みんなの心にも投資 … ソーシャルインベスター(社会投資家)への道

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『週刊 東洋経済』2月24日号 - 忍び足で近付く貧困、政治も経済界も無策

2007-02-20 | 『週刊 東洋経済』より
今週の『週刊 東洋経済』の特集は「貧困の罠」でした。
『週刊東洋経済』の定期購読(レビュー投稿で1,000円券プレゼント付)

最新の記事内容紹介は、こちらの方が早いです。
http://www.toyokeizai.co.jp/mag/toyo/

力のこもった、良い特集です。
投資向けではないのですが、充分買う価値があると思います。

特集を一読して思うのは、

政治の側にも、日本経団連のような経済界側にも、
この状況を打開する強固な意志も良策もない、ということです。


中流層から下流への崩落現象は様々な論者によって主張されていますが、
データによって裏付けできます。

P48 > 日本の教育費は世界的に見て極めて高い
P72 > トヨタ本社と下請との極端な賃金格差
P75 > 日本の製造業を支える日系ブラジル人
P78 > 最低賃金が守られない現状

無気味なのはP42の国民健康保険の滞納状況のグラフで、
2000年からじりじり上昇を続ける一方です。

「こうした状況は、国の社会保障や企業内福祉に守られた
 サラリーマンには見えにくい。」

と『東洋経済』は記していますが、多くの公務員も同様ではないでしょうか。

さすがと思ったのは第一生命経済研究所 熊野英生エコノミストの執筆記事で、
(P46)「家計が豊かになる時代は終わった」という衝撃的なタイトルです。
実際読んでみると予期したよりも穏健・妥当な論で、

基本的に、雇用環境が安定し、給与水準が拡充され
なければ、消費は増えていかないだろう

とのことです。(本当に、その通りなのです ……)

特に、素晴らしい慧眼だと思ったのは次の箇所です。

過去、1998年以降の消費拡大は、多かれ少なかれ資産効果に
依存している。2005年9月から半年間の個人消費は、株式を
多く保有する高所得者20%だけが消費を牽引する特異な消費
ブームであった。今後も消費が増えるために株価上昇に依存
する構図は続くだろう。

全く同感で、企業が成長し株価が上がらないと日本社会がじり貧になります。

このコラムでは日本の平均所得の下落は意外に小さくて(ピーク時の9割弱)、
いとすぎはてっきりもっと大きいものだと思っていました。

    ◇     ◇     ◇     ◇

予想されたことではありますが、経済成長率の鈍化や税収の減少は
もろに社会的弱者にしわ寄せされます。
ハンディキャップを持つ障害者、母子家庭、生活保護世帯、病気の方など、
「もともと不利な状況にある人々」へのサポートが必然的に薄くなるのです。

これは市場原理主義的な論者がいくら美辞麗句で誤摩化しても
絶対に否定できない事実です。

特集の後半には、竹中平蔵 教授と神野直彦 教授が正面から激突する
インタビュー記事(P90)があり、見応え充分です。
ここはぜひお読み下さい。

「大きな政府と小さな政府」の論争は何年も前から続いており、
そろそろ具体的に「どの予算にどれだけ、どのような形で投入するか」を
論じないと意味がないと思うのですが ……

また、トヨタ自動車の巨額の利益を支えているのは、
年収がトヨタ本社社員の半分にも満たない下請けの労働者であるということ、
こちらも苦い事実ですが、P72もぜひ見ておきたいところです。
(トヨタから巨額の広告費を受け取る多くのマスコミは、このことを書かない)

    ◇     ◇     ◇     ◇

硬派の特集が続く今週号ですが、
P118では山田昌弘 教授が「恋愛格差」を論じていてびっくり。
経験率上昇や複数化は、携帯電話普及の効果だと思いますが、いかがでしょうか。
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