民俗断想

民俗学を中心に、学校教育や社会問題について論評します。

学芸員という仕事

2016-02-09 17:45:31 | その他

 嘱託ではあるが博物館に勤めてもうすぐ2年となります。学芸員の資格はありませんが、学芸員のような仕事をしてきました。民俗をしている仲間には学芸員も多数いますから、今までもわかったようなつもりでいましたが、実際に組織の中に身を置いてみてわかったことがたくさんありました。

 博物館の仕事には、資料を展示するほかに調査研究、資料収集、教育普及などといった仕事があります。これらの仕事のうち、ほとんど手が付けられていないのは、調査研究・資料収集だと思います。まず、人手が不足しています。少ない人員でやりくりするとなったら、まず新しい資料の収集だとか研究活動が削られてしまいます。この二つはなくても外部からはわかりませんので、学芸員自身がそうした活動をしないことに、慣れてしまいます。時間があってもやらなくなってしまいます。もっとも、時間はあってもお金のかかることは前年度の9月頃に細かな計画を立てて費用を算出し、予算を計上しておかないことにはお金はありません。今の仕事をやりつつ来年度の計画をたてるのは、かなり難しいと感じました。公務員なら当たり前のコトかもしれませんが、お金の自由は本当にききません。

では、学芸員の実際の仕事は何かといえば、メインは企画展示でありそれ以外は各種講座の開催だと思います。企画展というやつがくせものです。学芸員は必ずしも自分の専門として勉強してきた分野やテーマでなくとも担当しなければなりません。そこで、関連書籍を読み泥縄とでもいっていいあわただしさで、企画展の準備をし解説をかきます。解説はじつは専門書のリライトです。難しい内容を、市民向けにわかりやすく翻訳するのだといってもよいでしょう。つまり、学芸員とは翻訳家だともいえるのです。ところが、学芸員はここで勘違いしてしまいます。自分があたかも専門家であると、研究者のはしくれであると。研究をしない、論文を書かない、解説しか書いていないにもかかわらずです。もちろん、自分の研究分野を持ち仕事は仕事として地道に研究を続ける学芸員もいないことはありません。しかし、それは少数に過ぎないとわかりました。にもかかわらず、勘違いしてしまう人が多いのです。

自分が学芸員に幻想を抱いていたのです。学校の先生なら何でも知っていると思われるのと同じことです。学芸員も公務員なのです。そして専門職としてではなく、公務員として任用されているのです。

 


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