ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア

2015-01-23 20:11:38 | さ行

ハハハ、これ、おかしい!


「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」70点★★★★


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現代のニュージーランド。

ある一軒家にヴァンパイアたちが暮らしている。

家賃を払い、家事を分担し、
人間社会に溶け込もうとしている彼らは

自分たちの生活をフィルムに残すため
ドキュメンタリースタッフを雇い、日常を撮影させていた。

カメラが捉えた、驚きの出来事とは――?!

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ニュージーランド発。
ヴァンパイアたちの暮らすシェアハウスを
カメラが取材するという体の、嘘っこドキュメンタリー。

世界中の“観客賞”を総なめ、との評判にいつわりなし。
笑いました(笑)。

タイトルからして笑えるけど、
銀細工に弱い、鏡に映らない……などの古典吸血鬼ネタはもちろん
「トワイライト」などの近々ネタも
おもしろおかしく調理して、実においしくしてる。

途中で仲間に加わる人間が
オーバー800歳や300歳の彼らに、
文明の利器・メールやGoogleを教えるくだりがおかしい。

“なんでも探せる”Googleで
「1912年に僕が無くしたスカーフを探せる?」とか、ウケました。
だーかーらー、おじいちゃん?違うのよ?って(笑)
この“わかってない”感じ!(笑)

けっこうスプラッタなシーンもあるけど
これはユーモアの範囲。

本作はニュージーランド喜劇界を代表する
コメディアンたちによって生まれたものだそう。

人当たりよい広報担当(?)、吸血鬼ヴィアゴ役のタイカ・ワイティティと
過去には非道冷血で鳴らした吸血鬼ヴラド役のジェマイン・クレメントの共同監督作。

構想8年、テイクはすべてアドリブ
膨大な撮影時間を85分にまとめたそうです。

かなり怖ろしい(笑)方法だね、そりゃ。


★1/24(土)から全国で公開。

「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」公式サイト
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ANNIE/アニー

2015-01-22 22:49:23 | あ行

キャメロン・ディアス、結婚おめでとう!


「ANNIE/アニー」73点★★★★


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現代のニューヨーク。

10歳のアニー(クワベンジャネ・ウォレス)は
身寄りのない少女。

性悪な育ての親ミス・ハニガン(キャメロン・ディアス)にいじめられても
いつか本当の両親に会えると希望を失わない。

あるとき、アニーは街で
大金持ちのウィル(ジェイミー・フォックス)に偶然助けられる。

市長選に立候補しているウィルは
好感度アップのために
アニーを利用しようと思いつき――?

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万人が楽しめるミュージカル。

元ネタをちゃんと知らなかったんですが
時代も歌も、うまく現代ふうにアレンジしてあり
ノリがいい。

ニューヨークの街を縦横無尽に舞台にする
カメラワークもいまふうで、
やや目がチャカチャカしますが
高揚感は確かにありました。


主演は
「ハッシュパピー~バスタブ島の少女~」で
史上最年少でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされた
クワベンジャネ・ウォレス。

彼女がまるでかわいこちゃんタイプでなく、
10歳にしてアンタ、ウーピー・ゴールドバーグ?ってくらい
“世間知ってるふう”なのが笑える

ダンスもあまり得意でないようなんですが
そこがなかなかチャーミングでもあり。

ただ、キャメロン・ディアスは
ちょーっとミスキャストかなあ。
歌がどうとかよりも、・・・イメージ?

まあともあれ
どんより暗い世の中に、久々にパッと明るい赤色が咲いたように感じる
楽しい映画でした。

ご家族でどうぞ。


★1/24(土)から全国で公開。

「ANNIE/アニー」公式サイト
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おみおくりの作法

2015-01-21 19:43:45 | あ行

「ずいーん……」と、静かに落ちますが
相当響きます。


「おみおくりの作法」73点★★★★


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ロンドンの民生係ジョン・メイ(エディ・マーサン)は
独りで亡くなった人の葬儀を執り行うのが仕事。

生前のその人を思い浮かべて弔辞を書いたり、
身内を懸命に調べたり、
真摯に仕事をする彼もまた44歳、独身だ。

そんなある日、
彼の向かいに住んでいた男が独りで亡くなる。

フクザツな思いで彼のことを
調べ始めたジョン・メイだったが――?!

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他人事じゃないし、
やりきれなくて陰鬱なんだけれど好きな話。


グレートーンの映像も
几帳面な主人公の必要最小限な暮らしぶりも
ミニマルで美しく、全体にスウェーデン映画のようでした。


冒頭、
さまざまな宗派の葬儀に一人ぼっちで参列する主人公をパッパと見せ、
それだけでやるせなさが伝わってくる。


なかでも強烈に印象的だったのが
飼い猫を残して、一人で亡くなった女性のエピソード。

彼女の部屋に最近送られてきたバースデーカードがあって
「実は身内がいるのか?!」となったら

実はそれが、彼女自分で書いて自分に出した
「猫からのカード」だったという。

もう痛くて直視できません(笑)


そんな人々の遺品を整理し、葬儀を出す
主人公もまた独り身で
リストラにあい、しかし最後の案件を前に一歩を踏み出すという。

オチには驚きもするんですが

まあ
死者も生者も結局こんなもの、という
突き放した感じはいい。

「孤独死」という言葉が煽る“かわいそう感”に
常日頃から違和感を持つワシですが

そう思ってんなら
いつお迎えがきてもいいように支度しとかなあかんな、と
改めて思わされました。

あと、ヤバイ手紙は始末しとこ(笑)。


★1/24(土)からシネスイッチ銀座ほかで公開。

「おみおくりの作法」公式サイト
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さよなら歌舞伎町

2015-01-20 20:29:35 | さ行

下半身があってこそ、人間がリアルに息をする。


「さよなら歌舞伎町」72点★★★★


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新宿の、ある朝。

ミュージシャン志望の沙耶(前田敦子)は
一緒に暮らす恋人の徹(染谷将太)に
「デビューできるかもしれない」と話す。

そんな徹が出勤したのは
歌舞伎町のラブホ。
彼は沙耶に内緒で、そこで店長をしていた。

同じ朝、
韓国人のヘナ(イ・ウンウ)と恋人(ロイ)は軽いケンカをし、

里美(南果歩)と男(松重豊)は
怯えるようにコソコソと暮らしている。

そんな歌舞伎町の人々の一日が、今日も始まる――。

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「ヴァイブレータ」(03年)の
廣木隆一監督×荒井晴彦脚本コンビによる
ラブホを舞台にした人間模様。

若いカップル、訳ありそうな中年の男女などなど
幾つかエピソードが同時に進み、

ネタの中身はマンガ『深夜食堂』ふうというか
それをさらに密に、分厚くした感じとも言えますが


爽やかな朝のカップルのじゃれあいから
ラブホのベッドの上まで

どこにも“生きてる”空気があり、
なかなか見応えありました。


前田敦子氏の出番はもっとあっていいと思うけど(苦笑)。

染谷将太氏が、
就職に失敗してラブホ勤務という
やるせない若者のモタつきと
うめきをよく表現してる。

“夜”っぽい題材に似合わず、
朝や昼間の明るい陽光に照らされたシーンが心に残り

ピンクさもあり、しかし青春映画の佇まいというのが
いいっすね。


★1/24(土)から新宿テアトルほか全国順次公開。

「さよなら歌舞伎町」公式サイト
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ビッグ・アイズ

2015-01-19 21:25:09 | は行

ふうむ。こういう感じね。


「ビッグ・アイズ」61点★★★


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1958年。カリフォルニア。

離婚してシングルマザーとなった
マーガレット(エイミー・アダムス)は
絵で仕事を得ようとするが
内向的な性格もあり、なかなかうまくいかない。

あるとき彼女は
風景画家だというウォルター・キーン(クリストフ・ヴァルツ)と出会う。

ウォルターはマーガレットが描く
大きな目の子どもの絵に興味を持ち
マーガレットは社交的なウォルターに惹かれていく。

そして
二人は結婚するのだが――。

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1960年代、異常に大きな目(ビッグ・アイズ)の子どもを描き
大人気となった実在画家キーンの話を
ティム・バートン監督が映画化。

ブライス人形や
それこそティム・バートン監督にも影響を与えた画家だそうですが
映画としては
ティム・バートンらしからぬというか、
起こったことがそのまま描かれてるような
ひねりのない人物伝で、逆にびっくりした。


まあ今回はネタが難しかった気もする。


表に出なかった妻の仕事が
のちに明らかになるものとしては
「ふたりのイームズ」のイームズ夫妻をちょっと思い出したけど、

この夫は絵心すらなく
妻に絵を描かせて自分の手柄にしたという完全な確信犯。


しかしですね
彼には売り込み能力や宣伝力があるんだなあ。

絵画本体ではなくポスターにして量産するなど、
アンディ・ウォーホルの先を行っていたわけだし。

結局、
画家も作家も、売れなければ誰にも知られない。

そして多くの場合
アーティストはセールスマンにはなれない。

そういうアートのジレンマを描いているので
テーマは深いんです。


ただ身も蓋もないけど
夫も妻も“自業自得”といえばそうだよなあと、感じてしまった。

日陰で泣いた妻・マーガレットも
一度は庇護者のいる安心と安全、そして名声と金銭を取っちゃったわけで
気の毒だけど、あながち夫を責められないつうか。

とまあ、フクザツですが
「こんな実話があったんだ!」という驚きはあり。
クライマックスも予想はつくけど、スカッとしました。

ちなみに
マーガレット・キーンさんは87歳でいまも絵を描かれているそうです。


★1/23(金)から全国で公開。

「ビッグ・アイズ」公式サイト
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