2022年5月31日(火) ウクライナのこと その15
緊迫したウクライナ情勢が続いているが、ロシアは、東部地域に重点を絞って展開することにしたようだ。ドネツイク州の要衝マリウポリは、すでに陥落したと言われており、ルハンシク州の、セベロドネツクが、次の重点攻撃点になっているようだ。
◇戦況地図
ウクライナの5/29時点の戦況地図は、下図のようだ。
これと、しばらく前の下記記事で示した、4/19の戦況図(下図)と比べてみると、戦況の変化は殆どないようで、
ウクライナのこと その8 (2022/4/21)
言い換えれば、戦況は固定化つつある、と言うことで、ロシア本国からクリミア迄、ウクライナ東部を縦断する陸路が、ほぼ、出来つつある、と言える。
◇セベロドネツク
第2のマリウポリと言われている、ルハンシク州のセベロドネツクが、ロシア軍の包囲攻撃で陥落寸前という。
◇ロシア国内の動き
ロシアに対する国際世論が厳しくなり、国際的な締め付けやボイコットが激しくなると、ロシアの政権や国民はどのように反応するだろうか。
⇒国内的な出直し 国内での民主化勢力の復活
国内での民主化勢力が復活し、国として出直せば占めたものだが、容易ではないだろう。
⇒危険な行動の懸念 国際的に追い詰められて、政権の判断で、反転攻勢に出て、大量破壊兵器、核兵器による、示威行
為や実使用が考えられる。
この点に関する、NHKの下記サイトの記事が注目される。
【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(29日の動き) _ NHK _ ウクライナ情勢.html
これによれば、ロシアのアンドレイ・ケリン駐英大使(下図)が、5月27日、イギリス公共放送BBCのインタビューで、「ロシアの軍事ドクトリンに基づけば、今回のような戦争では、戦術核兵器は、使われず、国家の存亡の危機にさらされた場合に使うことになっている」と明言したようだ。これは、尤もなことで、大きな安心材料だが、示威行為はあると思われる。
ロシア駐英大使 アンドレイ・ケリン氏
◇ウラジオストックの議会でのハプニング
東西に広がっているロシアの、東の端とも言える、ウラジオストックがある、沿海地方の議会で、先日、パプニングがあったようで、下記サイトに、記事が出ている。
ロシア地方議会 野党議員がウクライナからの軍撤退を訴える _ NHK _ ウクライナ情勢.html
記事によれば、27日の地方議会の議場で、議員が、プーチン大統領宛の文書を、突然、読み上げたようだ。
ウクライナ侵攻で派遣された、ロシア兵士とその家族を慮った文書で、「軍事作戦を止めなければ、軍人の死者や負傷者が増え続け、戦争孤児が増えることとなる」と訴え、その上で、「軍事的な手段での成功は不可能だ」として、ロシア軍の即時撤退を求めたと言う。
抗議文を読み上げる議員
これに対し、政権与党に所属する、地域の知事は、「ナチズムと戦っているロシア軍に対する中傷だ」と強く批判し、当該議員と同調者を、議場から退出させたと言う。
ウクライナ侵攻を、ナチズムとの闘いとする、政府側の意向が色濃く表れているようだ。
戦闘の長期化でロシア側にも大きな人的損失が出ている中で、地方にも、それなりの情報が伝わり、不満が広がっていることが窺える事案といえるようだ。
◇ロシアの兵士たち
戦闘が続けば、軍隊の兵士の損耗も多い訳で、特に、士気も高くないロシア兵の場合は、兵員の確保が大変の様だ。先日、プーチン大統領が署名して、軍人の年齢の上限を、撤廃したようだが、これにより、兵力不足を補う狙いがあるという。
ロシア軍の兵力構成は、ある情報では、徴集兵20万 志願兵45万 職業軍人20万と言われている。
先日、当ブログに投稿した下記記事で、ロシアの大物の退役軍人が、痛烈な政権批判を行
ったことに触れている。
ウクライナのこと その14 (2022/5/27)
◇ウクライナの終結の姿
下記の前稿で、
ウクライナのこと その14 (2022/5/26)
長期化が避けられないウクライナ情勢について、素人ながら、敢えて、最終的な、「終結の姿」として、幾つかのケースに分けて、以下の、4つの状況を想定している。
△1 ロシアの完全撤退(クリミアからも)
ウクライナが領土の主権を完全回復
ウクライナがNATO加盟へ
⇒世界が、長年望んでいる状況だが、実現は非常に難しい。
△2 クリミアは現状のまま ドンバス地方からのロシアが撤退
⇒ドンバス2州での反政府勢力の存在などから、実現は難しい。
△3 ロシアが、ロシア本土からクリミアまでの陸路を制圧
東部の、ドンバス地方(ルガンスク州、ドネツク州―マリウポリを含む)と、
クリミア半島の付け根のヘルソン州等を対象に、クリミア並みに、東部一帯を
ロシアへ編入。
編入時は、地域の住民が選択した、という筋書きにする。
△4 ウクライナの消滅
ロシアが、東部だけでなく、ウクライナ全土を制圧し編入(ロシア内では、ウクライナ自治共和国となる)
⇒この時,世界はどうするか? 力による現状変更に対抗する措置が問われる!
前稿での筆者の想定として、今年中にも、高い確率で、太字で示したように、△3の状況になりそうに思えるとしているが、ウクライナの現況は、まさにこうなっている、と言える。
プーチン政権としては、この状況を戦果として、プロパガンダを行うだろう。ウクライな情勢は、新たな段階を向けることになるだろうか?
報道によれば、強制的なルーブルの導入、携帯電話のSIM変更による通信手段の支配など、支配地域でのロシア化が進められている、という。
ロシアによるウクライナのクリミア併合の時は、冬季オリンピックもあって、状況はよく見えなかったが、今回の、公然たるウクライナ侵攻は、なぜかしら、歴史の推移の舞台を見ているような、錯覚を覚えることだ。