ケイの読書日記

個人が書く書評

有栖川有栖「絶叫城殺人事件」

2008-12-10 11:13:09 | Weblog
 6編収められている。「月宮殿殺人事件」以外は、すべて傑作。どれが一番かといえば…「黒鳥亭殺人事件」も捨てがたいが、やはり表題作「絶叫城殺人事件」が一番だろうか。

 「絶叫城」は推理部分も面白いが、それ以上に、小説家・有栖川有栖の犯罪に対する考えがはっきり表現されていて興味深い。


 NIGHT PROWLER(夜うろつく者)と記された紙切れを口の中に押し込まれ次々殺害される若い女性。残酷な無差別殺人事件は、カルトなホラーゲームに影響された者の犯行か…?

 最後に火村が犯人を追いつめる。その時の犯人の言葉「ヴァーチャルな世界と…リアルな世界。その境目が判らなくなるっていうのが…どんな感じかと…」

 これに対して、キャラのアリスの口を借りて作家・有栖川有栖の感情が炸裂!!

…彼の答えは私が生涯で聞いた最高のジョークだった。あまりにも滑稽で笑い出さなかったのが不思議なくらいだ。「この事件はバーチャルな世界と現実の境界が見えなくなってしまった若者の犯行だ」とぬかしたのは誰だっけ?精神科医か、教育評論家か、社会学者か、小説家か? とにかく、そこのお前だよ、お前。
 ここに来て○○君のお話を謹聴しろ。お前の創った物語がこいつを生んだんだってよ。空っぽな心には、何でも入るらしいぞ…

 この部分だけでも一読の価値あり!
コメント (2)
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