ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

私の、息子

2014-06-19 19:28:17 | わ行

いやあ、ラスト近くのあのシーン、
ホントにアドリブじゃないかと。
そのくらい、臨場感。


「私の、息子」72点★★★★


****************************

ルーマニアの首都ブカレストに住む
セレブリティのコルネリア(ルミニツァ・ゲオルギウ)の悩みは

30歳すぎても自立しない
一人息子バルブ(ボクダン・ドゥミトラケ)のこと。

しかも何かと世話を焼いてくる母親がうっとうしいのか
バルブは彼女を避けている。

そんなある日、
バルブが交通事故を起し、相手の少年を死なせてしまった。

一人息子を守りたい一心で
コルネリアは奔走するが――?!

****************************


2013年ベルリン国際映画祭で金熊賞&国際連盟批評家賞受賞作。

いや~さすが
リアリティありありのヒューマンドラマでした。

セレブとして地位も豊かさも、
意のままにしてきた50代(60代に見えるけど)の母親。

しかし子育てには明らかに失敗した残念な母親である。

彼女の息子(30代という設定。40代に見えるけど)は
自分を意のままにしようとする母親に逆らいながらも、
しかし逆らいきれない自分に腹を立て
自分をもてあましている。

金があっても、豊かさがあっても
ぜーんぜんうまくいってない親子なのに

そこに息子が交通事故を起こすという事件が発生。

母親は息子可愛さから、必死にその罪を軽くしようと
警察にちょっと顔をきかせたりするんですな。

どうにも「イヤ~な」話なんですが
見入ってしまうんですよ。

冒頭から手持ちカメラの揺れが、
人物の表情をじっと見つめる。

リアルな会話や間があり、
人物たちの関係性もサッと暴かれ、
こちらは息を潜めてそれを見守る感じ。

全体に、特にラスト、
被害者家族と母親コルネリアの対面シーンなどは
「全てアドリブじゃないの?!」と思わせるほど、臨場感と迫力がある。

原題「チャイルドポーズ」は「胎児の姿勢」。
ダメ親がダメ息子を作るのか、逆なのか。

罪を犯した子でも親だけは、味方になってあげないといけないというけれど
どうしたものなのか。

考えさせられますねえ。


発売中の『週刊朝日』おなじみ「ツウの一見」で
教育評論家の尾木ママこと尾木直樹さんに
お話を伺っています。

この話の同じ水脈上に
「いじめ加害者の親」があると聞いて
なるほどなあ!と、納得です。

ぜひ、映画と合わせてご一読を☆


★6/21(土)からBunkamura ル・シネマほか全国順次公開。

「私の、息子」公式サイト
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする