教育のヒント by 本間勇人

身近な葛藤から世界の紛争まで、問題解決する創造的才能者が生まれる学びを探して

海外の教育を本当に役立てるために

2007-12-31 13:00:22 | 文化・芸術
読売新聞(2007年12月28日)によると、

諸外国の教育制度を紹介した本への関心が高まっている。特に、人気があるのは、留学や海外での子育ての体験に基づいた著作。海外の優れた教育システムを参考にしたいと考える教師や、保護者たちの支持を集めているようだ。・・・丸善・丸の内本店(東京都千代田区)の教育書コーナーには、イギリス、アメリカの教育を紹介する本も並ぶ。担当の工藤吉隆さん(48)は「学力低下が懸念される中、他国の成功事例を参考にしたいという思いがあるのでは」と話している。

☆遣隋使、遣唐使のころから、私たちの国は、海外の文化や学問や教育を学んできた。しかし、一方でそのやり方は、ときにプロクルステスのベッドになってきたことを忘れてはならない。

☆同紙では、立教大2年の実川真由さん(20)が、「高校時代の2004年8月から10か月間、フィンランドの首都ヘルシンキの高校に留学した 」ケースを載せている。もったいない。今の制度では74単位のうち30単位しか留学で単位を獲得することができない。だから、10か月で帰国したのだろう。

☆もし、74単位全部獲得できる留学制度ができたらどうなるだろう。留学でもっとも大事なのは、語学とか文化の表層を日本に持ち込むことではない。

☆人脈なのだ。社会関係資本を蓄積できることなのだ。それには1年間では無理だろう。これは同時にクリエイティブ人材資本の蓄積にもなる。

☆海外の教育リソースを活用できる教育法制度の整備をするべきだろう。教師の増強にお金をかけるのではなく、生徒に直接費用を活用する方が効果的だろう。

☆「政府系海外留学ファンド」でも組み立てたると一石百鳥なんだが。

2008年は社会関係を変えること

2007-12-31 08:33:56 | 文化・芸術
時事通信(12月28日17時30分配信)によると、

うつ病などの精神性疾患で2006年度中に病気休職した公立学校教員が、4675人と過去最多を更新したことが28日、文部科学省の調査で分かった。前年度より497人増え、10年前の約3.4倍に達した。保護者や子どもとの関係で悩みが高じたケースなどが多いとみられる。・・・各教育委員会に原因を聞いたところ、保護者や児童生徒との人間関係の悩み、多忙によるストレスなどが原因との回答が多数を占めた。各教委はメンタルヘルスの研修を充実させたり、復職支援のためのプログラム策定などに取り組んでいるという。

☆「保護者や子どもとの関係で悩んでいる」「多忙によるストレス」とあるが、これは学校組織がつくりだす人間社会関係がそうさせるのである。

①学校組織の目標が人間形成というのは口ばかりで、受験が目標になっている。
②組織の人間関係がフラットではない。
③組織の人間関係が責任転嫁型になっている。
④非合理的会議体が多い。
⑤ICT・携帯の業務内での活用が遅れている。

☆このような学校組織が変わらないのに、「メンタルヘルスの研修を充実させたり、復職支援のためのプログラム策定」したりしても、結局がまんしろ!というベクトルは何ら変わらない。

☆以上の「学校組織」を「日本政府」「日本の官僚」「日本の企業」「日本の家庭」などと置き換えても、状況は同じだろう。日本の組織は同心円を描くように同構造なのである。

☆このような日本の「社会関係資本」は、世界標準に照らし合わせれば、その価値が減っていることは間違いない。

☆上記の5つのポイントを転換して、はじめてメンタルヘルス研修も復職支援プログラムも役に立つというもの。

①学校組織の目標は受験(20世紀型人材育成だったのだ)ではなく、クリエイティブ人材資本形成。
②組織の人間関係は責任の所在を明確にしたフラット化へ。
③組織の人間関係は、1人ひとりがリーダーシップを発揮できるRPG型へ。
④合理的会議体の促進。
⑤ICT・携帯の業務内での活用の促進。

☆現状の法規制の中でも以上のことは可能。受験と人間形成が違うというのは矛盾していたのだということに気づけば動くだろう。受験は20世紀産業社会を支える人的資本形成の目標。人間形成も実は同じだったのである。

☆日本の多様な組織は同構造。だから学校組織が変われば、その波及力は大きい。2008年、学校組織が変わることを大いに期待したい。

ロシアの後継者作戦

2007-12-30 05:34:34 | Weblog
「プーチン首相」は官僚出身の大統領をどうするつもりか――フィナンシャル・タイムズ(1)(フィナンシャル・タイムズ) - goo ニュースによると、

まだまだテレビカメラの前ではぎこちないメドベージェフ氏は、憲法の規定で来年任期切れとなるプーチン大統領を、新首相として政権に迎える方針を表明。プーチン氏はただちにこれを了承しなかったが、10月の時点ですでにその意志があることを明らかにしている。

☆すでに多くのコメンテーターが言っているように、2008年以降もプーチン・ロシアがひき続く。民主主義的な見方からすれば、実質危ういが、形式手続き的には民主主義的である。つまり、

モスクワのマスコミが「後継者作戦」と呼ぶこの一連の動きは、ロシアの民主主義の本質をむきだしにする。ロシアの民主主義とは、クレムリン内のごくごく少数の権力者たちが集って決めたことを、形式的にお墨付きを与える手続きに過ぎなくなってしまったのだ。

☆今回の「後継者作戦」は、様々な見方や感じ方が、国内外にあるようだが、おそらく民主主義の前に、大企業ロシアのベクトル作りに関心が高いだろう。大企業としてのロシアだから、グローバリゼーションの中で、CSRが市場経済で問われる。民主主義国家としての役割を果たすことがCSRの一要素だとしたら、大企業ロシアは、それを取り入れ、パフォーマンスを高める。それだけだろう。国家間の政治闘争は、ロシアはベルリンの壁崩壊後、捨てた。国家内の政治権力闘争は、大企業内の権力争いに過ぎない。

ロシアのヘッジファンド、ファロス・フィナンシャル・グループは投資家たちに対して、メドベージェフ氏の大統領就任は「プーチン政権の功績を明確に固める一助となり、西側から見たロシアの地位を復活させることとなるだろう」とコメントを発表。「一党支配の国であることに変わりはないが、今のロシアはむしろ、日本やメキシコ、スウェーデンなど、同じような政治調整の時期を経ていった国々の系譜に連なるといっていい」としている。

☆ロシアの地位の復活という見方は正しいし、ファイナンシャリストにとっても、ロシアの安定は大事だ。しかし、その安定は政治安定ではない。経済の安定だ。結果政治が安定するというだけ。

☆だから、日本やメキシコ、スウェーデンの系譜だと語っているのだろう。ただし、日本はこの系譜にはないのではないか。国家がグローバル市場の原理の中で、企業として行動することはなかったし、これからもない。

☆2008年、それでは困るのだけれど・・・。欧米も、BRICsも国家の根本は商業精神。やはり「プロテスタンティズムと資本主義」が先鋭化していくのに、日本は逆走してどこに行こうとしているのか。

マータイさん落選の意味

2007-12-29 19:55:48 | 文化・芸術
読売新聞(12月29日19時37分配信)によると、

ケニアの地元テレビは28日、ノーベル平和賞受賞者の女性環境活動家、ワンガリ・マータイ氏(67)が、27日投票の議会選(改選議席210)で落選した、と報じた。・・・04年には、長年にわたる植林活動などを評価され、同賞を受賞した。しかし、高まる世界的知名度とは裏腹に、「地域のために何もしてくれない」と地元の支持が揺らいでいた。

☆グローバリゼーションとローカリゼーションの統合の難しさを痛感する。日本の教育においてもそうだ。世界標準なんて関係ねぇ!という声も大きい。

☆それからノーベル平和賞、だから何という、これもフラット化か・・・。誰も何も尊敬し合わない。尊敬と寛容は表裏一体。

☆企業もそうだ。できるだけクリエイティビティにお金をかけないようにするところは寛容性がなくなる。尊敬し合わなくなる。経営陣の横暴とそれを指摘するスタッフの消失。消失せずいたとしても口を閉ざす。雰囲気がどんどん悪くなる。

☆それでも楽しくないことには目を閉じながら一見良い感じだけは流れていると錯覚する経営者と管理職。そんな企業、そんな学校、そんな自治体、そんな国からは脱出する以外に方法はないのか・・・?

☆それでもブット元首相は闘った。冥福を祈る。

東大の経済・金融政策?

2007-12-29 15:40:27 | 文化・芸術
読売新聞(12月29日3時7分配信)によると、

東京大学病院(東京・本郷)が初めて、人気少年誌「週刊少年サンデー」(小学館発行)で今月連載が始まった医療マンガ「最上(さいじょう)の命医(めいい)」の監修を自ら買って出た。・・・同病院は2004年の独立法人化以後、病院に親しみを持ってもらおうと、ドラマのロケ地として院内施設を貸し出している。また「1リットルの涙」(フジテレビ系)などのドラマについては、院内の専門医が、ストーリーに医学的な間違いがないかどうか監修してきた。

☆東大は、最近リソースをお金に交換する活動が顕著だ。グローバリゼーションの時代の流れにのったということだろう。

☆国際教育研究家の岡部憲治さんも、この点に興味を持っている。

*参照→「東京大学 学生の意識。。。 うーん。。。」

朝日新聞の読者信頼度3位に

2007-12-28 14:32:20 | 文化・芸術
朝日新聞の「読者信頼度」が3位に転落(ファクタ) - goo ニュースによると、

朝日の「信頼度」が、日経と読売に初めて負け、3位に急降下した。読売との販売競争や日経とのスクープ合戦に負けても、その言い訳は必ずといっていいほど「読者の信頼は朝日が一番」だっただけに、傷は深い。

☆時代の流れは、やはり学歴社会ではないようだ。大学入試問題に出題される朝日新聞は信頼度が低くなっているのだから。

☆政低経高時代、やはり金ベースの記事中心の日経新聞、人的資本の育成、つまり医療と教育の記事が充実している読売新聞のほうが信頼度を得るということか。

PISAだけではなくGDPも転落

2007-12-27 08:19:49 | 文化・芸術
日本GDPは4兆3755億ドル…1人あたり18位に下落(読売新聞) - goo ニュースによると、

内閣府が26日に発表した国民経済計算によると、2006年の日本の1人あたりの名目国内総生産(GDP)は前年比4・0%減の3万4252ドルで、経済協力開発機構(OECD)30か国中18位となった。フランス、ドイツ、カナダに抜かれ前年の15位から順位を下げた。円安の影響でドル建てのGDPが目減りしたほか、デフレにより名目GDPの伸びが低迷したことが原因で、1人あたりの名目GDPは93年の2位をピークに下落基調を続けている。

☆自動車など基幹産業を支えるあまり、ドル安は一人当たりのGDPを転落させたということか。

☆産業資本、金融資本、クリエイティブ(人材)資本、社会文化資本の資本バランスが、日本はよくないということ。

☆PISAの転落は、ある意味クリエイティブ資本の転落に通じる。クリエイティブ・クラスの生き方はICTとファイナンシャルプランは当り前だから、ここがうまく成長しなければ、金融資本もうまく成長しない。日本の社会文化資本は潜在的にあるが、クリエイティブ資本が思うように成長しないから、爆発しない。

☆観光立国になるには、社会文化資本のオープンな組織化が必要。すると、そこには金融資本とクリエイティブ資本がポイントになる。

☆そのポイントでパワーが減退。日本の資本構造の再構築が肝要ということか。

教育再生会議第三次報告の評判

2007-12-26 13:06:21 | 文化・芸術
☆教育再生会議の第三次報告がまとまったようだ。教育の本来性や倫理ある市場の原理の検討がなされていないという点を私は述べてきたつもりだが、表層的なところでも、マスコミの批判はすさまじい。

☆ここまでいうかというのもある。

たとえば、

○信濃毎日新聞→教育再生会議 底の浅い提言が また

○中日新聞→教育三次報告 できる子ばかりでない

○産経新聞→【教育再生会議】福田政権で尻すぼみ、「総花提言」に

○北海道新聞→教育再生会議 役割は終わったのでは

☆政権が変わってからというもの、歯に衣着せぬ言い方に問題はないのだろうが、非難ではなく、批判的精神を旺盛にしてもらいたいなあというのは、日本流儀ではないかぁ^^);

悲しみ・苦悩・怒りをいかにして乗り越えるか

2007-12-26 06:18:50 | 文化・芸術
☆世界各地のクリスマスを祝う報道とイヴに自らの命を絶つ青年の報道。その青年の悲痛な思いを了解できぬ深き溝の前で、途方にくれるのは私ばかりではないだろう。

☆家庭や世界の平和を祈るクリスマス。イエスの誕生は、人類の救いを成就するため。しかし、一方で信仰なき人間を救うことはないのだ。このジレンマ。結局自ら自らを救うことができないのだろうか。

☆クリスマスの状況が、インスパイアーさせることは、本来の学びのことだ。学力をアップすることでも、私立学校に合格するためにでも、良い大学に入るためにでも、本来ないはず。それらは進路やキャリア・デザインの過程の点なのではない。自らを自ら救う道行きの途中に過ぎないということだったのだ。

☆本来性が日常の行為の影としえ映し出される瞬間。それがクリスマスの状況なのかもしれない。

☆受験のために詩を読む瞬間。しかし、その日常行為の影は、自らを自ら救うサポートをする他者を映し出す。人はひとりではないとは、本来この影に気づくことだったのかもしれない。

☆自ら自らの命を絶つために、1人孤独になったとき、彼を救うのは、その影だったのかもしれない。私たちはあまりに光の学びを強要しすぎてきたのかもしれない。明らかになることは、影を消しさる。

☆自らを自ら救うためのプログラムなど、そう簡単にはないだろうが、せめて影を映し出すプログラムはできないものか。

心臓のビートを聴きなさい。Listen to a heart beat.

☆オノ・ヨウコの詩だ。影を映し出す詩に耳を澄ましたい。はたしてそれで自らを自ら救うことなどできるのだろうか。教育や学びの本来性に耳を澄ます。煮えたぎる心の器を冷ますには、私たちは何ができるのだろうか。心の言葉の影を映し出せる体験。その体験をいっしょにしたい。それでも、解けることのない問題なのだろうが・・・。

イラク 米国雇用兵問題

2007-12-25 07:53:00 | 文化・芸術
Washington Post Foreign Service Monday, December 24, 2007によると、ブッシュ政権が、様々な問題をかかえる民間雇用兵の問題を見逃していることが問題になっている。

☆民間雇用兵は、報奨金がインセンティブになって動く。倫理の問題、財政の問題がかさむ。

☆そもそも民間雇用兵は国際法上、兵士なのか?民間雇用兵を採用するのは、private security firms で企業。ペンタゴンと企業の癒着なども憶測される。日本の防衛省の問題だけでもすごいのに、イラク問題でも同様のことがおきているとしたら、どれほど大きな問題か。

☆民間企業といっても、戦争はマーケットではない。倫理なき市場は市場ではないのだ。

☆それにそれに重要な点は、このprivate security firms に流れる金は、直接は米国からでも、日本をはじめとする協力(というべきかどうか?献上しているというべきか)国のサポート費も間接的に流れているといってよい。

☆市場の原理を批判する前に、補助金体制がいかに酷い事態を生むか考えるべきだし、市場から見てイラク戦争の持続は間違いであることを、市民が考えられる基礎学力をつけなくては。それこそが教育再生、教育改革の肝だろう。