ケイの読書日記

個人が書く書評

東野圭吾 「あの頃のだれか」 光文社文庫

2017-10-01 08:17:35 | 東野圭吾
 この短編集は…はっきりいって駄作集ですね。これについては、東野圭吾自身が「あとがき」の中で、どれもこれも「ワケアリ物件」と書いているので、自覚はあるんでしょう。売れっ子作家になる前、あちこちで発表した作品を、売れっ子になった後、何を出しても東野圭吾の名前があれば売れるだろうと、出版社が出したんでしょう。

 8つの短編が入っています。一番ヒドいと思ったのは、別冊小説宝石89年12月号が初出の『20年目の約束』。ページ数がそこそこあるので、よけいガッカリしました。


 「子どもは作らない」と宣言している男と結婚した女性が、夫の言葉に疑問を持たず夫の赴任先のカナダに行ったが、そこで体調を崩す。日本に一時帰国して実家で静養していると、なぜ夫がかたくなに子供はいらないと突っぱねるのか、その理由が知りたくなってくる。
 そして、故郷の山梨に帰省するという夫の後を尾行すると…。

 一応ミステリ仕立てにはなっていて、あれこれ読者も考えるけど…あまりにもありきたりな結末でがっかり。別冊小説宝石が、よくこのクオリティの作品を載せたなと、そこら辺がかえってミステリです。

 文句ばかりではいけない。一番出来の良い作品は…というと、ううう難しい。『再生魔術の女』かなぁ。
 子どもが生まれない金持ち夫婦が養子をもらう事になり、赤ちゃんと対面する。妻の方は大喜びで、すぐに赤ちゃんを連れ帰る。まだ少し手続きが残っているというので、夫の方は、養子縁組を世話してくれた中年女性の話を聞くため残る。
 そこで中年女性は語り始める。赤ちゃんの出生の秘密を…。

 現代の生殖医療の技術は、すごい事になっているから、こういう事も可能でしょうが、胸が悪くなります。

 
 『名探偵退場』は、ミステリとはちょっと違います。雪の中の三重密室殺人がでてきて、本格でこのテーマだったら、さぞ読み応えあるだろうと思えますが、この作品では、それは小さな小道具。その謎を解くわけではありません。
 名探偵のわがままさ、尊大さ、子どもっぽさに対するツッコミ満載の作品。『名探偵の掟』天下一シリーズの原型みたい。


 あとがきに書かれているのですが、東野圭吾はデビュー当時、雨の会という若手作家グループに入っていたそうです。井沢元彦や大沢在昌がリーダー格で、宮部みゆきも入っていたそうです。すごいなぁ。東野圭吾も宮部みゆきも、今では、井沢や大沢など完全に凌駕しているからね。

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