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共同通信の平壌支局開設は評価すべきなのか

2007-09-03 12:01:09 | マスコミ
 共同通信社が日本の報道機関として初めて北朝鮮に支局を開設して、丸1年が経過した。
 この件を、『産経新聞』紙上で大島信三編集委員が取り上げている(ウェブ魚拓)。
 意外に高評価なのに驚いた。

 私は知らなかったのだが、平壌支局に記者は常駐しておらず、中国総局の記者が支局員を兼ねているのだという。
 若干名の現地スタッフがいるが、日本語はもとより英語も話すことはできないという。
 平壌支局は朝鮮中央通信の社屋内にあるという。ならば、現地スタッフも朝鮮中央通信社の人間か、それに類する者ではないだろうか。


《支局開設からこの1年間で加盟社へ配信された原稿の本数は合計で約80本。月によってばらつきがあり、北朝鮮が核実験を実施した昨年10月は30本あったが、12月はゼロ。ことしに入って5月もゼロだった。しかし6月は15本という具合になる。〔中略〕いずれにしても年間約80本という記事量が多いのか少ないのか、見方は分かれるであろう。むしろ、数よりも質で北朝鮮の実情をもっと打電してほしかった面もあるが、閉鎖的な体質を考えれば、期待するのも難しいだろう。》


 「見方は分かれるであろう」と言われても、他国との比較がなければ読者には判断の仕様がない。
 しかし、韓国や中国の記事が年間約80本とは到底考えられないから、日本人読者の関心が高い近隣諸国としては、やはり少ないと見るべきではないか。


《西側メディアのトップをきって、共同よりひと足早い5月に開局した米AP系列の映像配信会社APTNも派手な活躍はしていない。また友好国である中国の新華社にしても、ロシアのイタル・タス通信にしても平壌支局は鳴かず飛ばずの状態だ。

 ただ平壌支局開設の効果は徐々に表れてきているという。北京常駐の記者や東京本社の取材チームがこれまで以上に平壌へ入りやすくなり、北朝鮮外務省の日本担当官との会見も何度か実現。たとえ一方的な情報であれ、取材ルートが曲がりなりにもできつつある。

 現在のところ「取材上のことも含めトラブルは一切ない」(中屋外信部長)というが、望ましいのは日本人記者の常駐。だが、その実現性はいまのところ薄いようだ。共同はこれからも常駐化を求めていくというが、北朝鮮の政治プロパガンダの網の目をかいくぐって、どこまで客観的な報道ができるか。2年目に入った平壌支局をこれまで以上に注目していきたい。》


 APTNや新華社、イタル・タス通信の記者は常駐しているのだろうか。仮に常駐していても「鳴かず飛ばず」なのなら、日本人記者が常駐しても同様ではないだろうか。

 誰かが言っていたが、北朝鮮の報道機関と同じ報道をするのなら、支局を置く意味はない。北朝鮮の通信社からの配信を受ければ同じことだから。
 「平壌発○○」の表記とは、それほど魅力的なのだろうか。それはマスコミ界だけの都合、メンツ争いみたいなもので、一般読者にはどこからの配信だろうがどうでもいいことではないだろうか。

 かつて中国で文化大革命が盛んだったころ、日本のマスコミ各社の特派員が、朝日1社を除いて中国から放逐された。朝日は文革派の意に沿う報道を続け、日本人の文革観を大いに歪めた。また林彪失脚説が流れる中、頑として林彪健在と報じ続けたこともよく知られている。
 やがて文革派の退潮に伴い、朝日以外のマスコミも中国に復帰したが、産経だけは長年復帰しなかった。これは、中国が「一つの中国」の立場から台湾支局の閉鎖を要求したのに対し、産経だけがこれに応じなかったからだ。
 結局、産経は台湾支局を閉鎖しないまま、1998年に中国総局を設置することに成功した。するとそれを見た他社はこぞって台湾に支局を設置した。
 朝日の姿勢はわが国のマスコミ史上における汚点だと思うし、産経のそれは高く評価すべきだと思う。
 その産経が、共同通信の支局設置にこれほど好意的な姿勢を示しているのは、私には理解しがたい。


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