ケイの読書日記

個人が書く書評

群ようこ 「うちのご近所さん」 角川書店

2017-08-25 13:43:34 | 群ようこ
 絶対、家を出よう!と何度も決意するマサミだったが、四十路になっても実家暮らし。同期入社組は次々結婚し、会社でも家でもビミョーな立ち位置だが、そんなことマサミは気にしない。元気いっぱい。
 お隣のヤマカワさんは地獄耳。今日もホウキであちこち掃いて回り、情報収集に余念がない。だから、近所の子供たちから『レレレのおばさん』と呼ばれている。分かります?天才バカボンに出てくる『レレレのおじさん』の女性ヴァージョン。
 そういった、一癖も二癖もあるご近所さんと、マサミ一家の30年を、ユーモラスに描いている。

 困るんだよね。こういった可もなく不可もなしの小説は。感想が浮かばなくて。
 あえて書くとすれば…「勧誘熱心なセトさん」の章かなあ。
 とてもフレンドリーなおばさんで、近所の子供たちにジュースを振舞ったりするが、やはりそれには下心がある。新興宗教・ひょろろん教の勧誘なのだ。ひょろろん教というのは、教祖様である白く長いあごひげのおじいさんを生き神様と敬い、毎日何回も白く長い布切れを振り回しながら、ひょろろろ~という笛の音に合わせて、祭壇の前で踊るのが決まりらしい。
 熱心な信者であるセトさんは、不幸が起こった家に真っ先に出掛けていき「ひょろろん教の神さまを拝まないと悪い事が起きて、亡くなった後は地獄に落ちる。でも拝めば、現世も来世も子々孫々安泰だから」と触れ回って迷惑がられている。
 いるんだよね。こういう人があちこちに。


 しかし、信仰というのは非常にデリケートな問題なので、オープンにしていない人も多く、思わぬ所で思いがけない人が、新興宗教の信者だと知り、ビックリすることがある。へたに宗教の悪口を言えない。言わない方が良い。大もめにもめるから。


 25歳の時、高校時代の友人と3人で、高校の恩師(国語の先生だった)の家に、結婚の報告をしに行ったことがある。久しぶりだったので話も弾んで、楽しい時を過ごしたが、途中で宗教の話になった。私と友人2人は、特定の宗教を信仰しておらず、否定的なことを言ったら、恩師は〇〇教の熱心な信者だという。〇〇教を信仰したら、どんどん仕事が来て軌道に乗り、小さいながらも地方の文学賞も受賞し、大学教員の職を得た。これもみな〇〇教のおかげだ。君たちも拝んでいかないか?と勧められ、慌てて逃げるように帰ってきた。あーーー、驚いた。ちょっと怖かったなぁ。

 人って、外から見ただけじゃ分からないね。宗教と政治の話は外では極力しないようにしよう、と肝に銘じた出来事だった。

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