トラッシュボックス

日々の思いをたまに綴るブログ。

血縁関係を理由に人を批判するという手法

2006-08-22 22:14:28 | 日本近現代史
 以前、岸信介が731部隊の実権を握っていたと主張して、岸の孫である安倍晋三を批判するブログ(「カナダde日本語」さん)のことを書いて、トラックバックを付けていたところ、そのブログで私の意見について取り上げていただいた。ありがたいことだ。
 その新しい記事にもまたコメントを付けさせていただいたが、その際、血縁関係でもって人を批判するというこの方の手法について詳しく述べていなかったので、ここに記すことにする。
 「カナダde日本語」さんは、7月29日の記事で
「富田メモによると、昭和天皇が「松岡までもが」と忌み嫌っていた人物の親戚である安倍が総理になることは、お亡くなりになった昭和天皇の本望ではないだろう。」
とも述べている。
 仮に松岡が首相になっていて、それが昭和天皇の意に反するというのならまだ話はわかる。松岡の親戚だからといって、なぜ安倍が首相就任を云々されなければならないのか。しかも、祖父の弟の妻のおじだというのだから、ほとんど他人である。
 こうした、血縁関係自体をもって人を批判する手法には、違和感を禁じ得ない。前近代的である。
 人間は、個人として尊重され、出生や社会的地位によって差別されてはならないのではないか。
 こうした方々にとって、人権とは、誰にでも普遍的に適用されるべきものではないらしい。権力者に対しては何を言っても許されるとでも思っているようだ。民主制において、権力者を監視することは重要だが、権力者に対してどんな批判をしても全て許されるというものではあるまい。
 また、この方は、8月19日の記事で
「オウム真理教の麻原の孫が総理大臣になったとしても、トラッシュボックスさんは全く気にならないのだろうか?」
と述べているが、気にならないわけはないが、私なら、麻原の孫ということだけでなく、その主張や活動内容によって、人物を判断したい。少なくとも、麻原の孫であるということだけで、その人物が首相になるべきではないとは思わない。
 と言うと、単に孫だというだけでなく、安倍は岸を政治的に継承しているではないかという反論が予想されるが、そのとおりだ。ただ、日米安保体制などはともかく、戦前の岸の活動についてまで、安倍が肯定的に評価しているのかどうか、私はよく知らない。そのへんはおそらくあいまいにされているのだろう。
 「カナダde日本語」さんたちが、岸の継承者としての安倍をそれ故に批判するのは自由だ。統一教会との関係など、岸と安倍に共通する批判すべき点をあげつらうのもいいだろう。
 ただ、731部隊の黒幕が岸であり、その情報を米国に売り渡して不起訴になったという説については、その根拠がまるでない、単なる推測に過ぎないものだ。そんなデマをまき散らして、その岸の孫であるということで安倍を批判する、そんな手法はおかしいのではないかと私は考える。
 なお、最初に触れた松岡の関係で補足すると、二・ニ六事件の黒幕と言われた真崎甚三郎という軍人がいるが、その息子の真崎秀樹は、昭和天皇の通訳を務めたことで著名である。二・ニ六事件に昭和天皇が激怒したという話もまた著名だが、真崎甚三郎に昭和天皇がいい感情を持っていたとは思えない。しかし、昭和天皇は、その息子だからといって遠ざけるような偏狭な人物ではなかった。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。