民俗断想

民俗学を中心に、学校教育や社会問題について論評します。

産小屋考

2017-11-08 15:03:54 | 民俗学

板橋春夫氏は男性ながら精力的に産小屋の調査に取り組んでいる。産小屋とは、今は亡くなってしまったが産婦が一定期間家族とは別の小屋で、別れて生活するための施設でした。その理由が「血のけがれ」と説明されていたので、女性差別の施設のようにみられ、存在そのもにが否定されたりしました。しかし板橋氏のつぶさな調査によって、母体を保護する機能が明らかになりました。それは、産婦が別火で調理しなければならないとされたことで、日常の家事から解放され、赤子と一緒にのびのびと過ごせたということです。

私は今まで、この説明は男にとって都合の良い論理を男性研究者が構築したのであって、出産を穢れとして女性を隔離するのは変だと思っていました。おそらく他にも男性研究者の視点から構築された、男性にとって心地よい論理もあるはずだということを含めて。ところが今回、娘の産後のサポートにきてみて、産小屋は産婦保護のためのシステムかもしれないと思うようになりました。何しろ産婦はナーバスで、落ち着いた会話が成立しません。赤子以外の人間は全て敵みたいで、動物もそうですよね、母親の動物は危ない、ということなのです。まるでオサンドンをする下部のような扱いです。周囲と隔離され食事のことを考えないで赤子と過ごし、赤子のことだけ考える場が、「産小屋」ではないか。そのために、皆が納得する論理として、「ケガレ」をもちだした、どうもそんな気がするのです。


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