民俗断想

民俗学を中心に、学校教育や社会問題について論評します。

霊感の強い人

2015-06-08 15:10:11 | 民俗学

今も昔も、床屋(これはなぜか差別語らしく理容院というのだそだが)には世間の面白い話が集まるようです。行きつけの店では、話し好きな店主がお客さんから聞いたという噂話など、本当ですかと聞き返したくなるような話をしてくれます。たまたま今は、結構昔の出版ではあるが、小松和彦『妖怪学新考』(小学館)を読んでいたら、本に引き寄せられたような話を聞いたのです。その前に、関連しそうな記述の部分を先にあげておきます。

 都市の「闇」空間は、都市の住民にとって恐怖を感じさせる空間であるが、そうした恐怖・不安空間には都市民の多くが抽象的なレベルで共有する空間がある。ここで「抽象的」といったのは、私が具体的にイメージする場所と、読者がそれぞれ思い浮かべる具体的な場所が違っているからである。
 その一つは、「死」に結びついた空間である。墓場、病院、廃屋、交通事故などのあった場所がそうした場所である。もっとも、交通事故のあった場所はそれを知らされるまではそのような場所と思わない所であるので、その他とは少し異なるといえるかもしれない。そこが死と結びついた場所となるためには、それを伝える伝承の共有が必要である。それを共有しない人にとっては、特別の場所、恐怖を喚起する場所ではない。

 霊感の強い人っているんですね。女房の知り合いの子どもが、高校生なんだけど、見えないものが見えちゃうだって
事例1 市の南部に鯉屋さんあるの知ってます。その近くの家の前を通ると、いつも小さい子どもが遊んでいるのをみるんだそうです。それで不思議に思って聞いてみると、確かにそのうちの前で交通事故にあって、小さなこどもが死んでしまったそうです。その時の着ていた服が見える通りなだってせ。
事例2 国道ばたのK中から西の方へ行く道ありますね。そこを少し行ったところに、産婦人科の病院があります。あそこは、どういうわけか一度開業したけどつぶれてしまって、長い間空き家になっていたけど、そこがまた開業した。そこの2階にね、通るたびに黒い服を着た女の人が外を見ているのが見えるんだって。それで聞いてみると、確かにつぶれる前にそこの2階には精神的におかしくなっちゃった人がいて、いつも黒い服をきて外を見ていたってせ。
事例3 S病院の前の道を東へくると、橋がありますね。その橋のたもとに、上の道から川端に降りていく階段があります。そのあたりには、いっぱい座っている人が見えるんだってせ。大勢見えていやだから、その子はその道はいやがって通らないっていいます。

 事例1は交通事故の場所につく霊、事例2は空き家だった家につく霊、事例3は病院近くの橋につく霊と説明できるが、多くの人がその場所を共有するような伝承性はないのです。また、見えてしまう高校生の子は、そのことをいやがっている、つまり自分にだけ見えてしまうことに違和感を感じているというのです。しかも、伝聞の伝聞ではなく、床屋さんに聞けばその子は特定できるでしょう。恐がりの自分としては随分怖い話ですが、3事例とも説明はつく徴つきの場所ですね。私の住むような地方都市の都市伝説です。 


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