英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『美女と男子』 第17話「ツインソウル」

2015-08-05 17:53:57 | ドラマ・映画
 “トップを目指す”サクセスストーリーで、「常道路線(“ありがち”とも言う)ながらも、登場人物に味があり、それなりに面白いという感想を持っていたが、第2部の最後(第14話「世界への第一歩」)で、激震が走り、非常に面白くなってきている。
 しかし、今話は大いに疑問が残る内容であった


 遼(町田啓太)が演じる主人公がモスクワ五輪のボイコットによって“絶望”してしまうシーンを、どう演じてよいか、遼は分からず悩む。
 本作の脚本を担当した田渕氏は、テーマの一つとして「ツインソウル」を挙げている。
 『ツインソウル』……誰にでも双子の魂を持った運命の相手が存在する。
 本ドラマでは、一子(仲間由紀恵)と遼がこの関係と言える。また、遼主演映画では、主人公とそのコーチが該当する。
 ドラマでは、テレビドラマ「ツインソウル」を手掛ける三島芳佳(大西礼芳)が熱く語っていたが、今一つ、伝わってこず、ドラマ視聴後も、≪わかったような、わからないような…なんとなくわかった≫ぐらいの印象であった。田渕氏がテーマと挙げた割には、練り込み不足に感じた。

 まあ、「ツインソウル」については、そのくらいでもよい。
 それよりも、もっと、納得がいかなかったのが、『絶望』の捉え方

 絶望について悩む遼は、ひのでプロのメンバーと会い、ヒントを得ようとした。
 そこで、メンバー各々の絶望について考えた。

並木昌男(森本レオ)・元「ひのでプロ」社長……「ひのでプロ」を倒産させてしまった時、あるいは、トップ女優の中里麗子(真野響子)との別離という説も
石野悟(前川泰之)・元「オフィスイシノ」社長……「オフィスイシノ」を追われた事かと思ったが、本人弁では「もちろん、失恋」とのこと
たどころ晋也(高橋ジョージ)・シンガー、ヒット曲は1局……妻との離婚(娘は妻の許に)
日邑俊子(田島令子)・一子の母……夫の死
 そして、一子は、妹の裏切り(夫を奪われる)、遼は、両親の離婚による母との別離かと思いきや、一子と共にレッドカーペットの道を歩めなくなったこと(一子に見捨てられた)であるらしい。

 しかし、“絶望”ってその程度のモノなのだろうか?
 夢や希望、生きがい、生きる目的(目標)、もっと切実に、生きていく術(すべ)を失い、先に進む道が消滅し、視界もゼロ(真っ暗)。しかも、前だけでなく、右、左、そして後ろさえも闇。それを切り開くエネルギーもない。そんな、状態でないと“絶望”とは言えないのではないだろうか。

 一子の場合は、確かに信頼していた妹に裏切られ、愛する夫を奪われてしまった。確かに、悲しみや怒りは大きいが、一子には息子や母、それに遼やメンバーがいた(仕事もある)。憎むだけ感情(エネルギー)が起きるだけマシなのである。
 遼も、一子とレッドカーペットへの道を歩く夢は閉ざされたが、役者の道を究める夢も手段も残されていた。第一、一子の件で絶望したと言っても、けっこう一子に会っているし、アドバイスももらっているよね。
 並木や石野の場合は、かなりきつい状況ではあるが、大借金を抱えたわけでも、社会的存在が危うくなったわけでもなく、ゼロからの出発。たどころも俊子も、絶望とは言えない。

 映画の主人公は、人生のすべてをオリンピックに懸けてきた。それが、突然、そのオリンピックへの道が消滅してしまった。オリンピックしか見てこなかった者が、そのオリンピックが亡くなってしまったら、何も見えないのではないだろうか?過去の努力も、泡と消えてしまった。

 遼の場合に当てはめるなら、「SF的な展開だが、ドラマ・映画禁止令が発令されて、役者の存在意義がなくなってしまう」ぐらいだろうか?
 現実的に考えるなら、「声帯を失って声が出せなくなってしまう」「不治の病にかかってしまう」ぐらいだろうか。
 一子の場合だと、「夫と息子を奪われ、両親が急死、家は火災に遭う」ぐらいでないと。

 この文章を書いていて、≪震災などの災害で家も土地も家族も失ってしまった方が、もし、今回のドラマを観たら、どう思うのだろうか?≫と頭に浮かんだ。
 安易な絶望の扱いだった。

 
 

【ストーリー】番組サイトより
遼(町田啓太)の主演映画は撮影が佳境。“絶望”を演じる大事なシーンについて悩む遼は、決別したはずの一子(仲間由紀恵)に救いを求める。そんな折り、初めて祖母役のオファーを受けた大女優・麗子(真野響子)は、憤慨してひのでプロにたてこもり、一子たちを困らせる。一方、東西テレビの三島(大西礼芳)から連ドラの主題歌の依頼を受け、曲作りに打ち込むたどころ(高橋ジョージ)は、ダメ出しをされ苦しんでいた...。

脚本:田渕久美子
コメント
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