みんなの心にも投資 … ソーシャルインベスター(社会投資家)への道

個人投資家の”いとすぎ ”が為替・株式投資を通じた社会貢献に挑戦します。すべてのステークホルダーに良い成果を!

日本企業の収益は海外企業買収と配当に使われる、労働者には「お情け」程度 -「製造業の国内回帰」も虚妄

2015-03-09 | いとすぎから見るこの社会-全般
基本的に、賃上げを企業に求めるのは間違いだ。
企業自身が賃上げするのは人材確保・定着のための手段であり、
経営合理性に基づかない賃上げは愚劣であるし持続できない。

日本企業が「六重苦だから海外に出る」というのも大間違いだ。
(高度成長期の税率の重さすら忘れた病気である)
あれほど事業環境が悪い中国に企業が進出するのは「成長市場だから」である。
あれほどインフラの悪い新興国に企業が進出するのも「成長市場だから」である。

従って、政府が企業に賃上げを求めるというのは大根役者による三流芝居に過ぎず、
国内市場を成長させることで雇用を改善させるのが本道である。

正しい人口政策を採り、税制による所得移転で女性就労率を強制的に引き上げ、
エネルギーロスに課税して省エネ産業を伸ばすことで確実に内需は伸びるが、
そうした政策を考えることができないし、実行することもできない政治が問題の元凶である。

これは大本営発表を垂れ流すメディアも同罪で、
「円安で製造業が国内回帰」などと針小棒大に報じるメディアは
日本企業の実態を全く理解せず、政府や財界の広報係に堕している。

製造業は過去20年一貫して雇用を増やしていない。
内需が伸びない国内に本格的な新規投資を行うことも殆どない。

「例外」を過大評価して中長期のトレンドを見ないメディアは
こうした厳然たる事実を糊塗し、国民を面と向かった欺くものである。

▽ 企業の海外直接投資比率は急増しており、円安でも低下していない

『週刊エコノミスト』2015年 3/17号


自民党政権の言う「成長政策」は「大企業の成長政策」であり、
大企業からカネを貰っているので彼らに稼がせているというだけの話だ。
このような腐った国の成長率が低迷するのは当然である。

「自民党の自称「成長戦略」など成功したためしがない」

「減税は過剰貯蓄を誘引するだけで経済成長に結びつかない」

「日本企業の収益は向上してもその恩恵は一部の株主や企業に集中し、
 国民全体は豊かにならない。企業収益と賃金統計を比較すれば明白である。
 恩恵を受ける人々は公益と私益を混同し、自己の特権を当然視して同胞を蔑視している。
 成長政策と偽称して実際には自らへの利益誘導を公然と行っている」

「日本の成長率向上を妨害する強力な要因の一つは、大企業の利益誘導行為である」

と繰り返してきた当ウェブログの主張は、矢張り事実で証明されている。

「失われた20年」でも金融資産が急増した理由は、高齢層バラ撒き・減税・レントシーキングである

『「新富裕層」が日本を滅ぼす』(武田知弘/森永卓郎,中央公論新社)


元々不健全だった日本経済が、安倍政権になってから益々ひどくなっている。

「日本のGDPや国民所得は停滞しているが、企業収益は伸びている。
 両者はディカップリングする時代になったのである」

「我が国では、次代へ災厄をもたらす愚劣な財政ファイナンスと通貨切り下げで
 金融業と輸出企業は大いに儲かったが、国民は貧しくなった」

「それも当然の話で、金融業と輸出企業の儲けは何ら努力ではなく、
 日本のGDPがドル建てでおよそ2割も減ったため、
 (日本国民がおよそ100兆円ほどは貧しくなった計算になる)
 その分が金融業と輸出企業に集中的に流れ込んだ結果である」

「自力で稼いでいないのを何よりも自ら自身が理解している企業は、
 自民党に政治献金で報いるという「汚い取引」を急増させている」

「彼らが「経済活性化」「経済成長」と言ったら、
 それは「自分の稼ぎ」「自社の利益」を意味すると考えた方が正しい」

「OECDは日本の経済成長率が1%以下の低迷を続けると予想している。
 政治と大企業が癒着して利益を山分けしている「次元の低い」社会では、
 健全な経済成長ができないのも寧ろ当たり前であろう」

ただ経済政策のリテラシーが極端に低いだけでなく、
レントシーカーと癒着して彼らに利益誘導を行っているのだから悪質である。

 ↓ 参考

日本のGDPは20%縮小し、大企業と自民党にカネが流れた - 利権政党が受け取った政治献金は急増
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/515ddaf2dac80644bde27a26f5085763

法人減税分の資金の使い道、1位は「内部留保」- 次元の低い「成長戦略」は所詮この程度
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/b05cdada9cec55a50f2d43ab46a65b79

「六重苦」は日本企業の醜悪な二枚舌 - 円安でも進む海外生産、内部留保は1年で6兆円も急増
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/9cf3dc1afa84673f7b3a99479d771008‎

▽ 大企業や富裕層は、自分達の利益が公益であると自己洗脳している

『グローバル・スーパーリッチ: 超格差の時代』(クリスティア・フリーランド,早川書房)


麻生財務相が批判した企業の内部留保 貯め込む理由とは何か(ポストセブン)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150219-00000001-pseven-bus_all
”安倍晋三内閣は、重箱の隅をつつくように部下の仕事を管理・干渉しようとしていると大前研一氏は繰り返し批判している。そのため、成長戦略の政策が的外れになっており、日本経済の実態を理解していないため麻生太郎財務相による企業の内部留保批判が飛び出した。この内部留保批判が、いかに的外れな指摘なのかについて大前氏が解説する。
 * * *
 麻生太郎財務相は企業の内部留保が約328兆円に膨らんでいると指摘した上で、内部留保を貯め込んでいる企業を「守銭奴」と批判し、利益を賃上げや設備投資に回せと要求した。
 その翌日になって、「内部留保の積み上げはデフレ不況と闘っている中で好ましいとは思わない」「利益が出れば賃上げや配当、設備投資に回すのが望ましいという趣旨だった」などと釈明したが、財務相にしてからが、なぜ日本企業が手元資金を使わないのか、使う気にならないのか、何もわかっていない
〔中略〕
 今後の日本の国内市場は人口減少や超高齢化と少子化、さらに私が何度も指摘している「低欲望社会」の広がりによって、成長の余地が極めて小さく、ブルーカラーの労働力不足も深刻化する一方だ。このため企業は、もはや国内市場での「オーガニック・グロース(有機的成長=自力成長)」には限界があると感じているし、そのアイデアもない。
 また、企業は政府に設備投資をしろと言われても、円高が進んだ時に多くの工場を海外に移してしまったから、国内では設備が余っている。人員も設備を海外に移したペースでは削減できていない。したがって円安になって国内生産を増やすとしても、新たな設備投資をしたり従業員を新規採用したりする必要はない。
 このところの円安で一部の日本企業が国内に回帰しているという報道もあるが、私が知る限り、その大半は休んでいた工場を動かして余っていた人員を戻し、足りない分は臨時工で補っているというのが実情だ。
 となると、日本企業が成長戦略を描けるのは海外しかない。しかし、海外で自前の工場と販売網をつくった日本企業が成功した例は非常に少ないので、経営者は海外でのオーガニック・グロースも難しいと感じている。
だから、多くの日本企業が、海外でのM&Aグロース(企業買収による成長)を目指さざるを得なくなっている。
 つまり、グローバル展開している日本企業にとって死活的かつ最も手っ取り早い成長戦略は、外国企業のM&Aであり、そのためには巨額のキャッシュと3%配当の準備が必要となる。だから、それに備えて多くの企業が内部留保を蓄積しているわけだ。〔以下略〕”

最近のメディア大手は安倍政権の鼻息を窺った情けない報道が多い。
企業経営の合理性から言えば、この大前氏の指摘が最も正しい。
企業収益が一般国民に還元されことがあってもそれは「言い訳程度」でしかない。


日本・製造業:広がる国内回帰 円安で逆輸入製品採算悪化(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/20150212k0000m020104000c.html
”◇工場新設などの大規模投資には及び腰
 積極的な海外展開を進めてきた日本の製造業大手が、国内生産回帰に動き出した。円安の定着で、国内から輸出しても一定の利益を見込めるほか、海外から逆輸入している製品の採算が悪化しているためだ。ただ海外生産を取りやめるわけではなく、工場新設などの大規模投資には及び腰。日本国内での「ものづくり」が本格的に復活するかは見通せない。
〔中略〕
 為替変動による業績への影響を抑えるため、日産は消費地に近い地域で生産する「地産地消」を徹底してきた。2010年には、円高への対応力を高めようと、量産小型車「マーチ」の追浜工場(神奈川県横須賀市)の生産を停止。タイ製マーチの日本への逆輸入に踏み切った。日本に関しては事実上、地産地消の例外を作ったことになる。14年の海外生産比率は83%と大手自動車の中で最も高い。
 ところが、昨年以降、景気回復に沸く米国ではSUV(スポーツタイプ多目的車)「ローグ」(日本名エクストレイル)などが好調で、生産が追いつかなくなっているという。このため現在、年90万台の国内生産を、17年度までに110万台に引き上げ、北米工場を補完する方針だ。カルロス・ゴーン社長は「1ドル=75円なら米国で造っただろう」と話し、円安基調が決め手となった。
 キヤノンは今後3年をメドに、現在4割程度の国内生産比率を6割程度に増やす。プリンターや複合機などの新製品を出すタイミングで、順次国内生産に切り替える。田中稔三(としぞう)副社長は「超円高が是正され、海外での人件費も上がってきた。日本で造るチャンスだ」と説明する。
 製造業大手が、海外生産を本格化させたのは、00年ごろから。円高の進行で、日本から輸出した製品の現地価格が割高となり、競争力が低下。
〔中略〕
 さらにアジア各国は経済成長を続け、生産地でなく、世界の一大消費地に変わったことや、08年のリーマン・ショック後の円の急伸が、海外生産の流れを決定づけた
 だが、第2次安倍政権が誕生した12年末以降、大規模な金融緩和への期待などで円安が加速。シャープやパナソニックの輸入製品の採算は悪くなり、海外生産がかえって冷蔵庫や洗濯機など白物家電部門の減益要因になってしまった。シャープは中国から逆輸入している小型冷蔵庫やテレビの一部を国内生産に切り替えるほか、パナソニックも、中国で生産してきた縦型洗濯機や電子レンジの一部を国内に移す。
 もっとも、各社とも工場新設などの大規模投資には慎重。円高が一服していたリーマン・ショック前に、シャープなどは国内で大規模なテレビ工場などを建てたものの、その後は韓国勢などとの国際競争に敗れ、経営難に陥った苦い経験があるためだ。
 しかも、消費地の近くで造った方が輸送費を抑えられるほか、現地の消費者の好みをより早く製品開発に反映させられるメリットがある。このため「地産地消の原則は変えない」(日産の西川氏)とする企業がほとんど。工場内での自動化技術も進んでいるため、国内回帰が日本の製造業の雇用増に直結しない可能性もある。【山口知、古屋敷尚子】”

毎日新聞は既存メディアの中では珍しく、正しい報道を行っている。
この程度の円安で国内回帰が生じたとしても効果は限定的である。
「ないよりはまし」という程度だ。日本経済の根本問題を全く解決しない。

少し前に日経ビジネスが取り上げているように、
先見性のある企業は「1ドル150円時代」を想定し始めている。
そうした時には「国内回帰」の規模もそれなりになるが、
勿論のことそれは日本経済の転落という不幸な事態と引き替えである。
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