教育のヒント by 本間勇人

身近な葛藤から世界の紛争まで、問題解決する創造的才能者が生まれる学びを探して

英語必修化反対は日本人のアイデンティティ?

2006-04-15 20:29:09 | パラダイム
◆4月6日「ホンマノオト」本シリーズで「戦略的に英語教育を小学校からやるのは大いに結構。しかし内生的成長の仕掛けとしての哲学がないまま実行されれば、結局英語でビジネス会議や国際会議でリーダーシップを発揮できる人材を輩出できない。となれば英語教育は経済と結びつかない。教育と経済を結びつけるのは結局哲学。これはたいへん困った。何せ日本人は無思想が大好き。これが固有の日本人のアイデンティティ。戦略的に教育政策を実施していくと、ここに行き着くわけだから、なんともしようがない。も解消されているはずではあるが」と書いた。

◆ 石原慎太郎知事は6日の首都大学東京の入学式で、「中央教育審議会の専門部会が小学校高学年での英語の必修化を提言したことに関連し、『日本で一番バカな役所は文部(科学)省。あれはまったくナンセンスだ』と批判したという(毎日新聞4月7日朝刊)。

◆ その理由は同紙によると「日本人がものごとを考えるのは、やっぱり日本語で考えざるをえない。日本語のもたらす語感、日本人独特の感性、情緒を皆さんが持たなければいけない」ということらしいが、日本人のアイデンティティを英語で書いたのは新渡戸稲造や内村鑑三ではなかったか。英文学を研究して豊かな日本語で小説を書いたのは夏目漱石ではなかったか。アイルランド人でありながら日本文化を日本人以上に理解し、文学に仕上げたのは小泉八雲ではなかったか。八雲は美しい日本語を創りあげた上田敏や小川未明に多大な影響も与えたのではなかったのか。

◆ 英語を学ぶと国語力が低下するなどというのは、何も考えていないから出てくる虚言である。しかし、この考えないというのは日本人のアイデンティティ。石原知事は日本人のアイデンティティをちゃんと持っているということを言いたかったのであろうか。

◆ それにしてもいつものパターン通り、考えない教師がまたまたあらわれた。毎日新聞(4月15日)によると、中央教育審議会の外国語専門部会が示した「小学校高学年で英語を必修にする」という方針に対し、「現場の教師は『発音に自信がない』と尻込みし、自治体教委は『親のプレッシャーが強まる』と不安を募らせ」ているという。

◆ 一方、教育産業は大歓迎。「最大手NOVA(大阪市中央区)は99年に小学生の教室を全国展開し、2000年には外国人指導助手の派遣も始め」ていて、「広報担当者は『英語の必修化でマーケットは確実に広がる』と期待する」ということのようだ。語学スクールの市場規模は04年度約3600億円らしい。日本における教育と経済の相関は、かくしてここでも乖離している。

◆ それにしても正しい英語の発音とは何だろう。「フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』」によれば、「英語を第一言語としている人の数は3億4千万人程度にすぎず、言語人口第1位の北方中国語(約9億人)には遠く及ばない。しかし英米による覇権により、英語が最有力の言語となり、第二言語 (English as a Second Language; ESL) として用いる人口は約6億人に上る。外国語 (English as a Foreign Language; EFL) として英語を学習・使用する人も多い。そのため、世界各国でイギリス方言・アメリカ方言などの英語の枠組みを超えた『新英語』が出現するようになった」とある。

◆ 何が正しい英語の発音なのか、実際のところはわからないということだろう。かりにイギリス英語が正しいとしても、英語を話す人口の17%弱しか活用されていない。正しい英語の発音を話すことなど、無意味である。

◆ プレッシャーとはこれまた何だろう。閉鎖された島国組織の中でこそ、抑圧が生まれる。外部の空気を入れるのにこしたことはないはず。外国の人々とコミュニケーションが取れた方が逆にプレッシャーは解消される。

◆ 結局またもや市場の原理に英語教育は救われることになるのだろう。市場の条件の1つはオープンであること。それぞれの市場の価値尺度の差異が利益を生む。利益はイノベーションに投資する。再び市場は活性化するというわけだ。金融教育をやっている割には、市場の原理を忌み嫌う教育とはいったいいかなるものだろう。

◆ この点に関しては、石原知事の発言は正しい。文部科学省は「日本で一番バカな役所」なのだ。ただし、この表現が石原知事の言う「日本語のもたらす語感、日本人独特の感性、情緒」であるかどうかは疑問である。日本語の品格としてかなうかどうかは、「国家の品格」の先生に聞いてみたいものである。

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