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流出雑記 

2016/4/10

2016年04月11日 | Weblog
生まれた病院が更地になっていた。
子供の頃その前を車で通るたびに、ここ美佳の生まれた病院やでと言われた。中の様子はもちろん何一つ覚えていないし、妹たちは違う病院で生まれたから物心ついて以降足を踏み入れることはついに一度もないままだった。
調べると経営破綻。母は初産だから贅沢をしたと言っていた。その病院は入院中まるでホテル待遇で過ごせる贅沢な産婦人科だったらしく入院費が他と比べて高額で、少子化と不景気の煽りを受けてだめになったのだろう。
生まれた場所が消えたからと言って何かしら私に関する所在をなくしたわけでは当然ないのだけれど、美佳の生まれた病院、と言われその前を通るときにあった小さく誇らしいような心地を覚えている。わたしは!ここで!生まれたのだ!という。大人になってからも時々病院の前を通ることがあるとその名残りを感じた。
ただ自分の生まれた病院が更地になっていた、という事実は何ら私を更新しないのだけれど、この言葉をかみしめていると事実とは関係のない味が染み出してきて、それを煮詰めようと画策し、そのことを考えながらりんごを2個ジャムにした。

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