荘を訪問する仲だったらしい。 飛び火からアテネとスパルタは 止むを得ず戦闘を開始することとなるのだが... お互いを熟知した統治者と王は、言葉を交わさずとも、お互いが考えることは分かった筈だと、塩野氏。実際、

 陸のスパルタは、アテネが管轄する陸地(アッティカ地方)をちょこっと荒し...

 海のアテネは、スパルタが管轄するペロポネソス半島をちょこっと荒し...

 お互い、正面衝突することを避け、一年目の戦役は終了✋した。

 塩野さんの仮説通り、このまま5年間休戦したあと、再び30年の和平協定を結ぶということになった「かも」しれないのに。

 

 翌年には、ギリシア全土を襲った不幸 (チフスではないか、という噂も)により、『ペロポネソス戦役』は不幸にも27年も続いてしまったのだった。

 しかも、開戦2年目に、長年、アテネとギリシア一帯の平和維持に貢献した一人である、アテネのペリクレスは病死した。享年66歳。更には、同じくギリシア平穏に貢献したスパルタの王、アルキダモスも、その2年後に亡くなった。更にさらに、ギリシア世界の平和維持に遠くペルシアから貢献した、ペルシア王アルタ・クセルクセスも2年後にこの世を去った。

 

 パクス・ロマーナならぬ、パクス・ギリシアに貢献した3人が相次いで亡くなったことで、いわゆる「終わりのはじまり」となっていく。

 ペリクレスが亡くなった年、ソフォクレスの悲劇、『オイディプス王』が上演された。神頼みだった、この時代において、最もリアリスティックで現実的だったペリクレス。 塩野さん曰く、

「予言によって定められた運命に逆らう想いで一生を生きてきたのに、結局は予言されたとおりの一生をおくってしまった人間の哀しみを、深く極めた傑作である」

「ペリクレスは生涯にわたって、運命とは神々が定めるものではなく、われわれ人間が切り開くものだと言い続けてきた人である。だが、最後になって、考えていた『大戦略』は、彼自身の死によって中途での挫折を強いられる。これが運命でなくて、何が運命であろうか」と...。 (175ページ10行目~15行目)

 

ここまで第一部。 『ギリシア人の物語 Ⅱ』後半、ペリクレス以後(紀元前429~404年までの26年間)は、明日の夜、読む予定。(182ページ以降)

 

 

 ここから~追記; 

 後半も読み終えた。昨夜&翌日、職場の昼休みに読了。帰りに図書館へ寄って返却したため、本はすでに手元にはない。

 27年続いた『ペロポネソス戦役』の舞台は、最後の数年間、アテネからもスパルタからも遠く離れた東方へ移った。ペルシアに利があったため、裏で誰かが糸を引いていたの「かも」。あくまで仮説。当時から謎なのだから、現代の歴史家の間でも謎。

 もしも、ペリクレスが生きていれば...三大悲劇の作者ソフォクレスまで担ぎ出されたのだから。彼はすでに80歳代。本国アテネにいて、実戦に加わることはなくとも、ちょっとばかし長生きしたために、アテネの哀しい行く末を見守ることになってしまった。

 

 ペリクレスであれば、和平交渉に入ったであろう場面で、アテネは無益な戦役を続行してしまう。

ペリクレス亡き後、アテネには、市民の不安を煽り、扇動していく、いわゆる扇動者が幅をきかせる。彼の名は... 忘れたが、こういう輩は、批判すること、反対することが目的だから、「では、どうぞ、ご勝手に」と、実際になったのだが、何も出来なかった。今で言うところの、日本の野党やマスコミのような存在。

 扇動されれば、市民は熱狂的になる。和平交渉、という選択肢よりも、民主政のアテネの市民議会の結論は、『ペロポネソス戦役』の状態続行。当時、世界最強と言われたアテネの海軍を 市民たちはイケイケドンドンで、熱狂的に送り出している。

 そんな市民たちの期待に反して、状況が劣勢になる。ここへきても『撤退』ではなく、『続行、及びに追加派遣』を決めたのは、市民たち。民主政では、法案を出すのは統治者でも、可決か否かを決めるのは、選挙権を持つ市民だったから。

 アテネの国庫がカラになろうとも、市民たちは自分の身を削ってでも、カンパで造船に協力した。ソクラテスは免れたらしいが、殆どの家庭から歩兵隊を送り出している。しかも高揚した市民たちに見送られて...

 

 しかし結果は惨敗。生き残り、シラクサから本国アテネへ戻れた人は一人もいなかったらしい。

悪いニュースほど、アテネ本国に早く届く。

ひとことでいえば、ソクラテスは正しかった。

敵は自分自身の中にある。

塩野さんの言葉でいえば、アテネは自滅した。

アテネは もはやギリシアの覇者ではなくなってしまった。

アテネという都市国家を更地にし、女子供は奴隷として売り飛ばせ!とシラクサは意気込む。(スパルタの王によって、それは免れた。)捕虜となった男たちの中からアテネ人、3000人を選び出し、全員斬首。その他のポリスの連合軍の生き残りは、石切り場で強制労働させられたのだ。

石切り場といっても、地下へ、地下へと掘っていき、食事は一日に地上から地下へと投げ込まれるわずかなパンと水のみ。夜になれば、地上のフタは閉じられる。要するに、地下はそのまま、牢獄だった。

戦いの後で怪我人もいたらしいが、何の手当も処置もなく、亡くなってもすぐには地上へ引き上げてもらうこともなかったそうだから、悪臭も凄かっただろう。

これでは健康な人も病気になる。『タイムマシン』の地下に住む種族を思い出してしまった。もしかしたら、ウェルズは、この歴史を念頭に書いたのでは?と思ってしまった。

 

 平和は主要国のパワーバランスが取れて、ようやく成し遂げられるもの、だと思ってしまう。50年続いた平和は、ペルシア、アテネ、スパルタという3つの覇権者のパワーバランスが保たれていたから...こそだ。

 米ソの冷戦時代も、とりあえずは戦闘状態にならなかったのも、パワーバランスが...とはいえない? 当時の首脳陣は、各国、個性派、リーダーたるリーダーたちだったように思う。サッチャー、ゴルバチョフ、レーガン、中曽根氏...

 今現在は、かつて世界の警察官といわれた米国の力は弱まり(世界の中で)中国があまりにも...

日本国内には、いわゆる市民の不安を煽り、扇動していく、扇動員なら、いくらでもいる。野党も国民も悪い方へ、悪い方へと...

 ペリクレスは、民主政の中にあって、市民を話術でもって、先導していくことに長けていた。だからか、のちの歴史家たちからは、「独裁」統治者、と呼ばれているらしい。何かを成し遂げるには、多くの敵も持つことになる。いわゆる反対派。彼の手腕が時には「独裁」と映ったとしても、「安定」「平和」のみならず、彼は「繁栄」までアテネとギリシアにもたらしたのだから! 

 日本にも、『扇動』ではなく、『先導』してくれる総理大臣が欲しいところだ。

 

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清い流れ

2021-06-20 21:49:47 | Electone & Piano

清い流れ

『エリーゼのために』に挑戦し始めてから、早、半年が過ぎました。練習をさぼったり、浮気ものでして、他の曲に目移りし、放置したり... ペダルの使用方法も難しく、また、強弱のピアニシモもメゾピアノも上手くいかない~💦

 そんな時、Youtubeで交流させて頂いているネネさん演奏の「清い流れ」を聴き、(テキスト出版年により、タイトルが違うようです)感動を覚えました。「そうだ!この曲を再度、練習してみよう!♪」 ペダル使用、ピアニシモやピアノで弾く曲だった筈! と思い立ち、本日、ようやく弾いてみました。録画すると、「ここ、テンポがズレた!」「まだ音が強すぎる~」と思ったら、鍵盤を押さえて(弾いて)いても、音が出ていない!などなど。エレクトーンに慣れてしまい、押さえれば音が鳴る電子楽器とは大違いです。色々と勉強になるものですね。

 

我が家の庭に咲いています

 

 

カボチャの花も咲きました~ 

 

 

 

 

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ギリシア人の物語 ~民主政のはじまり~ 塩野七生

2021-06-20 20:04:52 | 読書

 3度目の図書館予約で、金曜日に受け取ったのは、全部で5冊。

「予約された本の準備が出来ました」と、図書館から連絡の電話を受けたのは母で、

「娘はまだ勤務中でして...返却する本があるから、帰りに図書館へ立ち寄ると言っていたので、夕方、5時過ぎに、そちらへ行くと思います」

と伝えたよー、とのことだった。(帰宅後に聞いた話)

「私は6時までおりますので。」と図書館職員さんはいい、電話を切ったという。

 

 そして~ ,

 予定通り図書館の受け取り窓口へ行くと、窓口にいた若い女性は、光文社の新訳シリーズを手にしていた。てっきり、私が予約した内の一冊かな?と思ったくらいだ。職員さんは本を裏返しにして席を立ち、図書館の奥へ消えたので、そうではなかった。待っている間、もしかして~ いつもたて続けに私が光文社の新訳ばかり借りて帰るから、面白いのかな~ 読んでみようかな~ってことだったりして(≧▽≦)~と、思いを巡らせてしまった。司書さんは、本好きであることは間違いないからね。

 ギリシア人の物語は、文庫かと思ったら、なんとハードカバー製本だった! 重厚な、いかにもギリシアという雰囲気の素敵な製本となっている。

 ご覧の通り!

プラス、塩野七生さんの小説!👀と、(歴史書ではなく)

「カラマーゾフの兄弟の続きを空想する」亀山郁夫氏の合計5冊。

今、手元にある先に借りた2冊は、明日、返却予定。(図書館は明日まで閉館)

 

『ギリシア人の物語 Ⅰ』は、ホークス戦が5回を回った頃に読み始め、100ページ(文庫であれば、200ページ分)まで読んだところ。

メモを取りながら読もうかとも思ったが、結局、読み始めると面白いので、メモどころではなくなる。(苦笑)

夕食の「そうめんとサラダ」も終わり、まだ少し明るい今、少しでも「まとめ」を書いておくことにしよう~っと。

 

 第一章 ギリシア人て、誰?

「そりゃぁ~ ギリシア神話に登場する、神様たちでしょ!」

…と、子供だった自分なら、自信をもって答えたかもしれない。

塩野さん、私の期待通り、神々の世界についても触れている。しかも、結構、詳しく!

筆頭は主神ゼウス。怒ると雷を落とすので、シンボルは雷光。

ゼウスの正妻、ヘラは嫉妬深いので、彼女のシンボルは孔雀とざくろ。

男神アポロンは、ゼウスが他の女との間にもうけた子で、陽光や音楽の守り神。シンボルは月桂樹と竪琴。誰もが知るオリンピックは、4年後ごとに「聖なる森」オリンピアで開催されることとなった。都市国家、スパルタ、アテネやコリントからも適度に離れたペロポネソス半島の西端に位置している。

読者への手紙~の序章で、

「ローマ人の物語 Ⅰ」でギリシアについて書かれたページは50ページ。あの50ページを今度は、ギリシア側から見て書くと、あの時は言及しなかった数多くの事象も加わってくるので、50ページどころか、3巻にはなるだろう、と著者は述べている。

「ローマは一日にして成らず」

塩野さん曰く、ローマは長距離走者。

一方、ギリシアは短距離走者。

わっ…分かりやすい例えだ~( ´艸`)

 

…とはいえ、当時はギリシアという国はなく、あるのはアテネ、スパルタ、といった都市国家。ルネサンス時代のイタリア半島のような感じですね、きっと。イタリアという国はなく、あるのは都市国家、ヴェネツィア、フィレンツェなど。

 

まず、主な都市国家、スパルタとアテネについて。

この2つの違いを ひとことでいえば...

スパルタ ; リクルゴス 一人で、スタートからゴールまで走った徒競走。

アテネ ; ソロン、ペイシストラトス、クレイステネス、テミストクレス、ペリクレスという5人がバトンタッチをつづけながら走るリレー競争。(41ページ9行~11行)

 

スパルタについては、詳細はここでは省きます。

 

世界初の 「民主政体確立」をアテネが成し遂げるまで~

まずは、トップバッター、ソロンさんの登場です👏

ソロンが提案し、市民集会が可決したのは、次の法

❶ 借金の返済ができなかった者は自らの肉体で返済する、すなわち奴隷となる。というこれまでの法を撤廃。

古代では全く前例がなかった、このような法を思いついたソロン。現代風にいえば、貸し手(銀行)の救済ではなく、借り手(債務者)の負担軽減を目指した政策だった!

食べていけなくなったから、借りた金、のみならず、先行投資もしやすくなった。

❷ソロンは更に通貨の価値を下げ、事実上、借金の四分の一が軽減されることとなった。

この法案の可決には、多数を占める平民のみならず、貴族も賛成票を投じた。富裕層も、借金を返済してもらわなければ困るため、四分の一を犠牲にしても、返済の可能性を残す方を選んだらしい。(45ページ)

 

二番手、ペイシストラトスさん。

彼はソロンの母方の親族の一人。

❶農地改革を行う

平野の人々が逃げてしまい、地主不在になったアッティカ地方の土地を接収。それを小分けし、小作農や山間部の農民たちに分け与えた。

自営農民に課税。 豊かな土地であれば、収益の十分の一。痩せた土地であれば、二十分の一。当時では少ない額だった。少額だが数が多い平民。アテネの財政は潤っただろう。

 

❷彼が亡命中に開拓した販路をアテネ中の交易商人に開放。しかも手数料なし。

ソロンの改革はアテネに秩序をもたらし、ペイシストラトスの改革は、アテネに安定をもたらし、経済力を向上させた。(63~64ページ)まさに高度成長期‼ 

 

三番手 クレイステネスさん

彼は、王であろうが、君主であろうが、一人が支配する政治体制の配下になる各部族の暴走を押さえつける手立てとして~

都市部 1区から10区に分ける。

沿岸部 これも同じく。

内陸部 これも同じ。

合計30区が出来上がる。

30区に分けたものを再び都市部の1区+沿岸部の1区+1内陸部の1区と合併し、合計10区に再編成。これらは『トリプス』と呼ばれた。 市、町、村、のように小分けしたもの。更には戸籍を与え、どこどこに戸籍がある、ソクラテスさん、のように呼ばれ、出身階級を示す必要がなくなった。

 

...ということは、個々による勝負の時代の到来☆彡

戸籍により、兵役を課しやすくなった。

 

 

ここまで、第二章。

第三章は、侵略者ペルシアの登場ですが、大河ドラマの時間ですので~本日、ここまで。

 

 

 

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フランケンシュタイン  メアリー・シェリー

2021-06-20 05:28:03 | 読書

 2度目に”予約”した内、最後の一冊がこれ!

『フランケンシュタイン』

過去には何度も『フランケンシュタイン』の名が入った映画が公開され、私の記憶では、アニメ『怪物くん』には、フランケンシュタインという名の顔が四角っぽく、ジッパー(ファスナー)の烙印があるかのような怪物が登場したと思うのですが...

違いましたっけ?

 

 この本を読み始めて、最初に気付いた勘違いとは... まさしく、それ、フランケンシュタイン、その人!

 フランケンシュタインって、怪物の名前だと思っていたわ~

 実は、怪物を作った科学者の名前だったのねぇ~

皆様、御存知でしたか? 私、知らなかった!Σ(゚д゚lll)ガーン

実際の小説を手に取って、読んだことがあるという人は、更に少ないかもしれません。

 善良な両親と、天使のような心の持ち主である妹や活発な弟と、自然豊かな土地で、世間から隔離されたかのような神聖な場所で幸せに育ったフランケンシュタイン。そんな彼が、故郷を離れ、大学で学び始めたところから、不幸が始まる...

 

 もし... もしも、『カラマーゾフの兄弟』を読んだ直後ではなく、『タイムマシン』の後に読んでいたら~

もっと感動したのでは、なかろうかと思ってしまいました。

人物描写が...。個性が無さすぎ...とはいえ、怪物の孤独感と苦悩、そして創造者、フランケンシュタインに対する憎悪は痛いほど伝わってきます。

 そして~ 登場人物の内、誰一人、幸せな最期を迎えられなかった...悲壮感漂う哀しい物語でした...

 

 

 追記;

『タイムマシン』は今も人類にとっては夢ですが、

『フランケンシュタイン』が発明した、いわゆるクローン技術は今や現実のものとなりましたね。

中国の科学者で、実際にクローンの双子の赤ちゃんを誕生させ、世界中から非難を浴びた人もいましたっけ... その中国、違う種族と種族のDNAを掛け合わせ、とんでもないものを生み出しております。(NHK特集にて)

例えばクラゲと🐭ねずみで、耳が光るネズミなど...映像で見て、仰天しました。

臓器移植のために...など、役立つ方面のみで利用するなら分かりますが...

何だか恐ろしい...

国家であのようなことをしている中国の行く末は、それこそ『フランケンシュタイン』その人と家族や親しい友人まで巻き込んだ不幸で終わる気がしてなりません。

 

更に追記;

父は昨日の夕方、2回目のワクチン接種終了✋

今の所、腕の痛み意外、発熱や倦怠感などの副反応はないそうです。

母は今週土曜日に、2回目のワクチン接種予定。

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マウントドレイゴ卿/ パーティの前に サマセット・モーム

2021-06-19 22:05:20 | 読書

 『月と六ペンス』に魅了され、再びモームの小説を選びました。

非常に有難いことに、前回と同じく光文社から短編集が出ていました。

『月と六ペンス』は長編でしたが、短編も「あっと驚く」内容です。

全部で6作品が収録され、313ページ。気軽に手に取ることが出来ます。

収録作品は、こちら~

ジェイン

マウントドレイゴ卿

パーティの前に

幸せな二人

掘り出しもの

 

 トップバッターにふさわしい、『ジェイン』

何度も くすっと笑ってしまいます。所々で大笑い!

特にジェインの義姉、タワー婦人の驚愕した姿を想像しただけで、もう~愉快です。

 ちなみに、『ジェイン』ときけば、

どうしてもシャーロット・ブロンテの『ジェイン・エア』を思い浮かべてしまうのですが、何も関係ありません。 作者も違いますしね。

 こちらのジェインは... 未亡人で、パッとしない印象。年齢は、はっきり書かれていないものの、恐らく60歳善後 

 「わたしたち、50歳には戻れないのよ」というタワー婦人の台詞から憶測すると...ですね。

ところが、冴えないジェインが突然、同じ男性に5回もプロポーズされ、

「結婚します✋」

と、自分はジェインと同じ歳でも見た目はずっと若いと信じ込んでいるタワー婦人に報告~したから、さあ、大変! 

義理の姉、タワー婦人の女の「本心」「プライド」「好奇心」「妬み」それらを観察する主人公の私 主人公は男性なので、面白さが倍増します。

 

 『ジェイン』に続くのは、『マウントドレイゴ卿』

多忙な精神科医が診ることになった相手は、政治界のマウントドレイゴ卿。

フロイトの夢診断の手法が取り入れられています。

フロイトは当時、精神医学で最新だった筈だから、興味がわき、あれよあれよという間にページを捲り...最後はホラーだわ~

 

ホラーと言えば、次に続く『パーティの前に』も、かなり予想外でした。

ミリセントの夫の死因を巡り、親戚一同の前で、次々と明らかになる新事実... 

「私はもう慣れたわ…気付かれないよう、パーティへ行かなくちゃ」

ミリセントが最後に発した、この台詞が怖い...

 

『幸せな二人』

これもホラーとも推理小説とも... 越してきたばかりの仲が良い二人を見て、きっと大恋愛をした末に結ばれたのだろう、と空想する御近所さん。 食事へ招待した席で、思いもしない展開に! こちらも意外性に、ひぇ~っ

 

『雨』

これは、ゴーギャンがモデルらしい「月と六ペンス」の南国と人種の坩堝の活気ある雰囲気を思い出させます。島のしきたりや文化を完全無視し、「キリスト教布教」という使命を持った宣教師の取り決め(島民を無視したルールや罰金制度)にはちょっと...

 

 

 ここに収録された作品は、どれもこれも、

どんでん返しが何回、繰り返されたっけ

短編なのに 見事なプロット

ここに書いてしまっちゃ、面白くない! ...と言う訳で、もし、あっと驚きたい、手軽に読める短編集をお望みなら、どうぞ~

推理小説好きな方には、特にお勧めです。

 

 

 

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カラマーゾフの兄弟 フョードル・ドストエフスキー

2021-06-17 23:34:09 | 読書

ECCジュニアのレッスン後、お粥とトマト鍋の夕食&片付け~21時以降は、ひたすら読書の時間。遂に‼ 全5巻を読み終え、(5巻は向かって右。365ページの内、エピローグ63ページ)新たな事実を知り、ショックです。

。。。。。

 

前回、夏目漱石は『明暗』を書き終えることなく、この世を去った、と書きましたが、この『カラマーゾフの兄弟』もまた、未完で終わっていたのです! 序文では、これが第1の小説。ここから13年後の現在、第二の小説が... と、確かにそのようなことが書かれてありました。 ドストエフスキーは、「第一の小説」を完成させたあと、「第二の小説」の構想がすでに頭の中では出来上がっており、

 「あと20年は書き続けつもりだ」と周囲に語っていたそうなのです。癲癇(てんかん)持ちだったドストエフスキーは、病と闘いながらの執筆だったようですが、3年を費やして完成させた第一の小説の校正を終えた後、吐血し、その3日後にはこの世を去ったという...衝撃的な事実でした。

 よって、本来であれば、本人曰く、更に大事だった第二の小説は幻に。

続編は世界中の、しかも時空を超えた読者に届けられることなく、未完に終わってしまったのです。

 ただ、ただ、残念、というしかありません。こんなに面白い小説なのに。イワンは回復したのか? ミーチャの脱走計画は成功したのか? アリョーシャと子供達は、この後、どのような人生を歩むのか? アリョーシャが関わった少年、コーリャは、不幸になるとアリョーシャは予言するが、一体、彼の身に何が起こるのか? エピローグで 「カラマーゾフ万歳!」とコーリャを筆頭に子供達は叫ぶが、どのような人生が待ち受けているのか?

 第二の小説で明らかになるはずだった疑問は全て疑問のままに...

 最後に、アリョーシャと自分が共有する信念を綴って終わりとします。自分の子供時代、子育て経験を踏まえた上で... 

 アリョーシャが子供達に語った言葉です。

「何かよい思い出、とくに子ども時代の、両親(育ての親、祖父母も含めて)といっしょに暮した時代の思い出ほど、その後の一生にとって大切で、力強くて、健全で、有益なものはないのです。きみたちは、きみたちの教育についていろんな話を聞かされているはずですけど、子供のときから大事にしてきたすばらしい神聖な思い出、もしかするとそれこそが、いちばんよい教育なのかもしれません。」(58ページ2行目~6行目)

 

 アリョーシャ、あなたのいう通りです! 私も同じ信念で甥っ子と関わってきました。0歳児の時から、一人の人間として関わり、赤ちゃん扱い幼児語で語りかけたことは、一度もありませんでした。

 そして何より、多くの思い出を作っておきたい、あらゆることを一緒に体験させたい、見せたい、聴かせたい、読ませたい、(読み聞かせ)日常の1分1秒を大切にしたい…

 あ、すみません。彼の話は続きます

「もしかしたら、ぼくらはこれから悪い人間になるかもしれません。悪い行いを前にして、踏みとどまれないときがくるかもしれません。他人の涙を笑ったりするかもしれません。さっき、コーリャ君は、『人類全体のために死ねたら』と叫びましたが、そういう人達を、意地悪くからかったりするかもしれません。でも、ぼくらがどんなにか悪い人間になっても、そうならないように祈りますが、こうしてイリューシャを葬ったことや、最後の日々、あの子を愛したことや、今こうして石のそばで、ともに仲良く話し合ったことを思い出したら、どんなに惨(むご)たらしい、どんなに人を嘲るのが好きなでも、そう、仮にそんな人間になったとしての話ですよ、いま、この瞬間、ぼくらがこれほど善良な人間であったことを、心の中であざけるようなことはできないでしょう!」(58ページ10行~)

「それどころか、もしかすると、このひとつの思い出が、人間を大きな悪から守ってくれて、思い直して、こういうかもしれません。『ええ、僕もあのときは善良だったんです。大胆で正直な人間でした』と、ね。(59ページ4行~6行目)

 

 誰か一人でもいい、心の底から 子供のことを想う大人がいれば、その子は生きていける...19年前から、強くつよく思うことです。

 

 小説に戻ると、何か思いとどまらねばならないことが、子供達に起こるだろうと、暗示されているようで、非常に気になります。エピローグの後、訳者、亀山郁夫氏により、「コーリャはロシア皇帝暗殺に関わる...かもしれない...」等、幾人かによる「仮説」が紹介されます。

 更に! 『カラマーゾフの兄弟』番外編として、6巻なるものが光文社から出版されており、それは、亀山郁夫氏による、たぶん、第二の小説は、こうだったでしょう??という続編が書かれているのです!

 私も高校1年の1学期、国語で芥川龍之介の『羅生門』を勉強し、その続きを書いたことがありましたが...。申の刻にホンモノの🐒猿が現れ、あのお婆ちゃまも、全く同じ目に合うという...誰もが思いつく内容でしたが、15歳の自分は、「面白ーい! ものが書けた!」と自己満足でした。 ちょっと横道に逸れましたが...

 

 ...と言う訳でして、亀山郁夫氏による続編、こちらも予約した次第です。 その前に、7冊予約した内の2冊が未読のまま✋手元にあるので、明日から、それらを読みまーす。

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