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早川いくを『ウツ妻さん』(亜紀書房、2013)感想

2013-11-05 00:23:05 | その他の本・雑誌の感想
 早川いくを氏といえば、昔『へんないきもの』『またまたへんないきもの』がベストセラーになった方だ。
 これらを寝床に置いて、毎晩のようにちょこっと読んで寝ていたものだった。
(私はこうした肩のこらない、癒されそうな本を寝床で少しだけ読んで寝る習慣がある。この本の後は日高トモキチの『トーキョー博物誌』に移り、今は『毎日かあさん』や『よつばと!』がそうだ)

 たまたま最近早川氏のツイートをフォローするようになり、たまたまそこで新刊『ウツ妻さん』のことを知った。
 10月16日付けの氏のツイートに、

「老後はブルーシートで暮らして万引きして警察に捕まる」
「夫は先に死ぬ、将来は孤独死だ」
「痩せてキレイになって死ね死ね団にいれてもらう」
妻がある日、こんな事を言い出したらどうするか!? 
早川いくを新刊「ウツ妻さん」今日発売!


とあり、添付されている本の画像には、帯に

特撮ヒーローがウツ病を退治する!?

毎日、過激に「不安」と「悲鳴」を量産するウチの妻。
「さびしい」と泣いていても、特撮ドラマには大興奮!
笑いあり、涙あり、変身ありの
ウツウツ闘病記。


といった文字が。

 さらに別の日にはこんなツイート

「電磁波がこわい、鉄塔がこわい」
「精子が死ぬから熱いお風呂入んないで」
「痩せてキレイになって死ね死ね団にいれてもらう」
妻がある日、こんな事を言い出したらどうするか!? 
早川いくを新刊「ウツ妻さん」発売中!


妻は不安を吐き続けた。最初は温泉ライオンだった。やがてそれはマーライオンになった。不安はパワーアップし、強大化し、ついには巨神兵のごとくなった。「うつ妻さん」好評発売中。


もあり、興味をもってAmazonで買ってみた(市内の本屋にはまだ入っていませんでした)。

 実のところ、最も惹かれたのは特撮ヒーロー云々の箇所なのだが、そのへんは全体の一部でしかなかった。
 本質は、家族の視点からのまさに闘病記。
 早川氏独特の軽妙な文体に救われつつも、内容は結構重たかった。
 この分野の嚆矢であろう『ツレうつ』のエッセイ版といった感じだが、マンガではなく文章なので余計にそう感じたのかもしれない。
 『ツレうつ』とは異なり当然男性視点で、似たような経験がなくもない私としては 共感できる部分が多かった。

 「ウツ妻もの申す」というコーナーで、氏の奥方・トト子さんはこう述べている。

特撮ものにハマったのは、今思うと現実に戻りたくない、ファンタジーの世界に浸っていたいという気持ちの表れだったと思います。


 私は、子ども時代に見ていた特撮ヒーロー物が、成人してからも結構好きで、今でもたまにお気に入りのエピソードを見返すことがある。
 本書で取り上げられている「レインボーマン」もその一つだ。中でも第2クール「M作戦」編(特にその前半)は必見。

 一方、最近の特撮ヒーロー物には全く興味が湧かない。というか、一般向けのドラマもほとんど見ることがない。

 これも一種の逃避なのだろうか。自分の子供時代に戻りたいといった。

 しかし、子供にはある意味「レインボーマン」の凄さはわからないだろう。
 成人して見返して初めてわかる子供向けドラマの凄さを再確認するというのは、単なる逃避ではないような気もする。
 トト子さんがハマったのが「レインボーマン」「快傑ズバット」という特撮ヒーロー物としては特異な作品だったのは、単なる偶然ではないのではないだろうか。

 そんな話はさておき、『へんないきもの』などで印象的な著者の文体が好きだという方なら、その点は全く変わりありませんので、本書は「買い」だと言えるのではないかと思いました。



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