ケイの読書日記

個人が書く書評

芥川龍之介「糸女覚え書」

2013-08-19 14:12:31 | Weblog
 いやー、申し訳ない。またまた芥川龍之介の短編です。数ページだけど、これが面白い。一つの短編で、一つのブログが書けちゃいます。

 糸女というのは、細川ガラシャ夫人の奥女中の名前。架空の人物だが、この作品についてはタネ本があるらしく、芥川の誇張はあるにせよ、まったくのデタラメでは無いようだ。

 
 細川ガラシャ夫人は、明智光秀の娘として生まれ、細川家に嫁ぐが、本能寺の変で、父親が謀反人になり、夫から離縁され幽閉された。後に復縁。夫には知らせないままクリスチャンに改宗。
 夫が徳川側につき、東方へ行って不在になった際、西軍の石田三成がガラシャを人質にしようとしたが、これを拒否。屋敷を三成の兵士に囲まれたので、自分の家来に胸を貫かせ死んだとされる。
 才色兼備の女性として有名で、小説や絵画の題材にもなっている。そのガラシャ夫人の悲劇的な最期を、芥川が相当辛口に書いていて笑えます!

 よくおしゃべりに来る尼が「20歳くらいにしか見えませんよ」(実年齢38歳)とお世辞をいうとホクホクしているが、ケンカした後、尼が「40歳くらいに見えます」と捨て台詞をはいて帰ると、ガラシャおばはん大激怒! 「目通り、無用」と奥女中につたえる。

 機嫌が悪いと、奥女中に当たり散らすだけでなく、同居している長男の嫁に「化粧が濃い!」と難癖付けるし、イソップ物語を読んでは、誰はこの蛙、彼はこの狼、その他、カラス、豚、亀、犬、かたつむりなど、勝手に当てはめて小言を言いまくる。

 日本の女がパーなのは、横文字の本を読まないからだと、自分はラテン語を読めるのを自慢しまくる。(明智光秀の娘だもの、頭は良いと思うよ)

 とにかく、本当にめんどくさいオバサンなのだ。芥川の小説を読んで、笑ったのは初めてです。
コメント
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