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生活保護の就労支援、1億2000万円が無駄に - 40万人もの「稼働層」が給付依存で立ち直れない恐れ

2012-10-17 | いとすぎから見るこの社会-雇用と労働
厚生労働省が生活保護受給者の調査を進めており、
案の定だが深刻な実態が明らかになってきた。

今すぐ生活保護の就労支援を徹底改革し、
稼働層の生活保護受給を有期制に強制転換するとともに
強力な積極的雇用政策を展開しなければ悲惨な状況になる。

我が国の生活保護はカバー率が低いのに金額が高い不公平な制度で、
異常なほど給付依存を高める点でモラルハザードの典型例である。

いま稼働層をこの劣悪な制度に依存させてしまったら、
彼らの問題は長期化し、二度と立ち直れなくなる。
我が国では就労状況が健康に影響することが分かっているからである。

彼らの健康状態が損なわれ自尊心も損なわれるだけでなく、
長期受給の実態と医療扶助の負担増が明らかになり、
生活保護受給者への目が一層厳しくなるのは必至である。
何を言っても開き直りや利得への固執と見られるようになる。


↓ 当ウェブログが昨年「反貧困運動は冬の時代を迎える」と予言した通り

反貧困運動は、もう世論の支持を期待できない - 生活保護の期限設定にも医療扶助見直しにも強硬に反対
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/5923b5e80c3c104b1482e391d9fd0ef5

▽ 日本の生活保護制度は、受給依存度が極めて高い

『NHKスペシャル 生活保護3兆円の衝撃』


当ウェブログでは北欧の政策を参考に以下のような提言を行った。

○医療扶助の詳細な内容を病院・診療所ごとに公表すべき
○マイナンバー制度を生活保護受給者とその家族からまず適用すべき
○「受給しやすいが継続はされず、就労支援に重点を置いた給付」が必要
○職業訓練を義務づけ、職業斡旋の拒否に制限をかけるべき
○福祉など慢性的に人不足の分野で給付付き税額控除の適用を急ぐべき

他に積極的雇用政策として、環境税をコージェネやヒートポンプ等の省エネ分野、
木質バイオマスの補助予算として移転して雇用を増やすことも必要だ。
とにかく生活保護改革と同時に雇用を増やさなければならない。

↓ 参考

生活保護問題の本質は、不正受給ではない - 制度そのものが根本的にモラルハザードの誘因になっている
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/76c753904f5061e225ad6168f0084ca5

▽ 北欧は社会保障給付にも課税し、職業斡旋の拒否ができない厳しい監視社会

『スウェーデン・パラドックス』(湯元健治/佐藤吉宗,日本経済新聞出版社)



増える生活保護受給者「2割が働ける」 厚労省推計(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS0402H_U2A900C1PP8000/
生活保護の受給者約210万人のうち、高齢や病気ではなく働ける人が少なくとも40万人に上ることが厚生労働省の推計で明らかになった。2008年秋のリーマン・ショック以降の景気低迷で、職を失った若い世代が生活保護に流れ込んでいることが背景にある。厚労省は就労支援の取り組みを強化することで、生活保護からの脱却を促していきたい考えだ。〔以下略〕”

この状況になってからもう既に2、3年は経過している。
今年か少なくとも来年迄に手を打たないと重症になる。


生活保護の就労支援、36%があきらめ・流用(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20121016-OYT1T00076.htm
”生活保護の一種で就労に必要な資格を得るための「技能修得費」について会計検査院が調べたところ、23都道府県で2009~10年度に給付された約1万3500件のうち、約36%の約4950件(計約1億2000万円)で、受給者が資格の取得をあきらめるなどし、就労に結びついていなかったことが分かった。
 検査院は同費がより有効に活用される仕組みの構築を厚生労働省に求める。
 過去最多を更新し続ける生活保護受給者の増加を食い止めるためには就労支援が欠かせず、検査院は、全国で09、10年度に支給された技能修得費計約1万8000件(計約9億6000万円)のうち、23都道府県の約1万3500件(計約6億9000万円)を調べた。その結果、資格を取得していなかったケースが約1270件に上ることが判明。試験で落ちたケースもあったが、約半数は授業や研修を受けるのを途中でやめていた。分割で納める授業料を最初だけ支払い、大半を使い込んだ悪質なケースもあった。
 また、資格は取ったものの、就職していなかったケースが約3680件に上った。厳しい雇用情勢もあるが、就職活動を十分行わず、繰り返し同費を申請するなど、自立への意思が十分でないケースも目立った。

高齢化要因を無視して就労支援の効果を誇大視している観はあるが
概ね就労支援の実態をよく捉えている。

このような惨状に陥る最大の原因は、
「悪意の制度利用者」を放置して誤ったインセンティブになっていること、
(就労した者に利得を与え、制度悪用者にペナルティを与えることが必要)
労働市場を真面目に分析し毎年の成果を検証することなく
予算消化のため漫然と就労支援を続けているためである。

▽ 北欧は常に厄介なモラルハザードとぶつかり、制度を手直ししてきた

『福祉国家の闘い―スウェーデンからの教訓』


就労支援はディテールが重要で、最初から成功するものではない。
毎年毎年欠かさず労働市場の変化と就労支援の成果を分析し、
より良い方向へ改善してゆかなければならない。
民間企業やNPOが良いノウハウを持っていたら活用させてもらうべきである。
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