教育のヒント by 本間勇人

身近な葛藤から世界の紛争まで、問題解決する創造的才能者が生まれる学びを探して

「すばらしき愚民社会」で斜めから社会を見る

2009-02-28 08:39:44 | 
すばらしき愚民社会
小谷野 敦
新潮社

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☆徹底的に批判する態度一色の本。小谷野さんにとって、官僚近代もくそっくらえなんだろうが、ポストモダンも似非だろうと批判し、現代思想も怪しげだというだろう。

☆ポパーやラッセル的な批判的切り口でがんがん語っているので、凄味がある。ただ読後感は痛快丸かじりではない。どこかルサンチマンを感じる表現に、さわやかさが残らない。

☆読者にとって読みながら、その批判が人ごとではなく、いちいち自分に刺さってくる。痛快丸かじりってのは、やはり読者はその批判が自分のことではないなと勘違いさせてくれるのだが、小谷野さんは、そういう逃げ道が用意されていない。

☆いかに自分が妥協的生き方をしているかそう明らかにされては困りはしないけれど、今さら反省もしたくないしと。ただ、比較的≪官学の系譜≫の良心かなと思っていた本田由起子さんのような学者も、なるほど見事に批判しているのを読んで、用心しながら読んでいたつもりでも、あっ、鵜呑みにしている自分がいるというのを映し出してくれる鏡の役割を果たしてくれるのが本書だ。
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夜スペ化現象 高校にも拡大

2009-02-28 06:09:01 | 文化・芸術
☆フリースクール登校、高校通学日数に加算…文科省方針(2009年2月27日(金)18時25分配信 読売新聞)によると、

文部科学省は27日、不登校の高校生がフリースクールなど学校外の施設に通った場合、その日数を通学日数に加えることができるようにする方針を決めた。高校を卒業できずに若年無業者ニートなどになるのを防ぐことが狙い。3月にも各都道府県に通知し、新年度から適用する。・・・・・・同省によると、不登校の高校生は2007年度、約5万3000人。このうち約600人がフリースクールなどに通っている。

☆杉並区立和田中で行われた「夜スペ」。もはやこれは社会現象だ。塾やフリースクールのような学校として認定されていてない外部教育機関との接合の増殖化を学校の「夜スペ化現象」と命名できるのではないか。

☆チャータースクールやホームスクールのように、外部教育機関にアクレディットを促す現象。これが「夜スペ化現象」。藤原さんの面目躍如といったところか。もともそれを強烈に支えているのは橋下知事ということになり、結局公立の私学化現象を引き起こすという矛盾をかかえこむことになるが、それは杞憂か。
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数学を、たしかに5分で楽しめる

2009-02-26 07:16:48 | 
続5分でたのしむ数学50話
エアハルト ベーレンツ
岩波書店

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☆数学の基礎学力ってのは、本書を読める程度ではだめなのだろうか?たしかに本書で、大学入試の問題は解けるようにはならないが、それは基礎学力がないということになるのだろうか?

☆それはともかく、なるほどおもしろい。必然性というよりは蓋然性。偶然性といっても意外と操作性がはいっているかもしれないなんて確率論の話だけれど、経営にも通じる考え方。

☆数学なんて役に立たないなんてことを言う人は、今ではあまりいないだろうけれど、どこで役に立つのか実感している人も少ないだろう。かく言う私もその一人。しかし、本書はその空虚感を埋めてくれる。数学とは考えることなのだと。
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日本の教育関係者は強迫観念旺盛???

2009-02-25 03:11:21 | 文化・芸術
☆勉強時間 中国の半分なのに日本の高校生8割「きつい」 1日8時間(2月25日1時14分配信 産経新聞)によると、

日本の中高校生の勉強時間は、中国の中高校生のほぼ半分しかないことが24日、財団法人日本青少年研究所のまとめた調査で分かった。韓国の中高校生と比べても少なかった。それでも日本の高校生の約8割は学校の勉強が「きつい」と感じており、学力低下の一端をうかがわせる結果となった。・・・・・・・学校の勉強を「きつい」と感じている高校生は77・2%にのぼっており、4カ国では最も多かった。・・・・・・中高校生の約8割が、「よく疲れている」と感じていることも判明した。また、「自分は駄目な人間だ」と考えている中学生は約5割、高校生では約6割に及び、他国を大きく引き離している。

☆そりゃあ、ドメスティックな中で、みな同じことを強いられ、選択枝が少なければ、一部の過剰な競争と多くの諦めの雰囲気が漂うのは当たり前じゃないかい。社会構造と階層軋轢の社会の課題の方が大きいだろう。それでも自己責任でがんばれよというのであれば、それこそ抑圧。もちろんタフにならねばならないが、それはタフにがまんするということかな?それともタフに改革せよということかな?それともタフにエクソダス・・・?

☆ああそれなのに、当局はこんなことをいっているらしい。

同研究所では「中韓と比べて、勉強もしていないのに弱音をはいている現在の子供たちの姿がはっきりとみえた。甘えの気持ちが強いのではないか」と分析している。

☆本当に、甘えているのは子供なのだろうか???
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日本標準の学力テスト?

2009-02-24 07:58:11 | 
新しい学力テストを読み解く―PISA/TIMSS/全国学力・学習状況調査/教育課程実施状況調査の分析とその課題
田中 耕治
日本標準

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☆PISA・TIMSS・全国学力テストなどここ数年話題になっている生徒の学力を測定するテストの実態概略がわかる本。

☆おもしろいのは、教科ごとには、習熟度レベルという思考のレベルの説明に関して無視されているが、PISAの問題解決能力では取り上げられている点だ。

☆問題解決能力は学習指導要領が直接関与するところではないから、この思考のレベルについて脇が甘いのだろう。チラッと世界標準のモノサシが見えてしまっている。

☆しかし、PISAと全国学力テストの大きな差異は、前者が思考のレベルを包括的に構築しているのに、日本のテストは思考のレベルをある段階までしかカバーしていない。つまり批判的思考と創造的思考は無視している。

☆まままさか・・・。と、思うだろうが、それは学習指導要領では取り扱われない。つまり国語とか算数とかいう教科の枠内では扱わないということ。アリバイ作り的にはあるが、そんなもので包括的な思考力は養われない。

☆一般的にはその重要性は問われるが、子どもの学習時間の半分以上を占めている学校での教育では、思考のレベルが制限されている。というよりも世界標準でないという重要な点が、本書でも隠ぺいされている。

☆そりゃあ総合学習が一般的には忌み嫌われるわけだ。とにかく、これでは世界と対等にコミュニケーションがとれないなぁ。
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橋下教育改革 夜スペ度加速か?

2009-02-24 07:13:09 | 文化・芸術
橋下流学力再生(上) 7字ごと記憶…“受験テク”伝授(2月23日23時16分配信 産経新聞)によると、大阪府の橋下徹知事が打ち出した学力向上事業「おおさか・まなび舎」が着々と進んでいるようだ。

☆池田市立渋谷中学校では昨年10月末に、この取り組みをスタートさせた。 2月4日には、「学習支援アドバイザー」と呼ばれる地元の大学生や保護者以外に、家庭教師派遣業「トライグループ」(大阪)の講師3人が新たに加わったということだ。

「授業では学べない受験に対応したアドバイスが新鮮だった」。数学の文章題を教わった鈴木智大君(15)は満足げに話した。

☆西小の場合は、まなび舎とは別の課外活動「西小サタデースクール」で、塾講師が漢字と英単語を教える講座のようだ。

1度に覚える字数を7字と決めているのは、まとめて記憶する際に最も頭に残りやすい分量だから。また、覚えた後で何も見ずに紙に書き出す訓練は、記憶の定着率を高めるのに効果的なのだ。

☆ここでも授業では学べない記憶術が注目されている。

大阪府教育委員会が計画した塾講師派遣は1月に始まり、現在5市の小中学校で取り入れられている。ただ、内容は学校や自治体ごとにまちまちだ。まなび舎を想定した府教委の「ひな型」に沿ったものだけでなく、学校独自の活動に塾講師を招く西小のようなケースもある。公教育の中に「塾」をどう位置づけていくのか、現場が模索している段階といっていい。・・・・・・・府の生野照子教育委員長はこう展望を語った。「今は過渡期でしょうね。いろんなやり方を各地でやって、いい点、悪い点を検証しながら『大阪らしい形』にしていきたい」

☆「大阪らしい形」とは、おそらく制度上のことを言っているのだろうが、上記の例で、それだけではなく、もう1つ重要なヒントがあることがわかる。

☆これに気づかないと、雇用創出政策だけで終わる。それももちろん重要だが、教育の本筋を見誤るだろう。この本筋こそ経済になりうる。もっとも、そんなことより目の前のことが重要だろうから、本筋の話は、必要ないかぁ・・・。

☆少なくとも、いまここで、生徒にとっては、よいことだ。侃々諤々やっているより、今の生徒に何がやれるかだ。それは間違いない。


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全国学力テストの隠ぺいリスク

2009-02-24 06:34:36 | 
全国学力テスト―その功罪を問う (岩波ブックレット)
志水 宏吉
岩波書店

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☆全国学力テストについて、その歴史的経緯が非常にわかりやすく、まとめられている。イギリスやスコットランドのケースも興味深い。

☆そのうえで、全国学力テストの必要性の有無について、4つの視点から考察している。

1)実態把握の視点
2)教育評価の視点
3)説明責任の視点
4)競争主義の視点

☆しかしながら、この視点はもともと悉皆調査の必要のないものばかりで、はじめから全国学力テスト不要論の視点である。というよりも政策としての全国学力テストの批判である。

☆だが、子供1人ひとりの学力形成のためのデータはどうするのであろうか?これは悉皆調査の方が有益なのではないだろうか?まぁこれも何も全国学力テストという方法が唯一というわけではあるまい。

☆大きな物語や国のイデオロギー不要な時代には、やはり時代錯誤の産物ということか。端的に、税金70億円の有効活用とはいえないかもしれないのは確かかもしれない。

☆てな感じで読み終えてしまう。すると大事なポイントが見落とされることになる。全国学力テストとOECD/PISAの差異についてである。世界標準というモノサシが全国学力テストには不足しているということだ

☆それは恐ろしいことに、学習指導要領が世界標準でないという証明なのだが、そのことについては文科省側の学者は本当に触れない。禁忌なのか・・・。

☆言論の自由の制約、思考停止の目的が隠ぺいされているリスクについて、なぜ学者は語ろうとしないのか。志水教授は「学力を育てる」(岩波新書)では、きちんとそれを論じている。ただし、PISAとは結び付けていない・・・。教育学的には思考の広がりや深さを論じているが、それがこと学習指導要領の話になると、ピタリと止まる。

☆全国学力テストは学習指導要領に基づいて作られているから、実際は全国学力テストは学習指導要領問題なのである。世界標準のモノサシに到達しないドメスティックな基準で子どもたちを測ることこそナンセンスだという議論はできないということか・・・。
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鹿児島市 県こども総合療育センターを整備

2009-02-23 08:24:39 | 文化・芸術
発達障害児支援強化へ 鹿児島市に拠点施設 10年度開所方針(2月23日7時7分配信 西日本新聞)によると、

県は新年度、自閉症や学習障害などの症状がある発達障害児の支援態勢を強化するため、新たに「県こども総合療育センター」(仮称)を鹿児島市に整備する。2009年度一般会計当初予算案に施設整備費約2億3000万円を計上。10年度の開所を目指す。県障害福祉課によると、発達障害児は県内に1‐2万人いると推定されている。支援策として、県は県総合児童相談センター(鹿児島市桜ケ丘6丁目)を置き、小児科医など24人態勢で、保護者の相談対応や症状についての診断、社会適応訓練、療育指導などを行ってきた。しかし、発達障害は外見で判断しにくいため、分からないまま成長する子どもがいたり、発達障害と診断されても、その後のケアや社会復帰への支援が届かないケースが多いことから、現行の局所的な対応では不十分と判断。

☆総合療育センターの設置は歓迎だが、それ以外の社会の寛容な環境づくりも急務である。おそらくこれは技術革新によって、子どもたちの多様な状況に応ずることができるはずだ。

☆このイノベーションは、経済の活性化にもつながる。すべての市民が幸せに生きていける仕事の場の選択肢が広がるには、多様性に対応するようにすればよい。イノベーションのヒントは目の前の多様性をどう受け入れられるか考えるところに存在しているはずだ。
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村上春樹さん エルサレム賞 壁に立ち向かう卵に そしてブロガーの活躍

2009-02-23 07:29:32 | Weblog
村上春樹さんの受賞スピーチ、日本のブロガー陣がスピード翻訳 「ハルキ風」も(2月17日16時3分配信 ITmediaニュース)によると、

作家の村上春樹さんが2月15日、イスラエル最高の文学賞「エルサレム賞」授賞式で行ったスピーチが話題になっているが、日本の新聞記事やテレビのニュースでは、スピーチのごく一部しか伝えられていない。スピーチの内容をもっと知りたいと考えた日本のブロガーたちは、英語ニュースなどからより長いスピーチ文を見つけ出し、日本語に翻訳して自らのブログで紹介している。15日のスピーチの翻訳を16日までに公開するという“早業”だ。・・・・・・個人ブログは、文字数の制限や媒体としての制約が薄く、さまざまなメディアを横断して情報を集められる。引用と認められる範囲を超えた場合の原文の翻訳権の扱いなど、著作権上の問題は残るものの、個人ブログの強みが発揮されたケースといえそうだ。

☆多くのブロガーが感じたことは、メディアのシステムに立ち向かう卵の実感だったのではないだろうか。

☆システム側における個性は、個性として稼働できないが、卵側に立つ個性は、個性そのものである。システム側にからめとられない見識という基準を持ちながら、個性を重視する。新しい自分なりの大きな物語の生成。それは卵から生まれる。

☆これからは、システム側に立つか、卵側に立つか、それが問題なのだ。

*参照)日本語訳

*参照)英文
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栃木県教委のチャレンジとチェンジ 地アタマ育成にシフト

2009-02-21 08:36:34 | 文化・芸術
学力アップは家庭から 栃木県教委が冊子(2月21日8時4分配信 産経新聞)によると、

県教委は、児童と保護者、教職員向けにそれぞれ、「家庭学習の進め」と題するリーフレットを作製した。全国学力テストの成績上位県と比較すると、本県児童の家庭学習時間が少なかったとして、保護者らに意識改革を求めている。・・・・・・県教委では、「本県児童の学力向上には、一層の授業改善と、家庭学習の地道な積み上げが必要」と分析し、家庭学習の習慣化を図ろうとリーフレットを作製した。

☆「学力向上」という響きから、またまた漢字と計算の宿題でもやらせるようにというものかと思ったが、まてよ栃木県教委といえば、横断的な知こそ学力の基礎、コミュニケーションスキルこそサバイバルスキルだと考えている宇都宮大学の佐々木英和准教授の知恵が働いているかもしれないと思い、県教委のサイトを開いてみた。

☆すると、直接ではないにしろ、多くの自治体の教育のプログラムや研修、教育そのものの企画をされている佐々木准教授の思想が見え隠れしていると感じた。

☆読書・体験・対話の重要性の指摘、脳科学に基づいた生活リズムの奨励、人間関係、自然との関係づくりでモチベーション・アップをという提唱など、要するに地アタマ力づくりのすすめだ。

☆学習指導要領の言説(文言)で書かれているから、何が画期的なのかわからにようにできているところも、したたかだ。

☆しかも、自己判断・選択判断の際に必要な自分なりの基準・準拠をどうやって創るのかについては、触れていない。ここは哲学だし、宗教的な仕掛けが入り込むから、しっかり排除している。

☆判断基準の形成は、個人の学びの中で形成されればよいという憲法に即したリーフレット。ここが私立学校と公立学校の違いだが、ぎりぎりまで本来の私立学校の教育にせまるプログラムを想定している。

☆≪官学の系譜≫の良心が栃木県教委にあるとするならば、それはおそらく佐々木准教授のおかげだろう。

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