英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

第65期 王将戦挑戦者決定リーグ ~最強リーグ戦、残念な日程~

2015-11-20 11:00:55 | 将棋
王将戦挑戦者決定リーグは毎年、最強リーグだと感じていたが、今期は史上最強リーグではなかろうか?
リーグ残留組が、前王将でリーグ1位扱いの渡辺棋王、2位羽生名人、3位佐藤九段、4位深浦九段の4名。
予選勝ち上がりが、○糸谷竜王-三浦九段、○森内九段-屋敷九段、○久保九段-豊島七段の3名。

「A級棋士6名+竜王」で、しかも、名人・王位・王座・棋聖の羽生四冠、渡辺棋王と、6タイトルが集結。

あれ、王将がないぞと思ったら、郷田王将への挑戦者決定リーグであった。


ちなみに、昨期のメンバーは羽生名人、佐藤九段、郷田九段、深浦九段、屋敷九段、三浦九段、豊島七段(タイトル、段位は当時のモノ)で、郷田九段が羽生名人とのプレーオフを制して挑戦権を獲得、渡辺王将を破って王将位に就いている。リーグ陥落は、予選勝ち上がりの3名。この3名も名だたるメンバーで、彼らが跳ね返されてしまうとはなんと恐ろしいリーグ戦か。ただ、三浦九段は3勝3敗の頭ハネ、屋敷九段、豊島七段も2勝4敗、プレーオフの羽生名人、郷田九段も4勝2敗と大激戦であった。


 最強リーグ戦だが、少し残念なのは、足早に対局が消化されてしまうのが残念。
 竜王戦、順位戦、棋王戦トーナメントなどの他棋戦の日程の合間を縫って対局が組まれているような気がする。羽生ファンだから言うのではないが、羽生名人の3回戦(対深浦九段)は10月29日に行われたが、その前日に棋王戦トーナメント準々決勝(対阿部健治郎五段)、三日前に王座戦第五局(対佐藤天彦八段・於山梨)が行われていた。王座戦は決着局の大一番で移動日もある。かなり酷い日程だ。
 さらに、対局消化具合も棋士によって偏りがあるのも問題である。その点については、今期リーグ戦を振り返る際に言及してみよう。


 羽生名人の過酷日程の対深浦九段戦が終了した時点で、3回戦までが終了。
1.渡辺棋王 ●糸谷 ●深浦 ●久保  森内  佐藤 ---  羽生
2.羽生名人 ○佐藤 ●糸谷 ○深浦  久保 ---  森内  渡辺
3.佐藤九段 ●羽生 ●久保 ●森内 ---  渡辺  深浦  糸谷
4.深浦九段 --- ○渡辺 ●羽生  糸谷  久保  佐藤  森内
5.糸谷竜王 ○渡辺 ○羽生 ---  深浦  森内  久保  佐藤
5.森内九段 ●久保 --- ○佐藤  渡辺  糸谷  羽生  深浦
5.久保九段 ○森内 ○佐藤 ○渡辺  羽生  深浦  糸谷 ---

 渡辺棋王と佐藤九段の3連敗は意外だが、これだけのメンバーなので3連敗の可能性は誰にでもあるし、6連敗しても不思議ではない。
 この両氏以外の5名は1敗以内なので、挑戦権の可能性がある。やはり目を引くのは2連勝の糸谷竜王と3連勝の久保九段。糸谷竜王は渡辺棋王(竜王挑戦者でもある)、羽生名人の難敵を連破し、挑戦権親と感じさせた。ただ、残るメンバーも強敵なので一筋縄では行かないだろう。
 久保九段の3連勝は、正直、予想していなかった。まだ、3局(当然、強敵)残しているので、すんなり突っ走るとは思えないが、2勝1敗で乗り切ることができれば、同率首位以上の可能性は大きい。久保九段が5勝1敗で終えれば、1勝1敗の深浦九段、森内九段は残りを4連勝、2勝1敗の羽生名人も3連勝しないと久保九段に並べない。また、糸谷竜王にしても、残り3勝1敗が必要となる。やはり3連勝というのは大きい。
 それでも、渡辺棋王、佐藤九段も3連敗とは言え、強敵であるのは間違いなく、最強メンバー同士での星のつぶし合いが考えられ、最後まで大激戦の予感がした。


 羽生名人-深浦九段戦(10月29日)以降、しばらく、リーグ戦は消化されなかったが、11月9日から急ピッチで4回戦、5回戦が行われた。

11月9日、糸谷竜王(2勝0敗)-深浦九段(1勝1敗)、羽生名人(2勝1敗)-久保九段(3勝0敗)戦
 成績上位者同士の対局だったが、深浦九段と羽生名人が勝ち、糸谷竜王と久保九段に土がついた。
 この結果、羽生名人と久保九段が3勝1敗、糸谷竜王と深浦九段が2勝1敗となり、1勝1敗の森内九段を合わせると、5人が1敗で並ぶ大混戦となった。ただ、この時点で、羽生名人、久保九段が4局消化しているのに対して、森内九段は2局と消化具合に偏りがある。リーグが7人と奇数なので、消化数がそろわないのは仕方がないが、2局差がつくのは改良してほしい。

11月12日、渡辺棋王(0勝3敗)-佐藤九段(1勝1敗)、深浦九段(2勝1敗)-久保九段(3勝1敗)戦
 3連敗同士の1局は渡辺棋王が勝ち、残留に望みをつないだ。敗れた佐藤九段は4連敗。これで陥落決定かと思われたが、首の皮1枚希望が残っているらしい。
 1敗同士の1局は、久保九段が勝ち挑戦権争いで1歩リード。
 久保九段4勝1敗、深浦九段2勝2敗、渡辺棋王1勝3敗、佐藤九段0勝4敗。
 深浦九段が2敗となり1歩後退。1敗は久保九段(4勝1敗)、羽生名人(3勝1敗)、糸谷竜王(2勝1敗)、森内九段(1勝1敗)の4人。
 この時点で、消化対局数は久保九段の5局に対し、森内九段は2局のみと、差が3局となってしまった。

11月13日、糸谷竜王(2勝1敗)-森内九段(1勝1敗)戦
 1敗同士の対決は、糸谷竜王が逆転勝ち1敗を死守、森内九段は2敗に後退した。

 11月13日時点のリーグ状況
1.渡辺棋王 ●糸谷 ●深浦 ●久保  森内 ○佐藤 ---  羽生
2.羽生名人 ○佐藤 ●糸谷 ○深浦 ○久保 ---  森内  渡辺
3.佐藤九段 ●羽生 ●久保 ●森内 --- ●渡辺  深浦  糸谷
4.深浦九段 --- ○渡辺 ●羽生 ○糸谷 ●久保  佐藤  森内
5.糸谷竜王 ○渡辺 ○羽生 --- ●深浦 ○森内  久保  佐藤
5.森内九段 ●久保 --- ○佐藤  渡辺 ●糸谷  羽生  深浦
5.久保九段 ○森内 ○佐藤 ○渡辺 ●羽生 ○深浦  糸谷 ---
 4回戦の渡辺竜王-森内九段戦が未消化。竜王位で決戦中の糸谷竜王と渡辺棋王がリーグメンバーなので、調整が難しいのかもしれない。でも、こういった現象(回戦順に消化しない)は、例年も見られたような記憶がある。

 この後、星の潰し合いで4勝2敗で同率プレーオフの可能性もある(昨年度は5勝1敗はおらず。4勝2敗でさえ2名しかいなかった)と考えると、1敗の羽生名人、糸谷竜王、久保九段、2敗の深浦九段、森内九段(1勝2敗ではあるが)までが可能性を残している。


11月16日、渡辺棋王(1勝3敗)-森内九段(1勝2敗)、久保九段(4勝1敗)-糸谷竜王(3勝1敗)戦
 消化が遅れていた渡辺-森内戦が行われるのは良いとして、このタイミングで首位争いの久保-糸谷戦を行うのはどうなのか?(渡辺棋王、糸谷竜王は竜王戦の最中なので、同じ日に同じ棋戦の対局をつけるのは公平であるとはいえるが)

 森内九段が勝ち2敗で踏みとどまったが、1敗決戦で久保九段が勝ち、5勝1敗で日程を終えてしまった為(久保九段は最終局が空き番)、2敗者は挑戦の可能性がなくなった。
 敗れた渡辺棋王は1勝4敗、糸谷竜王は3勝2敗となった。
 個人的感想だが、竜王戦第4局を控えた両者がともに敗れたのは残念。この対局は第4局の3日前。手の内を見せたくないという駆け引きもあるが、このタイミングでこの2局を組み込むことに問題があるように思える。

 11月16日時点のリーグ状況
1.渡辺棋王 ●糸谷 ●深浦 ●久保 ●森内 ○佐藤 ---  羽生
2.羽生名人 ○佐藤 ●糸谷 ○深浦 ○久保 ---  森内  渡辺
3.佐藤九段 ●羽生 ●久保 ●森内 --- ●渡辺  深浦  糸谷
4.深浦九段 --- ○渡辺 ●羽生 ○糸谷 ●久保  佐藤  森内
5.糸谷竜王 ○渡辺 ○羽生 --- ●深浦 ○森内 ●久保  佐藤
5.森内九段 ●久保 --- ○佐藤 ○渡辺 ●糸谷  羽生  深浦
5.久保九段 ○森内 ○佐藤 ○渡辺 ●羽生 ○深浦 ○糸谷 ---

 この時点で、挑戦権は久保九段と羽生名人に絞られた。
 羽生名人は、対森内九段戦、対渡辺棋王戦に連勝しなければプレーオフに持ち込めない。
 生涯勝率7割2分を超える羽生名人。羽生名人はその対局相手のほとんどが一線級であり、それを踏まえた上で、この数字を考えると驚異的勝率といえる。A級もしくはB級1組相手に7割を超える勝率なのである。
 しかし、残り2棋士が、よりによって、森内九段(対勝率.561)と渡辺棋王(対勝率.477)とは。単純に連勝する確率を計算すると、26.8%となる。ただ、ここ数年A級順位戦で見せた驚異的な強さ、9戦全勝か8勝1敗、勝率9割以上を考えると、王将位への挑戦も期待を持っても良いのではないだろうか?

 私が問題にしたいのは、今期成績上位で最終局空き番の久保九段の6回戦(久保九段にとっては最終局)を、6回戦の最初に消化してしまったこと。
 先にも書いたが、これにより、5局残しているにもかかわらず、2敗者の挑戦権獲得の可能性がなくなってしまった。
さらに、6回戦で羽生名人が森内九段に敗れると、最終局3局は挑戦権に関しては全くの消化試合になってしまうのである。まあ、これは、最終局空き番の棋士が1敗、あるいは全勝で走れば、避けられない事態ではあるが。



11月17日、佐藤九段(0勝4敗)-深浦九段(2勝2敗)戦
 佐藤九段が勝ち、今期リーグ戦、初白星を上げた。


11月20日(本日)、森内九段(2勝2敗)-羽生名人(3勝1敗)戦
 羽生名人が勝ち、4勝1敗として挑戦権の行方を最終局に持ち込んだ。森内九段は2勝3敗となった。


 11月20日、6回戦終了時点のリーグ状況
1.渡辺棋王 ●糸谷 ●深浦 ●久保 ●森内 ○佐藤 ---  羽生
2.羽生名人 ○佐藤 ●糸谷 ○深浦 ○久保 --- ○森内  渡辺
3.佐藤九段 ●羽生 ●久保 ●森内 --- ●渡辺 ○深浦  糸谷
4.深浦九段 --- ○渡辺 ●羽生 ○糸谷 ●久保 ●佐藤  森内
5.糸谷竜王 ○渡辺 ○羽生 --- ●深浦 ○森内 ●久保  佐藤
5.森内九段 ●久保 --- ○佐藤 ○渡辺 ●糸谷 ●羽生  深浦
5.久保九段 ○森内 ○佐藤 ○渡辺 ●羽生 ○深浦 ○糸谷 ---

 挑戦権は最終局で羽生名人が勝つと、羽生名人-久保九段でプレーオフ。
 糸谷竜王は残留が確定、渡辺棋王と佐藤九段は陥落が決定している。
 深浦九段-森内九段は残留を懸けた大一番。勝てば残留、負ければ陥落。


 最終局は11月25日に一斉対局。
コメント (4)
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