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「高齢化が日本の成長率を最も押し下げた」- デフレ脱却も成長に結びつかず、アベノミクス効果は期待薄

2013-05-22 | いとすぎから見るこの社会-少子化問題
英HSBCのエコノミストがアベノミクスの効果を否定し、
成長率を押し下げた最大要因が高齢化という構造問題であるため
「それほど効果がない可能性が最も高い」と語ったと言う。

これは経済学の理論から見て完全に予想できる話であり、
労働投入が急激に減ったら成長率が下がるのは当たり前である。

今話題の『中国台頭の終焉』では重要な指摘があり、
人口オーナスの恐ろしさを示すデータが掲載されている。

その数値は今世紀の日本の事例である。
日本は生産年齢人口の一人当たりGDP成長が先進国中で最高水準であるにも関わらず、
実質GDPの伸びは逆に、先進国最低になってしまっている。
これが何を意味しているか、誰でも分かることだ。

▽ こちら参照

『中国台頭の終焉』(津上俊哉,日本経済新聞出版社)


何度でも繰り返すが、短期的には北欧並みの女性就労率の向上、
中長期的には出生率の改善がなければ日本経済に未来はない。
「育休3年」などと呑気な世迷い言を吐く余裕は、数年もすれば消し飛んでしまうだろう。

当ウェブログが何度も指摘している通り、
人口減少と高齢化で毎年5兆円もの経済下押し効果
があるのだから、この重しの下で経済成長率が高まると妄想する方がおかしい。
しかも日本の倍化年数(高齢化の速度)は世界最悪なのだ。

↓ 参考

高齢化で衰退する日本、成長率は年マイナス1.2%、労働生産性は0.2~0.4%下押し - 日銀の試算
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/f4f97a7872a2668da0770f0767a1ca39

少子高齢化で日本が先進国から脱落する日 - 2030年以降マイナス成長、一人当たりGDPで韓国に敗北
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/9130d6d3ae6d51f2a73cf900559123fc

▽ 高齢化・世代間格差の拡大によって経済成長率が低下している

『世代間格差:人口減少社会を問いなおす』(加藤久和,筑摩書房)


アベノミクス、効果は疑問=賃金上昇ない可能性も―英エコノミスト(時事通信)
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2013052000576
”【ロンドン時事】英金融大手HSBCの主任エコノミスト、スティーブン・キング氏は20日までに、時事通信とのインタビューに応じ、安倍晋三首相が進める大胆な金融緩和や積極的な財政出動を軸とした経済政策「アベノミクス」について、「それほど効果がない可能性が最も高い」との見解を示した。
 同氏は、日本経済の長年にわたる不振の原因は「マクロ経済的な刺激策の不足だけではない」と分析。「急速に進んだ社会の高齢化が最も明白に成長率を押し下げた」とし、こうした構造問題は「短期的にはそれほど変えられない」と語った。
 またキング氏は、アベノミクスの結果で次に考えられるケースとして、デフレ終結には成功するものの経済が成長しない可能性を挙げた。同氏は「インフレと成長の関連は想定されているほど強くない」とし、「物価上昇効果は出ても、それに応じた賃金上昇に結びつかない危険がある」と警告した。
 その上で同氏は、「賃金の上昇がなければ、経済の回復は得られない」と強調。安倍首相が企業側に賃上げを要請していることは重要としたものの、賃金上昇は企業の投資意欲減退を招くなど、「リスクも含まれている」と述べた。”

この分析が的確であるのは、高齢化の成長率引き下げ効果だけではない。
日本国内のリフレ教「信者」はデフレ脱却で経済回復すると妄信しているが、
根拠に基づかない楽観に過ぎず、はっきり言えば妄想である。

日本における成長率と物価上昇率の相関性を丹念に見ていけば
安直なリフレ万能論が誤りであるのは明白だ。
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