いやあ、ラスト近くのあのシーン、
ホントにアドリブじゃないかと。
そのくらい、臨場感。
「私の、息子」72点★★★★
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ルーマニアの首都ブカレストに住む
セレブリティのコルネリア(ルミニツァ・ゲオルギウ)の悩みは
30歳すぎても自立しない
一人息子バルブ(ボクダン・ドゥミトラケ)のこと。
しかも何かと世話を焼いてくる母親がうっとうしいのか
バルブは彼女を避けている。
そんなある日、
バルブが交通事故を起し、相手の少年を死なせてしまった。
一人息子を守りたい一心で
コルネリアは奔走するが――?!
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2013年ベルリン国際映画祭で金熊賞&国際連盟批評家賞受賞作。
いや~さすが
リアリティありありのヒューマンドラマでした。
セレブとして地位も豊かさも、
意のままにしてきた50代(60代に見えるけど)の母親。
しかし子育てには明らかに失敗した残念な母親である。
彼女の息子(30代という設定。40代に見えるけど)は
自分を意のままにしようとする母親に逆らいながらも、
しかし逆らいきれない自分に腹を立て
自分をもてあましている。
金があっても、豊かさがあっても
ぜーんぜんうまくいってない親子なのに
そこに息子が交通事故を起こすという事件が発生。
母親は息子可愛さから、必死にその罪を軽くしようと
警察にちょっと顔をきかせたりするんですな。
どうにも「イヤ~な」話なんですが
見入ってしまうんですよ。
冒頭から手持ちカメラの揺れが、
人物の表情をじっと見つめる。
リアルな会話や間があり、
人物たちの関係性もサッと暴かれ、
こちらは息を潜めてそれを見守る感じ。
全体に、特にラスト、
被害者家族と母親コルネリアの対面シーンなどは
「全てアドリブじゃないの?!」と思わせるほど、臨場感と迫力がある。
原題「チャイルドポーズ」は「胎児の姿勢」。
ダメ親がダメ息子を作るのか、逆なのか。
罪を犯した子でも親だけは、味方になってあげないといけないというけれど
どうしたものなのか。
考えさせられますねえ。
発売中の『週刊朝日』おなじみ「ツウの一見」で
教育評論家の尾木ママこと尾木直樹さんに
お話を伺っています。
この話の同じ水脈上に
「いじめ加害者の親」があると聞いて
なるほどなあ!と、納得です。
ぜひ、映画と合わせてご一読を☆
★6/21(土)からBunkamura ル・シネマほか全国順次公開。
「私の、息子」公式サイト