ワン・ビン監督、どんだけ気配を消しているのか
完全に、この場所に混ざっているのか(笑)
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「収容病棟」68点★★★☆
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「無言歌」「三姉妹~雲南の子」などで
中国の“真の姿”を静かに描き、問題を提起しているワン・ビン監督が
雲南省にある精神病院を撮影した
237分のドキュメンタリーです。
2010年、中国当局の発表によると
中国には精神病患者が1億人いるそうで
(億って・・・)
しかし、彼らの実態は知られていない。
ま、日本でもそうですけどね。
で、今回ワン・ビン監督は200人ほどを収容している病院に3ヶ月通い、
患者の姿を映したそうです。
病院は中庭を囲む回廊のある建物で、
その3階の廊下がほぼ全編の舞台であり
患者たちの世界。
そのなかをカメラは
患者たちと同じ目線ですいすい、グルグル歩き回り、
ふと目に付いた患者の一コマに寄っていくわけです。
夜は異様な熱気を帯びて
廊下を走り回る人がいたり
4人部屋でも
まあ床に痰どころでなく、放尿までしちゃう
かなり壮絶な環境ではありますが
ただ
“精神病棟”ということで
すごく激しいものを見るか、というと
意外にこれが、穏やかだったり、ユーモラスだったりする。
夜、ひとりぼっちが寂しくて
人の布団に無理矢理潜り込もうとして
追い出される男や
昼には肩を寄せ合って
ひなたぼっこをしている二人などには
おもわず微笑んでしまうしね。
彼らの中にもルールや
お互いをいたわる人間らしい暮らしがあるとわかる。
同時に、やっぱり「意志疎通が無理」な人もいて
その混濁に現実を見たりもします。
と、試みもおもしろく、成功しているのですが
ただ、237分はやはり長い。
その状況に観客の身を置かせる意味はあると思いますが、
今回は、もうちょっと取れ高を整理してもよかった気がします。
ラストにテロップで説明が出てきますが
この収容所には精神疾患だけでなく
「一人っ子政策に違反した人」とか
「政府に対して陳情をした人」なども
収容されているそうで
見ていても
明らかに「まともでは?」と思える人もいる。
「“ダメ”なものを、なんでも隠してしまえ」という、
国のやり方の乱暴さにぞーっとします。
★6/28(土)からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。
「収容病棟」公式サイト