英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2018棋聖戦第5局 ~豊島八段、初タイトル!~

2018-07-18 00:29:08 | 将棋
【“産経ニュース”より引用】
 羽生善治(はぶ・よしはる)棋聖(47)=竜王=に豊島将之(とよしま・まさゆき)八段(28)が挑戦した産経新聞社主催の将棋のタイトル戦「第89期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負」の第5局が17日午前9時から、東京都千代田区の都市センターホテルで指され、午後6時25分、108手で後手の豊島八段が勝ち、対戦成績3勝2敗で初タイトルの棋聖位を獲得した。持ち時間各4時間で、残りは羽生棋聖23分、豊島八段15分。

 豊島新棋聖は5度目の挑戦で初めてタイトルを獲得。注目の今シリーズは、豊島新棋聖が第3局を終えて2勝1敗に。第4局は惜しくも敗れたが、最終第5局の熱戦を制し念願の初戴冠を成し遂げた。
 羽生前棋聖の11連覇、前人未到のタイトル獲得通算100期はならなかった。羽生前棋聖が竜王のみに後退したことで、将棋界は八大タイトルを8人が分け合う。1人1タイトルずつは31年ぶり。

豊島新棋聖の話
 「終わったばかりで実感はありませんが、タイトルはずっと目標にしていたので良かったです」



 今回の棋聖戦、羽生竜王は≪積極的に指す≫ことを心がけていたようだ。
 しかし、それは、≪どこか急かされて前のめりになっていた≫ように感じた。

 ここ数年、羽生竜王は苦戦を強いられているが、その要因の一つが対局相手の綿密な研究。この綿密な研究は、将棋ソフトの研究への活用に因るところが大きい。将棋ソフトが100%正しいという訳ではなく、棋士の研究もすべて将棋ソフトに頼っているわけではないが、研究手順の検証や新手の発見、局面の形勢の確認に活用されている。
 これによって、研究が効率的に行われ、より詳細に系統立った研究が可能になってきている。これが棋士個人の棋力・実力と言えるかどうか、疑問の余地があるが、こういった研究に因って、羽生竜王が苦戦に陥ってしまうことが多々あるように思われる。

 もちろん、上記は私の想像の域を超えていないが、羽生竜王が、≪まだ駒組み段階≫と考えている局面で仕掛けられ守勢を強いられ、相手に主導権を握られてしまうことが多い気がする。


 例えば、今期王位戦の挑戦者決定リーグの対木村九段戦

 図は羽生竜王が△2三銀と2二の銀を上がり壁銀を解消し銀冠に陣形を整えたところで、意識としては序盤だったと考えられる。
 しかし、ここで木村九段は▲4五桂と跳ね、△4四角▲2二歩△同角▲6五桂(参考図2)

 “いきなり跳び蹴り”のような仕掛けで、少し前なら“無理攻め”ぽいので深く考えないところだが、ソフトによる可否の確認が容易なので、掘り下げて≪充分成立していそう≫という見込みが立っていたのかもしれない。
 以下△4四歩▲5三桂右成△同銀▲同桂成△同玉▲8四歩(参考図3)まで進むと、充分仕掛けが成立、先手が主導権を握っていると言って良いようだ。

 ▲6五桂(参考図2)と歩頭に跳ねた桂を取れないのは悔しいし、そもそも、△2三銀と上がった手が先手の角の利きを1一まで利かせてしまい逆用された感もある。
 その後、局面を複雑にさせた羽生竜王が、一旦、逆転したが、将棋の方向を誤り、再逆転負け。
 このように、先に仕掛けられ守勢を強いられてしまう将棋がよく見られる。
 そういう経験を踏まえたのかどうかは不明だが、最近の羽生将棋は“積極果敢さ”が感じられる。

 しかし、第1局の前のめり過ぎ名人戦第6局の“7四歩取らせ戦法”、名人戦第6局を改良した棋聖戦第4局の“袖飛車戦法”など、積極果敢さがうまくいっているとは思えない

 棋聖戦最終局の本局は角換わり腰掛け銀から▲4七角(第1図)の新手を放った。

 ▲4七角は次に▲7五歩と突き、△6三銀なら▲7四歩△同銀▲4五銀が狙い。
 ▲4七角に対し、豊島八段は△4一飛と引き、▲7五歩△6三金▲7四歩△同金▲4五桂△4四銀(第2図)と迎え撃つ。


 図より羽生竜王は▲2四歩△同歩▲5五銀と過激な順を選ぶ。しかし、本来の羽生将棋は第2図では善悪はともかく、▲4六歩と一旦、溜めを作るのではないだろうか?最近の羽生竜王は余裕がなく、泰然としたところが感じられない。
 実戦の順は▲5五銀に△6五歩▲4四銀△同飛▲4六歩(第3図)と進む。(▲4四銀では▲5四銀の方が良かったらしい)


 期待した4七の角の利きによる桂頭攻めも△6五歩と遮られると効果は薄く、結局▲4六歩と手を戻すこととなってしまった。
 局後の感想戦で羽生棋聖も「(第2図での▲2四歩に)代えて▲4六歩とゆっくりする順もあったか」と述べている。


 手は進み形勢はよく分からないが、後手から有効な手が多そう。先手は▲3五歩~▲3四歩と手掛かりを作ったが、▲6五歩と6筋から動いた方が▲4七角の意図を継承できたように思う。

 ▲3三銀で後手玉に迫っているように見えるが、実はそれほど脅威となっておらず、2一の桂を持駒の銀に昇格させた罪の方が大きい。


 △8八銀(第5図)以降は、難しいところはあったようだが、後手の持ち駒は豊富なので、後手の攻めを振りほどくのは至難の業で、寄せられるまでの手数を稼いで、後手玉に迫るのも難しかったようだ。

 第6図では▲7八金や▲8七金の方が難しかったかもしれないが、やはり、先手を持って勝つ気はしない。
 投了図の3三のと金が悲しい…


 読みの精度や研究云々より、将棋そのものを立て直した方がいいような気がする。将棋の泰然さを取り戻してほしい。
コメント (4)
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