ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

旅人は夢を奏でる

2014-01-07 01:05:38 | た行

カウリスマキ兄弟の兄ミカが
10年ぶりに新作を発表っす!


「旅人は夢を奏でる」71点★★★★


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フィンランドのヘルシンキ空港に
派手な柄シャツにでっぷり巨体の
レオ(ヴェサ・マッティ・ロイリ)が降り立った。

彼は人気ピアニスト、ティモ(サムリ・エデルマン)
コンサートを聴きに行き、
そのまま彼の自宅へおしかける。

「誰?」とティモが驚くのも当然。

レオはティモが3歳のときに
別れたきりの父親だったのだ。

レオはティモに
「明日、一緒に行ってほしいところがある」と頼むのだが――。

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ユーモアに痛烈な哀愁が漂い
余韻残りまくりの
40代息子と60代後半な父親のヘンテコ珍道中ロードムービー。

ダメ父親に「ブーブー」言いつつ旅する
しっかり者の息子。

しかし
実はその経験を通して、彼に尊い変化が起こっており、
かけがえのないものを取り戻せるかも・・・?という話で、

結局はダメ父の
長い長い、罪ほろぼしの旅のようですねえ。


主人公だけでなく、旅で出会う人々には、
どこか
子ども時代のささいな出来事を
何十年経っても生々しく恨んでいるような感じやエピソードがあり

(例えば「弟ばっかり可愛がってた」とか、
テストで100点を取って喜んでもらえるかと思ったら
「あ、そう」ですまされた――とか、さ)


子どもってどんな環境に育っても
どこかに親への遺恨を抱えているのかも、

親はまったくそんなつもりはなくても
子どもになにかしらそういう思いをさせてしまっているのでは?
親の心子知らず、子の心親知らず、
そんなら、親子って一体ナンだろう……
その意味ってナニ?というのがテーマかなと感じました。

独得のリズムや抜け感、
さらに
暗い中にスポットライト的な光が当たったりするライティングに
兄弟の共通項が見えます。

そして
アレクサンダー・ペイン監督の
すっごイイ新作「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」(2/28公開)
シチュエーションがちょっと似てるのも気になる!

昨年は母×息子が目立ったけど
今年は父×息子がくるのか?


★1/11(土)からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。

「旅人は夢を奏でる」公式サイト
コメント
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