ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

果てなき路

2012-01-13 21:11:55 | は行

映画のなかで映画を作る
「入れ子構造」のスタイルって
大抵はつまんないんですが、

この作品は珍しく成功してました。


「果てなき路」71点★★★☆

タランティーノやヴィンセント・ギャロらが敬愛するという
モンテ・ヘルマン監督、
21年ぶり(!)の新作です。


若きアメリカ人映画監督(タイ・ルニャン)は
実際に起こったある事件をもとに、
映画を作ることになる。

主演女優を探していた彼は、
役にピッタリな女優ローレル(シャニン・ソサモン)に出会い、
運命的に恋に落ちる。

彼女と愛を育みながら、
順調に撮影を進める監督だったが

しかしローレルは役柄同様に、
謎を秘めた女性だった――。


すごく不思議なリズムのある映画で
まず冒頭で延々と長回しがあり、

退屈しかけたところで
バーン!と意表をつかれ、

なんともいえない緩急に
ズルズルと引きこまれました。


現実の事件、映画の中での事件、そして現実進行形の事件が絡み合う
ミステリアスな話で

でも完全な答えはなく、
次々に謎が膨らみ、後を引くようにできている。

かといって混乱させるだけではなく
ちゃんとオモシロイのがエライ。

事件も愛も、その行為のすべてを見せず、
余韻と緊張を最高潮に高めていくんですねえ。

色調にちょっと「ツインピークス」を感じたんですが、
ラストまできて
あら?意外にハズレてないかも?!なーんて。


モンテ・ヘルマン監督は
1971年に撮った「断絶」が興行的に失敗し、
その後は編集やプロデューサー業をしていたそう。

そんな監督自身を投影したような人物を主人公にし、
キャスティングや予算など
映画作りのノウハウが見られるのも興味深い。

特に主人公がキャスティング中に
ハリウッドの超大物俳優を
品定めするシーンに笑っちゃいました。

一見ツウ好みな映画にみえるのに
意外に普通に楽しめること、

さらに観た後
「あれって、こういうことだよね?」という
確認作業的会話が
楽しめるのがポイントですね。

★1/14(土)から渋谷シアター・イメージフォーラムで公開。

「果てなき路」公式サイト

「断絶」ニュープリント版も同時に公開されるので、ぜひ☆
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする