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「真の近現代史観」?

2009-01-04 23:48:40 | 「保守」系言説への疑問
 田母神論文が問題になったアパグループの懸賞論文は「真の近現代史観」と題されていた。
 この懸賞で受賞するような論文が「真の近現代史観」であって、それ以外の近現代史観は偽の近現代史観だというのだろう。
 例えば唯物史観とか、あるいは東京裁判史観とか、いわゆる自虐史観は、偽の近現代史観だというのだろう。

 真正保守主義(者)という言葉を時々目にする。
 これも、真正な保守主義とそうでない保守主義があるというのだろう。

 保守とは果たしてそういうものなのだろうか。

 複数の物の見方や考え方、主義主張があって、その中から自分はこれを支持する、これが妥当だと思うと選択するというのはわかる。私もそうしている。
 しかし、その自分の信ずる説が真であって、その他のものは偽であるという感覚は、ちょっとよくわからない。
 数学じゃあるまいし。

 これは、キリスト教やマルクス主義に見られる、正統と異端を峻別する思考法ではないだろうか。
 わが国の思想の伝統とも無縁なら、西欧型の保守主義ともまた異なるものではないだろうか。

 そういえば、だいぶ前に、中川八洋の『正統の哲学 異端の思想』という本を読んだ。ホッブズやバーク、チェスタトンなどの著作は「正統の哲学」であり推奨に値するが、ロック、ルソー、マルクスらの著作は「異端の思想」であり読むに値しないという内容だったと記憶している。
 しかし私には、バークやチェスタトンが、自らの思想は「正統」であり、反対派の思想は「異端」であるなどと述べるとはとても思えないのだが。
 そうした思考法は、ルソーやマルクスの裏返しであり、むしろ本来の保守とは対極に位置するものではないだろうか。

 「真の近現代史観」「真正保守主義」といった用語に何ら疑問を持たない自称保守主義者がいるとすれば、彼らは何か別のものを保守主義と混同しているのだろう。



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3 コメント

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Unknown (静流)
2009-01-07 01:32:09
『正統の哲学 異端の思想』はアンチルソー論ともいうべき作品ですよね。私も読みました。
チェスタトン(とかウンベルト・エーコとか)は私にとっては学者というよりミステリー作家としてのイメージが強いです。

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Unknown (パトリオット)
2009-01-22 17:14:20
名前なんかどうでも良いが、国益国民益重視派と進歩派奇鳥の売国奴とのせめぎ合いでしょう?
私は日本に居住する日本人ですから、主義主張と関係無く国益重視派です。
その点、ブログ主さんは何を立脚点に誰のために主張されてるのか、甚だ疑問です。
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パトリオットさんへ (深沢明人)
2009-02-08 16:34:36
>国益国民益重視派と進歩派奇鳥の売国奴とのせめぎ合いでしょう?

 世の中がそんなに単純なわけがないと思いますが……。

>私は日本に居住する日本人ですから、主義主張と関係無く国益重視派です。

 「主義主張と関係なく」の意味がよくわからないのですが、どんな主義主張であれ、「国益重視派」でありさえすれば支持するということでしょうか?
 言い換えれば、主張の中身よりも立場を重視するということでしょうか?
 だとすれば、私とは相容れないですね。
 私は、立場よりも、その主張の中身自体で、その当否を判断するべきだと考えていますので。

 私も日本に居住する日本人ですから、国益を重視します。
 そして、国益を重視するとは、単に「国益を重視せよ」と発言している者を支持することではなく、その主張や行動が国益に寄与するものなのか、それとも国益を損なうものなのかを判断することだと考えています。
 具体的に言うと、例えば、田母神論文やそれを礼賛する動きは、国益を大いに損なうものだと考えています。
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