神戸新聞の3月18日付け夕刊に、こんな記事が載っていた。
神戸方式なるものが存在することは以前から知っていた。
非核3原則の1つ、「持ち込ませず」を自治体レベルで実践するということなのだろう。
何故自治体が独自にこのような政策を採ることが可能なのか長年不審に思っていたが、上の記事をきっかけに今回検索してみてようやくわかった。
こちらのサイトに、こんな法的根拠が載っていた。
しかし、これが法的根拠となりうるのか?
核兵器搭載艦の寄港は「港湾環境を悪化させおそれがある」「公の秩序を乱すおそれがある」と言えるのか?
出るところへ出れば、つまり訴訟になったり国際問題化したりすれば、通らない話ではないだろうか。
それが容認されているのは、米艦船は神戸にこだわらずとも他の港を使用することができるからであり、また、米政府もわが国政府も強いて事を大げさにしたくないからだろう。つまりはお目こぼしだろう。
上の記事によると2001年に米艦が寄港したという姫路港は、兵庫県が港湾管理者となっている。
兵庫県港湾施設管理条例を見ると、
とある。
こういった条文からすれば、神戸市と同様の対応をすることも可能なのではないか。
そして、おそらくはどの港湾を管理する自治体にも、同様の条文があるのではないか。
しかし、神戸方式の開始から35年が経過したというのに、実践する自治体は未だ神戸市のみにとどまっている。
それは、結局のところ、米艦船の寄港先となっている他の都市において、実践する意義がないからではないか。
米軍は、他の港を利用すればよいのだから、核戦略にはそれほど影響を及ぼさない。
神戸市には、非核を貫いたという自己満足と美名、そして米艦船が他国からの攻撃目標にされる場合にその危険から除外されるという実益が残る。
実のところは、好まない仕事を他の港湾に押しつけているだけであるにもかかわらず。
こんなものは地域エゴであり、かつての社会党の非武装中立論に基づく一国平和主義ならぬ一都市平和主義に過ぎないのではないか。
神戸市民がそれほど非核3原則を重視しているなら、市長や市議、さらには県政へも国政へも、左派系の人物をバンバン当選させて、わが国の安全保障政策を転換させればよいだろう。
しかし、市民の投票行動はそうなっていない。
衆院選では、中選挙区時代には自民党から1人か2人は当選していたし、小選挙区になってからは自民党か民主党が当選し、社民党や共産党は当選できていない。
神戸市長選や市議会では、基本的に自民党から共産党までのオール与党体制が長期にわたって続いていると聞いている。
前回の市長選では異なる動きがあったようだが、結果的には現職が3選を果たした。それを伝える神戸新聞の記事によると、市長は助役出身者が60年以上に及び、また共産党が独自候補を立てたのも40年ぶりだという。
神戸方式も、そうした特異な地方政界の事情の産物ではないのか。
冒頭に引用した神戸新聞の記事には、高知県や鹿児島県などで米艦船の核搭載の有無を外務省に照会していると報じているが、四国新聞のサイトにも昨年9月26日付けで次のような記事がある。
この照会と回答とは、現在高知県のサイトに掲載されている次のようなものであるのだろう。
しかしこれは、「我が国政府として疑いを有してい」ないことを示しているだけであり、わが国が同艦船に核兵器が搭載しされていないことを保証しているわけではない。もちろん、外務省が米国に照会してその結果を得たというわけでもない。実質的には、「事前協議が行われない以上、核持ち込みは無い」という回答とさして変わらないのではないか。
本当に「神戸方式の意義が重みを増している」のなら、各自治体は神戸市と同様に米艦船に直接非核証明書の提出を求めればよいはずである。そこまで踏み込まないのは何故なのか。これは、核搭載艦船の寄港を容認しているわけではないですよという対外的なポーズに過ぎないのではないか。「事前協議」云々という構造と何も変わっていないのではないか。
こんな動きを神戸方式の意義と結びつける神戸新聞の牽強付会には恐れ入る。
私には、神戸方式にどのような意義があるのかさっぱりわからない。
重み増す「非核神戸方式」 市議会決議35年
神戸港に入る外国艦船に非核証明書の提出を求める「非核神戸方式」が神戸市議会で決議され、18日で35年を迎えた。その間、核の有無を明確にしない米国艦船は1隻も入っていない。核搭載艦船の寄港・通過をめぐる日米の密約に関心が集まる中、米艦船の核搭載を外務省に照会する自治体が増えるなど、神戸方式の意義が重みを増している。(小西博美)
非核神戸方式は1975年3月、神戸市議会が全会一致で決議。当時、米議会で「日本寄港の艦艇は核兵器をはずさない」とした証言が出たことなどがきっかけだった。戦後、頻繁に神戸港に入っていた米艦船は、核兵器の搭載を否定も肯定もしないため、決議以降は寄港していない。
神戸方式の条例化を試みた高知県は1998年、外務省の圧力などもあり断念したが、米艦船の入港希望があると同省に核搭載の有無を照会している。日米間の核密約問題の調査が始まった昨年9月以降、同省への照会は鹿児島県など新たな自治体にも広がり、その間だけでも8件を数える。
今月明らかになった調査結果では、核搭載艦船の寄港・通過を事前協議の対象外とする密約が存在した‐とされた。
一方、米国関係者によると、米艦船は日本のどの港にも自由に入れるため神戸に寄港できないことで大きな影響は受けないというが、神戸の動きが全国に広がることを警戒し、自治体が核搭載を理由に入港を拒むことを気に掛ける。
実際、有事に自治体や民間協力を求める周辺事態法が成立した1999年ごろから、神戸方式を揺さぶる動きが見える。98年にカナダ船が初めて非核証明書なしで神戸港に入港。2001年には米ミサイル巡洋艦が、兵庫県による非核証明書の提出要求には応じず、姫路港に入った。
こうした動きに対し、神戸方式を支援する兵庫県原水協は「神戸では自治体の権限で非核が守られてきた」と高く評価。神戸市も「35年間、平和への思いが引き継がれてきたことに重みを感じる。これからも守っていく」と堅持の姿勢を見せている。
(2010/03/18 16:17)
神戸方式なるものが存在することは以前から知っていた。
非核3原則の1つ、「持ち込ませず」を自治体レベルで実践するということなのだろう。
何故自治体が独自にこのような政策を採ることが可能なのか長年不審に思っていたが、上の記事をきっかけに今回検索してみてようやくわかった。
こちらのサイトに、こんな法的根拠が載っていた。
☆法的根拠☆
地方自治法
第2条第3項第1号 地方公共の秩序を維持し、住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持すること
神戸市港湾施設条例より(抜粋)
第3条 港湾施設を利用しようとするものは、市長の許可を受けなければならない。
第5条 市長は・・・次の・・・場合においては、許可又は承認を与えてはならない。・・
(3)その使用内容が港湾環境を悪化させおそれれがあるとき。(4)その使用内容が公の秩序を乱すおそれがあるとき。
第6条 市長は・・使用に係わる危険を防止し、秩序を維持し、または環境を保全するために必要な条件を付し、及びこれを変更することができる。
第36条 市長は、必要があると認めるときには使用者に対し取扱い貨物、・・・その他港湾施設の使用に関する事項について関係書類の提出を求めることができる。
しかし、これが法的根拠となりうるのか?
核兵器搭載艦の寄港は「港湾環境を悪化させおそれがある」「公の秩序を乱すおそれがある」と言えるのか?
出るところへ出れば、つまり訴訟になったり国際問題化したりすれば、通らない話ではないだろうか。
それが容認されているのは、米艦船は神戸にこだわらずとも他の港を使用することができるからであり、また、米政府もわが国政府も強いて事を大げさにしたくないからだろう。つまりはお目こぼしだろう。
上の記事によると2001年に米艦が寄港したという姫路港は、兵庫県が港湾管理者となっている。
兵庫県港湾施設管理条例を見ると、
(行為の許可及びその承継)
第4条 港湾施設において、次に掲げる行為をしようとする者は、知事の許可を受けなければならない。ただし、規則で定める港湾施設の使用については、この限りでない。
(1) 港湾施設を使用すること。〔後略〕
(許可の条件)
第5条 知事は、前条第1項の許可をするにあたり、港湾施設の保全その他その適正な使用を確保するため必要な条件を付することができる。
とある。
こういった条文からすれば、神戸市と同様の対応をすることも可能なのではないか。
そして、おそらくはどの港湾を管理する自治体にも、同様の条文があるのではないか。
しかし、神戸方式の開始から35年が経過したというのに、実践する自治体は未だ神戸市のみにとどまっている。
それは、結局のところ、米艦船の寄港先となっている他の都市において、実践する意義がないからではないか。
米軍は、他の港を利用すればよいのだから、核戦略にはそれほど影響を及ぼさない。
神戸市には、非核を貫いたという自己満足と美名、そして米艦船が他国からの攻撃目標にされる場合にその危険から除外されるという実益が残る。
実のところは、好まない仕事を他の港湾に押しつけているだけであるにもかかわらず。
こんなものは地域エゴであり、かつての社会党の非武装中立論に基づく一国平和主義ならぬ一都市平和主義に過ぎないのではないか。
神戸市民がそれほど非核3原則を重視しているなら、市長や市議、さらには県政へも国政へも、左派系の人物をバンバン当選させて、わが国の安全保障政策を転換させればよいだろう。
しかし、市民の投票行動はそうなっていない。
衆院選では、中選挙区時代には自民党から1人か2人は当選していたし、小選挙区になってからは自民党か民主党が当選し、社民党や共産党は当選できていない。
神戸市長選や市議会では、基本的に自民党から共産党までのオール与党体制が長期にわたって続いていると聞いている。
前回の市長選では異なる動きがあったようだが、結果的には現職が3選を果たした。それを伝える神戸新聞の記事によると、市長は助役出身者が60年以上に及び、また共産党が独自候補を立てたのも40年ぶりだという。
神戸方式も、そうした特異な地方政界の事情の産物ではないのか。
冒頭に引用した神戸新聞の記事には、高知県や鹿児島県などで米艦船の核搭載の有無を外務省に照会していると報じているが、四国新聞のサイトにも昨年9月26日付けで次のような記事がある。
外務省、核持ち込み否定根拠変更/「艦船に核搭載能力がない」
2009/09/26 11:30
米軍艦船の核兵器持ち込みに関する高知県の照会に対し、外務省が米側との事前協議がないことを理由に核持ち込みを否定した従来の回答を変更し、「艦船に核搭載能力がない」と答えていたことが26日、分かった。
政権交代を受け、岡田克也外相は、米軍の核搭載艦船の日本通過や寄港を黙認してきたとする「日米密約」などについて、調査チームを発足させ、真相解明を目指す方針を示している。今回の回答の変化はこうした岡田氏の意向を踏まえたもので、外務省幹部は「より真実に近い回答に変えた」と話している。
高知県によると今月16日、10月に高知港(高知市)に寄港を希望している米海軍救難艦の核兵器搭載の有無を同省に照会。25日に同省から口頭で「(艦船に)搭載能力がない以上、核兵器を搭載していないことにつき、政府として疑いを有していない」との回答があったという。
高知県は2006年と08年にも、別の米国艦船の寄港時に照会。この時、外務省は「米国にとって、事前協議に関する約束を履行することは日米安全保障条約及びその関連取り決め上の義務」と指摘し、「核持ち込みについて事前協議が行われない以上、核持ち込みは無い」と回答していた。
この照会と回答とは、現在高知県のサイトに掲載されている次のようなものであるのだろう。
行事等のお知らせ(No.00017938)
1.行事名
米国艦船の核兵器搭載の有無に関する外務省への照会結果について
2.日時
2010年 2月 1日~2010年 2月 5日
3.場所
宿毛湾港
4.内容 外務省からの回答日 平成22年1月20日
平成22年2月1日から5日にかけて、宿毛湾港への寄港通知のあった米国艦船「LAKE ERIE
(CG70)」については、外務省に核兵器搭載の有無を照会していましたが、下記のとおり文書回答がありました。
このことを受け県は、宿毛海上保安署長に、宿毛湾港の池島岸壁(-13メートル)が使用可能である旨の連絡をします。
今後、この岸壁の使用許可申請があれば、許可をしていくことになります。
記
米国は、1991年にブッシュ大統領のイニシアティブにより、水上艦船、攻撃型潜水艦を含む米海軍の艦艇及び航空機から戦術核兵器を撤去する旨表明し、また、1994年にクリントン政権による核態勢見直しの中で、米軍の水上艦船及び空母艦載機から戦術核兵器の搭載能力も撤去する旨発表しています。したがって、御照会のあった米軍艦船「LAKE ERIE (CG70)」については、搭載能力がない以上、核兵器を搭載していないことにつき、我が国政府として疑いを有していません。
つきましては、貴職におかれては、上記の次第を御勘案の上、今後とも米軍艦船の入港に際しては、日米安全保障条約及びその関連取極に基づいた取扱いがなされますよう、しかるべく協力方お願いいたします。
しかしこれは、「我が国政府として疑いを有してい」ないことを示しているだけであり、わが国が同艦船に核兵器が搭載しされていないことを保証しているわけではない。もちろん、外務省が米国に照会してその結果を得たというわけでもない。実質的には、「事前協議が行われない以上、核持ち込みは無い」という回答とさして変わらないのではないか。
本当に「神戸方式の意義が重みを増している」のなら、各自治体は神戸市と同様に米艦船に直接非核証明書の提出を求めればよいはずである。そこまで踏み込まないのは何故なのか。これは、核搭載艦船の寄港を容認しているわけではないですよという対外的なポーズに過ぎないのではないか。「事前協議」云々という構造と何も変わっていないのではないか。
こんな動きを神戸方式の意義と結びつける神戸新聞の牽強付会には恐れ入る。
私には、神戸方式にどのような意義があるのかさっぱりわからない。