2019年2月1日(金) Brexit その後 続
◇ イギリスのEU離脱については、一昨年、世界的な関心の高まりから、マスコミでも大きく取り上げられ、本ブログでも、以下のように、何度か、かなり詳しく触れている。
Brexit 1 (2016/7/2)
2 (2016/7/9)
3 (2016/7/17)
4 (2016/10/10)
そして先月、本件に関し、久しぶりに、以下の記事を載せている。この中では、昨年秋に纏められた、イギリス政府とEUとの間の合意案が、今年の議会で、1/15に、大差で否決されたところまで触れたところだ。
Brexit その後(2019/1/16)
離脱のタイムリミットの3/29が迫る中、イギリス議会内では、「合意なき離脱」という、最悪の事態を避けるための、更なる動きがあったようで、この辺について、前回の続編として取り上げることとしたい。
◇ 前稿で触れたが、1922年、アイルランドがイギリスから独立する時に、イギリスとの間で争いがあり、北アイルランドがアイルランドから分離されてイギリス領に残った。 大まかに言って、宗教対立で、北アイルランドのカソリック派は、分離前のアイルランド入りを望み、プロテスタント派はイギリス残留を望んでいるということで、特に、1960年ごろからは、IRAによる、激しい闘争が繰り返されている。 これが、1998年のベルファスト合意で、何とか収まったようだ。
1973年に、イギリスとアイルランドが揃ってECUに加盟しているが、同じEU内同士ということで全く問題はなかった国境問題が、今回のイギリスのEU離脱騒動で、この国境管理が大きな問題となっていて、寝た子を起こす結果となった。
◇ イギリス領北アイルランドとEUとの間の国境をめぐって、先に否決された合意案には、「バックストップ条項」なる一項があるようだ。Backstop という言葉は、もともとは野球などのスポーツ用語で、ボールが飛び出すのを防ぐ金網のことという。
北アイルランドとEUの境界を、このような概念でとらえる理由が、いまいちわからないが、いざという時の保険と言った意味合いのようだ。
イギリスのEU離脱をめぐって、イギリスとEU間の境界線をどう決めるかは、重要なテーマの一つで、いくつかの案が考えられるようだ。ネットの関連記事には、以下の図が出ているので、引用させていただく。 A、B、Cは、筆者が便宜的に付けたものだ。
Aバックストップ案 Bアイルランド海境界案 Cアイルランド境界案
Cのアイルランド境界案は、アイルランド島内に、関税の明確な境界ができる案だ。
現状からの大きな変更が必要となり、、紛争のネタになることが懸念され、アイルランド、イギリスともに望まぬものだろう。
Bは北アイルランドをEUに残す案で、イギリスは当然反対だ。
そこで出てきたのが、Aのバックストップ案のようで、EUから提案されたともいわれる。
明確な境界線を回避したいのは関係国の思いだが、これを実現する他の方法がっ見つかるまで、イギリスはEUの関税同盟にとどまる案という。なんとも不思議な、いわば、時限をもうけたあいまいな条項だ。イギリスにとっては都合のいい案だろうか。大陸側の諸国は反対だろうが、どうしてこんな条項が合意されたのだろうか。
ごく最近のイギリス議会で、メイ首相から、否決された合意案の修正提案があり、受け入れられ、期限を切って、EUと再交渉するとなったようだ。
内容はよくわからないのだが、EUのトウシェスク大統領は、この修正案に賛成していないという。
◇ EUの主要メンバーの一つであるイギリスが、離脱することは、世界の政治や経済にとっても、かなり大きな影響があることは事実であり、EU内部での、動揺につながる可能性も大きい。
でも、イギリスは、EUから抜けても、相応の経済力を持ち、NATOでの軍事力も強大で、国連の常任理事国であり、G7のメンバーであることに変わりはない。往時の栄光を夢見る離脱強硬派は、合意なき離脱でも支障はないということだろうか。
懸念されている合意なき離脱が、合意あり離脱と、具体的にどのような違いがあるのだろうか、素人である筆者には、殆どわからないところだ。
ともあれ、現実問題として、日本の企業などでは、イギリスにあった、ヨーロッパの出先機関を、ロンドンから大陸に移すなどの準備が進められているようだ。