ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

パーフェクト・センス

2012-01-04 16:23:49 | は行

あけましておめでとうございます。
今年も番長と映画を、よろしくお願いいたしまする。

で、2012年1発目はこちら。

「パーフェクト・センス」59点★★★☆

ユアン・マクレガー主演の、静かなる終末SF映画です。

イギリス、グラスゴー。

シェフのマイケル(ユアン・マクレガー)は
特定の恋人を持たない気ままな独身男。

その日も、一夜限りの恋人を
明け方に部屋から追い出したところだった。

その同じ朝、
感染症の専門家スーザン(エヴァ・グリーン)のもとに
ある事例が持ち込まれる。

中年男性が、突然
「生きる意味が分からない」と泣き崩れ、嗅覚を失ったというのだ。

しかも、同じ症例が24時間内に
イギリス国内だけでなく
ヨーロッパ中で発生しているという。

新たな感染症なのか――?
それともバイオ・テロ――?

調査を進めるスーザンは、
偶然、マイケルに出会い――。


すべての人々が「ある病」に感染していく世界の無情と哀しみを、
恋人たちの姿に映した作品です。

やはり感染症の恐怖を描いた
ソダーバーグの「コンテイジョン」も
比較的静かな演出でしたが、

こちらは科学的な説明やリアリズムをも廃し、
より静かに、詩情豊かな演出で、
終末感を切なく描いている。


人間の五感=センスがなくなっていくという
おっそろしい病で
シェフなんかにはまさに致命的。

演じるユアンも
たびたび絶望しそうになるんですが、

しかし、彼はあきらめず、捨て鉢にならず、
なんとか料理を楽しむ方法を考えだし、前へ進もうとする。

どんなに悲惨な状況下でも、
人間はそう簡単には折れない、折れられないんだ、というのが
この映画の言わんとするところと思います。

終わりゆく世界で
なんとか温めあおうとする恋人たちの姿も情感たっぷりで


作り手の狙い通りに仕上がってると思うし、
映像も美しく、
アプローチも好きなんですが、

逆に驚きや意外性がないのが、うーん残念。

パニック映画と違うのはわかるんですが、
やっぱりもうちょっと真に迫る恐怖は欲しかった、とか。

無い物ねだりするのも
申し訳ないんですけどね。

ただ、見終わって意外に
印象には残っているなあと。


特に12月から
グズグズと風邪が治らず、味覚も嗅覚もどんどんマヒしていってる番長。
この話、あながちSFとも言えない?なんて
ちょっとゾッとしますね。

★1/7(土)から新宿武蔵野館ほか全国で公開。

「パーフェクト・センス」公式サイト
コメント (3)
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