英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2016王座戦 第2局 その3「自然な手順だったが」

2016-10-28 23:59:06 | 将棋
非常に間が空いてしまいましたが
「その1」「その2」 の続きです。


 第12図の▲3三歩成はと金を作って当然の手に見えたが、△6四角に▲5五歩と応じた時に△3三桂と、せっかくのと金が取られてしまうので、▲2二歩の方が良かったと言われている(▲3三歩成で形勢が逆転したわけではなく、依然、先手優勢。)。
 もちろん糸谷八段もそれは承知で、△6四角に▲3四とが継続手。
 「▲3三歩成~▲3四と」は、「と金製造~と金活用」と自然な手で、≪これで“先手優勢”≫≪これで先手が悪いはずがない≫と誰もが判断するような手順だ。

 しかし、▲3三歩成△6四角▲3四と△3七歩成▲2九飛△3八と(第13図)まで進むと

 意外に難しい。
「と金を引いて銀を取りにいく手が遅かったです」という糸谷八段の感想もあるように、後手としては銀を取られても飛車を攻めつつ先手陣に迫れるのが大きく、釣り合いが取れている。先手は「▲3三歩成→▲3四と→▲3五と」と3手費やしている。
 第13図の飛車取りに対し▲2七飛と逃げるのは、以下△3七と▲2九飛△3八と▲2七飛△3七と▲2九飛…と千日手になる。この将棋の流れを考えると、先手番の糸谷八段は≪不本意≫、後手番の羽生王座は≪望むところ≫だろう。
 糸谷八段はノータイムで▲5九飛。しかし、以下△4七歩▲5八飛△4八歩成▲6八飛(第14図)までの手順は、やはり不本意だったのではないか。

 「低い位置ながらもと金の数は2対1と逆転」、「銀はまだ取られていない」、「6五の位も大きそう」、「△1九と香車を取れる」と後手の主張も増え、形勢互角と言ってもいいだろう。


 第12図に戻ってみよう。

 ▲3三歩成が最善手ではなかったとしても、この局面が互角とは思えない。
 実は、△6四角に対する▲3四とが問題の手だったのである。では、どう指せばよかったのか……

Ⅰ.▲2三と
 この▲2三とは、そっぽに行く感じが強いうえ、▲2三とに△1五飛と進むと、と金が置いてけぼりになってしまうように思える。
 以下▲2四と△3七歩成(変化図1)と進む。

 一見、先手のと金が間に合っていないように見えるが、ここで▲1四とが好手。


 これで飛車交換、または、飛車の成り込みが見込まれ、後手に自陣に不備があるので先手優勢。
 変化図1の▲1四とのところ、①▲2五飛もあるが1五の飛は紐付きなので、△4七ととと金を使われる分だけ損。また、②▲2五となら△1二飛と引かれると、▲2九飛と逃げることになり、この順は本譜の展開より損である。

 また、変化図1の△3七歩成では△2六歩と押さえ込みを図る手も考えられる(個人的には好きな手である)。
 以下▲2五と(▲2九飛もある)に△1六飛(変化図3)と根性を振り絞るが、

 以下▲3五と△3八と(△2七歩成も考えられるが、▲2五桂と捌かれそう。△3八とを先にしたのは、▲2五桂に△1九角成を用意するため)▲5九飛△2七歩成(変化図4)で、銀を犠牲に左辺を制圧できたかに見える。

 しかし、ここで▲4四歩が巧手。次に▲4三歩成△同金▲4四と△4二金に▲5五歩△同歩▲5四歩と絡みつく。△4二歩とそれを防いでも、▲5五歩△同歩▲4五とで絡みつかれてしまう。
 なので、後手はどこかで攻め合わなければならないが、後手の飛車がすんなり成り込めず、2枚のと金で攻めるのも、先手陣に大きなダメージを与えることは出来なそうだ。


Ⅱ.▲2九飛

 第12図から、△6四角▲3四との手で▲2九飛も有力だ。
 以下△3七歩に対し▲3四となら実戦と同じになるが、ここで▲2五桂(変化図5)が巧手。

 △2五同歩と取るのは▲同飛で飛車を捌かれてしまう。また、▲2五桂に△3八となら、▲2二と(変化図7)で飛車が捕まってしまう。飛車を助けるためには△3三桂▲同桂成(1三に飛車の逃げ場ができる)ぐらいだが、捕れそうな桂を取れずに成り込まれるうえ、2一の桂を差し出すというのはあまりにも悔しいし、次に▲1四歩と伸ばされると、再び後手飛車が危うくなる。

 また、▲2九飛で先に▲2五桂だと△1九角成とされてしまう。
 まさに手順の妙で、▲2九飛~▲2五桂でないと成立しないのである。
【続く】

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