教育のヒント by 本間勇人

身近な葛藤から世界の紛争まで、問題解決する創造的才能者が生まれる学びを探して

教育とインセンティブ

2008-01-31 03:06:45 | 文化・芸術
産経新聞(1月30日8時1分配信)によると、

東京都教育委員会は、指導力を備えた教員を養成するため今年4月から設置される早稲田大など都内4大学の「教職大学院」と協定を結び、大学院修了者を通常の教員採用試験とは別枠で優先的に採用する方針を決めた。教職大学院は、国の教育再生策の目玉とされるが、採用試験に影響はなく、修了メリットが不明確との指摘もある。このため、都教委では独自に大学院修了者を優遇することで、優秀な新人教員をいち早く確保したい考えだ。

☆法科大学院と同じ位置づけなのだろうが、インセンティブが違う。たしかにインセンティブは報償のみではないが、生理的欲求を満たすことも大事。基本的生きる条件なくして、教育もない。

☆どうも教育というと経済ベースは関係ないと思われがちだが・・・。国家が保障してくれる時代は、教育の世界でも終わるはずだが・・・。

理系高3の数学力に期待?

2008-01-30 09:20:18 | 文化・芸術
理系高3の数学力、30年前よりアップ(読売新聞) - goo ニュースによると、

子どもの理数離れが懸念されているなか、理系高校生の数学力はおよそ30年前よりも上がっていることが、東京理科大学数学教育研究所が1万人を対象に行った学力調査で判明した。

☆まずはよかった。

理科大への進学者が多い高校580校から任意に選び、調査協力を呼びかけた。2005年から3年間実施し、31都道府県からのべ146校が参加。「数学3」と「数学C」を履修している高校3年生に問題を出した。問題のうち約30問を国際教育到達度評価学会(IEA)が理系高校生に行った1980年度の国際数学教育調査(SIMS)と同一の問題にし、比較した。

☆この結果がよかったということだが、受験勉強をするようになったということではないのかな?


ただ、3年間の成績を比較すると、平均正答率は徐々に下がり、特に、図形など記述式で証明を求める問題の成績低下が著しかった。

☆やはり、数学の概念ではなく、受験勉強をするようになったということの顕れににすぎんのでは?

昨年12月に発表された経済協力開発機構(OECD)の国際学習到達度調査(06年実施)の結果では、日本の15歳の「数学的応用力」が03年の6位から10位に転落。文部科学省が来年度からの新学習指導要領で理数系の強化対策を打ち出していた。

☆SIMSとPISAでは、問題構造が違うのでは?違う条件で測って、結果を比べるというのは理数系の発想ではないのでは?

☆受験勉強より、ちくま文芸文庫で出版されている、「幾何学基礎論」D・ヒルベルト著、「位相のこころ」森毅著、「不完全性定理」野崎昭弘著、「ブルバキ数学史」の読書会をするとよいのに。私自身はついていけないが。無責任な論かもしれない・・・。


中国人実習生とのトラブルから寛容教育の必要性痛感

2008-01-30 03:23:36 | 文化・芸術
毎日新聞(1月29日2時31分配信)によると、

栃木県都賀(つが)町のイチゴ農園「長苺(ちょうぼ)園」が昨年12月、「不作で仕事がなくなった」との理由で中国人実習生5人を解雇し無りやり帰国させようとしたところ、「栃園(とちえん)会事業協同組合」(江田一之理事長)に加入する長苺園などイチゴ農家7軒(都賀、芳賀(はが)、二宮の3町)の実習生計15人が逃げ出し、逆に、過去3年の未払い賃金として計約5225万円分の支払いを求めるトラブルになっている。・・・各農園は同県の最低賃金(約670円)を下回る時給500円の残業代しか払っておらず、労組側は未払い賃金の返還とともに、5人の解雇撤回を求めている。長苺園は強制帰国について「行き過ぎがあった」と認めたが、「解雇は不当ではない」と反論。各農園は未払い賃金については減額を要求し、交渉が難航している。江田栃園会理事長は「優秀な実習生なら帰す必要はない」と、勤務態度がふまじめだったことを示唆する。一方、実習生の一人で黒竜江省ハルビン出身の張利民さん(34)は「奴隷のように扱われ、見下されている気がずっとしていた」と不満を訴えている。

☆日本の村落共同体的資本主義の露になった姿。こんな搾取にモチベーションがあがるはずがない。そもそも「安い労働力と考えて研修生を受け入れた」という出発点がおかしい。

☆日本はたしかに資本主義だが、民間のCS、ES、CSRというビジョンもかなり浸透してきている。しかし、国民一人ひとりが寛容教育を享受しなければ、差別、搾取に対する意識は低いままである。徳育よりも寛容教育!!

☆ハワード・ガードナーの最近の研究では、Creativity,Wisdom,and Trusteeshipの3つの学びが重要らしい。これはリチャード・フロリダのTechnology,Talent,
Toleranceにも重なる。

☆TrusteeshipやToleranceは、グローバリゼーションにおいてきわめて重要なコンセプト。中国人実習生の方々を向かえるにあたり、日本人はここを理解しなければならないし、行政側もそこのアクレディテーション・システムを整えよ。

国境なきエコゾフィー

2008-01-29 02:08:50 | 文化・芸術
読売新聞(1月28日14時34分配信)によると、

ハクチョウなどでにぎわう渡り鳥の飛来地で、鳥インフルエンザ感染のきっかけになることを恐れ、餌付けを禁止、自粛する動きが広がっている。養鶏業者などは「被害が出てからでは遅い」と、自治体に要望するなど危機感を強めるが、冬の使者とのふれ合いを続ける地元住民からは、戸惑いの声も上がっている。毎年300羽前後のハクチョウが飛来する秋田県大館市の長木川。川沿いの白鳥広場にこの冬、4、5メートル間隔で餌付け禁止を呼びかける看板が設置された。同市は比内地鶏の産地。渡り鳥のフンに含まれるウイルスが靴などに付着し、人が運び役となって比内地鶏に感染する危険があるとの理由からだ。

爆笑問題が司会の「近未来×予測テレビ ジキル&ハイド」でも鳥インフルエンザのシミュレーションをしていたが、環境問題は、本当に自然と経済と精神を横断的に考えざるを得ない問題。

☆エコロジーとフィロソフィーを掛け合わせて、フランスの現代思想家フェリックス・ガタリが提唱したエコゾフィー的思考や感覚が重要ということだろう。

☆ハクチョウとエコゾフィー。国境を越えて、養鶏業者の方の生活や子どもの健康、地方財政・行政を脅かす。解決するには、対処療法だけではなく、国境を越えて、市民レベルで話し合う活動を起こす必要もある。

☆エコゾフィーは市民と市民がコミュニケーションをするための共通コードに成長するだろう。その際、国対国の壁にぶつかるだろうが、ベルリンの壁はそのつど崩壊するだろう。

橋下知事と財界

2008-01-28 17:47:49 | 文化・芸術
産経新聞(1月28日8時1分配信)によると、

関西財界は、実質的に与党候補である橋下徹氏の当選に胸をなでおろし、歓迎と期待のコメントを寄せた。関西財界にとっては地元経済活性化に向けて取り組まなければならない課題は多く、与党との二人三脚が不可欠だからだ。しかし財界内には、橋下氏の知事としての力量について、疑問視する声がくすぶる。・・・「一度は不出馬を公言しながら、数日後にはあっさりと前言を撤回するなど優柔不断」(ある財界幹部)など批判的な声が多かった。・・・大阪商工会議所の野村明雄会頭(大阪ガス会長)は当選を祝う談話の中で「産業振興策の立案、推進における府の役割は極めて大きいという自覚と責任を改めて認識いただきたい」とクギをさした。

☆橋下知事は戦争を否定しないらしい。内村鑑三的非戦論の立場からすれば、その点において橋下知事を支持はしない。しかし、だからといって、財界の一部の権威者のようなトークはないな。

☆このトークはあまりによくある通り一遍の言説ゆえに、どってことないが、壁をつくりたがる悪い雰囲気には辟易だ。それに「自覚と責任を改めて認識いただきたい」という言葉は、そのまま返したい。

国立の教職大学院の募集低調

2008-01-27 12:19:12 | 文化・芸術
日経新聞(2008年2月27日)によると、

政府の教育再生策の目玉の一つとして今春開校する国立の教職大学院15校のうち7校で志願者数が入学定員に達しなかったことが26日、分かった。二次募集の実施を決める大学も相次いでおり、全体としての人気も低調。大学生の就職が好調なことや学費を払ってまで進学するメリットが不明確なことなどが背景にあるとみられる。

☆そういう中で、東京学芸大の教職大学院は好調らしい。学芸大のこのコースでは、

教育活動を「プロデュース(創成)する」という以下のような基本的視点に立って編成しています。○ 学校内外の協働とプロデュースのサイクル<課題(再)発見-開発-運用-点検評価>を実際に体験できるようなプログラムとなっている。○ 教育方法としては、フィールドワーク、ワークショップ、ロールプレイング、ケース・スタディ、ケース・カンファレンス、キャリアカウンセリング等のアクティブな学習スタイルを大胆に取り入れる。

☆とありますが、<課題(再)発見-開発-運用-点検評価>はPDCAサイクルをAPDCに並べ替えた(もともと循環しているのでどこから始まっても良いのだけれど)だけで、一般企業でもやっていること。

☆「フィールドワーク、ワークショップ、ロールプレイング、ケース・スタディ、ケース・カンファレンス、キャリアカウンセリング等のアクティブな学習スタイル」というのはプロジェクト・ベース学習で、中高生がやっていることだ。

☆つまり新しいことは何もない。それはメリットを感じないだろうな。ただ、学芸大は、おもしろい教授陣をそろえているらしい。教師はやはり人だから、そういう場合は募集もうまくいくということか。もし教授陣が従来型の教育を経験してきたとしたら、そもそも上記の2つのポイントは教授できないだろう。実効性は薄い。

☆やはり人材不足は否めない。

和田中「夜スペ」始まる

2008-01-27 08:25:07 | 文化・芸術
産経新聞(1月26日22時12分配信)によると、

賛否のなかで26日スタートした進学塾講師による東京都杉並区立和田中学校の「夜スペシャル(夜スペ)」。塾のない地方はどうするのか。教員や教育委員会関係者からは保護者からの要求の多様化や地方と都市部の意識の差を指摘する声もある。

☆賛成派は、

埼玉県教育委員長で明星大教授の高橋史朗氏は「(都教委が指摘した)(1)費用の負担(2)学校主催(3)教員が教材づくりを手伝う-の3点の問題さえなければ、学校の壁を破る新しい試みだ。学校の閉鎖的体質を改めるいい機会で、保護者と連携して子供のために何をすべきかを優先すべきだ」と話す。

☆異論派は、

東京都品川区教育委員長の細川珠生さんは「学力向上は学校の大きな目的のひとつ。それを放棄するのは学校の権威を下げる。恒常的に塾に頼るのは教員の力を伸ばすことにならない」と指摘する。

☆現実派は、

すでに塾講師と連携している東京都江東区の小山正見・八名川小学校校長は「かつては両親が教えたりして予復習の習慣があったが、共働きが増え、家庭での学習習慣が身に付けづらい状況。社会総がかりの教育が大切といわれるなか、外部の民間活力を導入するのは良いことではないか」という。

☆すべて一理ある。しかし、経済派がいないな。実は、問題点はたった一つ。「夜スペ」の前提は塾であるSAPIXとの連携。SAPIXはCSRやブランド戦略、あるいはPRぐらいかな、いずれにしても利益をあげることよりも投資だぐらいは経営陣は考えているだろう。

☆資本がある塾がやろうと思えばできるだろうが、そうでない塾は連携できない。藤原校長の和田中はOKだが、ほかの中学はどうだろう。

☆藤原さんなら、それはまた違う発想をだせばよいというだろう。教育に市場の原理を導入することにもなるだろうとも。しかし、そうなるとSAPIXのブランド戦略は失敗する。他のアイディアのOne of Themになるからだ。結局和田中の歯車になって終わる。企業はそれに耐えられない。市場の原理が働けばそうなる。そのときSAPIXは退却するだろう。企業は、自治体の統廃合の時間より、意志決定速いはず。

☆では誰が引き継ぐのか。結局保護者・・・。ならはじめからやればよいのでは。もっともこういう流れを作ったことが大事なのだろう。ゆさぶることには変わりがないのだから。

姫路科学館のロボット作り学校いいですね!

2008-01-26 06:42:56 | 文化・芸術
産経新聞(1月25日16時28分配信)によると、

兵庫県姫路市の姫路科学館が、小中学生を対象に開いているロボット作りの学校が成果をあげている。ここでの体験をきっかけに、理系の高校や大学に進学、なかにはロボット競技の全国大会出場を目指す高校生もいる。理科離れ、理科の学力低下が心配される中、注目を集めそうだ。(姫路支局 秋山紀浩)姫路市青山の姫路科学館では、ロボットを科学教育に取り入れる試みが行われている。2足歩行ロボットを製作するイベント「はりまロボットスクール」だ。小中学生に物作りの面白さ、科学の奥深さを知ってもらおうと開催されている。

☆この「科学の奥深さ」とものづくりの技術が融合するところを目指しているのが実によい。従来のものづくり技術には、この点が抜け落ちることが多かっただろう。

☆さらによいのは、同紙による次の記事。

同市伊伝居にある県立姫路工業高では、来年4月から新たにロボット開発技術を学習に取り入れ、部品からの開発を行う。3次元で製図して、ロボットの動きをパソコン上で再現する。レーザー加工機で精密な部品を作るなど、ロボット製作の先端を行く機械もそろえた。製図の基礎から教育プログラムに取り入れ、最終的には一つ一つの部品も自作というロボット作りを目指す。

☆ロボット開発技術体験→パソコンによる3次元製図→自作の部品づくり→経験値アップ。

☆この体験が、実際の実用力・応用力につかえる経験値アップのシフトに、パソコンとの格闘がはいっている。ここから実は科学的発想が生まれ出る可能性がある。パソコンは科学の知の結晶で、活用している間に、科学の発想のミームを受け継ぐ偉大なアナロジーだからだ。

☆すべての工業高校で、このようなロボット開発をすると、日本の未来は明るい。

ダボス会議開催中

2008-01-25 08:23:07 | 文化・芸術
NIKKEI NETによると、

世界の政財界指導者ら約2500人を集め、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)が23日開幕した。・・・米モルガン・スタンレーのエコノミスト、スティーブン・ローチ氏は「米国の消費は9.5兆ドルで中国やインドの6倍。米国の国内総生産(GDP)の5%分は過剰消費とみている」と分析、新興国が埋め合わせるのは難しいとの認識を示した。ジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授も「現状を乗り切るには米国が消費し続けるしかない」と指摘した。

☆アメリカ市民が過剰消費をするしかないというのはすごいな。やはりオイルトライアングルが世界の覇権。この魔のオイルトライアングルを解除することはできないのだろうか。

☆それにしても金融市場のメルトダウン問題が、環境問題より優先的に議論されるダボス会議も珍しいかもしれない。

☆やはり世は終末を迎えているのか。コントラクトがコベナントを駆逐するとき、信用の保証とは愛ではなく金であるということ。でもイマニュエル・カントは金が永遠平和を保障するという。もっともカントのいう金は、共通感覚のコードを意味しているのだと思う。

☆しかし、今の金融市場は欲望のコードですから。

県立並木中等教育学校の合格発表の言説

2008-01-24 08:56:40 | 文化・芸術
産経新聞(1月24日7時50分配信)によると、

茨城県つくば市並木に今春開校する県内初の公立中高一貫校、県立並木中等教育学校の合格者発表が23日行われ、男女各60人、計120人が合格した。12日の入学試験には定員120人に対し852人(男子369人、女子483人)が受験。7.1倍の狭き門を突破して“一期生”が誕生した。

☆公立の中高一貫校の入試は「適性検査」という言説・表現を使う。合格できなかった生徒は「不適性」?ということか。

☆またメディアの言説もいただけない。「狭き門を突破・・・」というのは、いわゆる入試で使うのでは。

☆公立中高一貫のタイプはあってよい。しかし、従来型はそのままにしてつくるのは政策上間違い。この競争原理は市場の原理に反する。多様なタイプがあってこそ市場の原理が働く。

☆私立中高一貫校もいろいろなタイプがある。独自の教育哲学を普及するトラディショナルスクール。大学進学実績を目標とするエリートスクール。時代のニーズと普遍的な理念を融合させ、クオリティライフを生み出すクオリティスクール。国を背負う寛容で改革型リーダーを輩出するエクセレントスクール。

☆全国学力テストをやっているのだから、すべての中学が適性検査をやってはどうか。その結果をみて、中学を選ぶ。中学が選ぶのではない。それには各中学が同質ではダメだ。特色をつくるのは当然。そのうえで、生徒と保護者側が選ぶ。もうそうい時代だろう。

☆経済活性も間違いない。