見るべき映画。
我々日本人も、無関係ではないのだ。
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「イラク チグリスに浮かぶ平和」73点★★★★
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2003年3月のイラク戦争開戦から
現地を取材してきたジャーナリスト・綿井健陽氏による
10年間のドキュメンタリー。
数々の映画賞を受賞した
「Little Brids イラク 戦火の家族たち」(05年)に
登場した家族を、再び取材しているそうですが
(未見です)
改めて開戦から順を追って描かれているので
前作を知らずとも“イラクで何が起こっているのか”が
よくわかります。
そして
かなり、打ちのめされました。
なんということが起こっているのだろうと。
そして
自分はなんと、よくわかっていなかったんだろうと。
ちょこちょこニュースや特集で
見てはいたんだと思うのですが
108分、しっかり腰を据えて見ると全然違いますね。
開戦の数日前からカメラは
バグダッドの日常や
ニュースで見慣れた映像の裏側を果敢に撮り続ける。
倒されるフセイン像を
しらけたような、複雑な表情で見守る人々の表情なども強烈ですが
空爆で3人の子を亡くしたアリ・サクバンという男性と知り合い交流が始まり、
映画の主軸が彼になってからは
より戦火の市民の窮状が身近に、胸に迫ってくる。
悲しみを抱えつつ
生活を立て直そうとするアリ氏だけど
数年ごとに綿井氏がアリ氏を訪ねるたびに、
本当にどんどん、イラクの状況が悪くなっていくんだもの!
05年ごろからシーア派とスンニ派の宗教抗争が激化し
町を歩くのも危険な事態になる。
綿井氏もなかなか取材に行けず、
数年後、ようやくアリ氏を探しに行った綿井氏は
またしても一家の悲劇を知ることになる・・・・・・。
「日本にも責任がある」という
義足の少女の言葉が
はっきり突き刺さります。
それにしても
開戦前夜のバクダッドの町の
静かに「取り返しのつかない明日」に向かっていく様子が
いま、なぜ、こんなにも恐ろしく見えるのだろうか。
★10/25(土)からポレポレ東中野ほか全国順次公開。
「イラク チグリスに浮かぶ平和」公式サイト