本と旅とやきもの

内外の近代小説、個人海外旅行、陶磁器の鑑賞について触れていき、ブログ・コミュニティを広げたい。

李東柱のこと

2021-02-27 08:53:13 | Weblog
 2月16日から十日も過ぎだ。その日は李東柱(同志社大学に在学中は「平沼東柱」)が獄死した日である。
 治安維持法違反として、昭和19年3月31日に京都地方裁判所の判決を受けている。その判決文の一部を紹介したい。
 私が持っている判決文はオリジナルのコピーである。末尾に裁判長と2名の判事の自署と印影もコピーされているからだ。
 
 主文は「被告人を懲役二年に処す」とある。
 その「理由」をかいつまんで転記する。なお、原文は旧字体とカタカナだが、勝手に新字体とひらがなに書き改める。
 
「被告人は半島出身中農の家庭に生まれ…昭和十七年三月内地(日本のこと)に渡来し…京都同志社大学文学部選科に在学…民族意識を抱懐し…内鮮間の所謂差別問題に対し深く怨嗟の念を抱ける…朝鮮民族を開放しその繁栄を招来せしむ為には帝国統治権の支配より離脱せしめ独立国家を建設するの他なく…」と句読点なしに続く。少し飛ぶ。

「大東亜戦争の勃発に直面するや科学力に劣勢なる日本の敗戦を夢想しその機に乗じ朝鮮独立の野望を実現し得ると妄信して益々その決意を固め…」この記述どおり陳述したかどうか疑わしい。裁判長自身は日本の敗戦を予期して誘導したような気がする。

 長文になったので以下は次回に回す。なにしろ、裁判用紙に7頁あるのだ。余談を挟むと、東京高裁長官だった方のエッセイに「判決文はできるだけ短く、分かりやすく書くように努めた」とある。加えると、重大事件なのに500字でまとめた例を書いていた。

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