勤め時代と違って、ハードカバーの本は買わない。買うとすれば新書版か文庫本ぐらいである。そんなわけで、市立図書館の本をよく利用する。
ある時期、図書館の利用者の立場で購入本を取捨する役目を引き受けたことがある。ただし、図書館が独自に購入する本について意見を述べることではない。
図書館にはいろいろな出版社から毎日のように新刊が送られてくるのだが、大手出版社が発行する小説やエッセイといった本ではない。著名な作家のものでもない。どちらかといえば、中小の出版社の教養書、トリセツ書、家庭本・児童本の類いが多かったような気がする。それを3000館も超える公共の図書館に送っているだろうか。
それらの本は事務室内の棚にある。2週間(借りた本の返却期限)おきにその棚に陳列された本を手に取ってみて購入要望の可否を決めるのだ。要望したい本には、その背表紙にペタッと小さなポストイットを貼る。
もちろん、私以外にも何人かの選別者がいる。その多くが要望した本は必ず購入するかどうか知らない。トレースしたことはないからだ。少なくとも大部分の本は出版社に返送されるだろう。
その1年後に、今年もやりませんかと言われたが断わった。それだけのこと。